取れない疲れ・倦怠感の原因は腸?【腸内環境と慢性疲労症候群の関係】

多くの現代人が悩むのが原因不明の倦怠感です。
何となく身体や頭がだるくて重い。いくら寝ても疲れが取れない。
極端なダイエットをしてるわけでもないし、睡眠や適度な運動を心掛けているのに何故?といった感じです。

腸内環境が全身の様々な部分に影響を及ぼすことが知られつつあります。
そして一見すると原因不明の疲労感・倦怠感にも腸内環境の悪化が関わっている可能性があるのです。
このページでは、腸内環境と取れない疲労感・倦怠感の関係について解説します。

このページでわかること

・疲労感や倦怠感の原因になる内臓の不調
・腸内環境の悪化と内臓の不調の関係
・睡眠の質と腸内環境の関係

1 疲労を回復する臓器の不調

普通に活動していれば誰しも少なからず疲労は蓄積します。
しかし疲労回復を担う臓器がしっかり活動していれば、その疲労や倦怠感は解消されるはずです。
一見すると原因不明に見える疲労感・倦怠感も実はそれらの臓器が不調をきたしてる初期症状の現れの可能性があります。

それに関係する臓器というのが肝臓腎臓です。
肝臓と腎臓はどちらも体内で発生した有毒物質を無害化するろ過・デトックス器官
この2つの器官の機能が低下すると、毒素が無害化されずに全身を巡ってしまうことになります。

腎機能不全では尿毒症などの症状が典型的で、この初期症状がまさに慢性的な疲労感や倦怠感です。
さらに肝臓は吸収された栄養素を代謝(身体が使える形に変換)し、全身に届けるエネルギー産生器官でもあります。
この活動のエネルギー生成が上手くいかなくなることも疲労感の原因の1つです。

2 慢性疲労症候群(CFS)と腸内環境

現代人の疲労感は慢性疲労症候群(CFS)という病名がついているほど深刻なものです。
そしてこれに腸内環境(フローラ)が関係している可能性が指摘されています。

慢性疲労症候群(CFS)の患者はリポポリサッカライド(LPS)など腸管由来の毒素が血中から検出されます。

これは普通なら検出されるはずのないものだよ

慢性的な疲労を抱えている人は腸内フローラの乱れが起きてることも確認されていて、何かしらの関係があると推測できます。
因みに腸内フローラの乱れとは具体的には本来2番手のはずのバクテロイデテス門の菌が過剰になっている状態です。

さらに慢性疲労症候群は風邪やウイルス感染などをきっかけに発症する例が多く、免疫機能との関係も指摘されています。
詳しくは別のページで解説してますが、腸管は人体最大の免疫器官であり、この点からも腸内環境が疲労感に関係していそうです。

慢性的な疲労の正体は肝臓や腎臓の機能低下であり、そこに腸内環境の悪化が観察されるため、これらの間には密接な関連があると言えます。

3 肝臓・腎臓と腸内環境の関係は?

体内の解毒器官である肝臓と腎臓の機能低下と腸内環境の悪化にはどのような関係があるのでしょう?
原因は大きく2つあり、具体的には以下のとおりです。

①毒素が多量に作られること ②リーキーガット症候群の発症

3-1 悪玉菌の増加

腸内環境の悪化とは主に腸内細菌のバランスが崩れることを言います。

本来は善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7の比が理想的なバランスです。
しかしこのバランスが様々な要因で崩れ、悪玉菌が増殖すると硫化水素やアンモニア、インドールなどの毒性のある物質が過剰に作られてしまいます。

既に解説したとおり、これらの毒素を処理するのは肝臓や腎臓の役割です。
つまり悪玉菌が腸内で増殖すると肝臓・腎臓の仕事が増え、オーバーワークから機能低下に陥る可能性があるということです。

腸内細菌のバランスを崩す悪い生活習慣については別のページでまとめてるよ

3-2 リーキーガット症候群

腸内細菌のバランスが崩れることの問題は有毒ガスの発生にとどまりません。

腸内の善玉菌は食物繊維などを食べ(炭水化物を発酵させ)、短鎖脂肪酸という人間の使えるエネルギーに変換します。
この短鎖脂肪酸の役割の1つが粘膜生成のコントロールです。
粘膜はバリアであり、かつ腸管の細胞同士を密着させるタイトジャンクションという継目の役割も果たします。

腸内フローラが乱れて善玉菌が減ると、短鎖脂肪酸の生成が減って腸の粘膜が薄くなってしまいます。
こうなると本来通しちゃいけないはず未消化の食べ物や腸内細菌、そして悪玉菌が作った毒素などがそのまま体内に入ってきてしまうのです。
これをリーキーガット症候群、すなわち「漏れる腸」と言います。

そしてこれらの漏れた異物が全身での炎症の原因になります。
炎症とは戦火のようなもので、これが過剰になると周囲の正常な細胞や臓器にまで飛び火し、それを破壊してしまうのです。
もちろん肝臓や腎臓もその被害を受け、機能が低下してしまいます。

4 副腎疲労にも注意が必要

副腎と言えばストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの分泌でよく知られた器官です。
まさにこのコルチゾールの分泌も疲労や倦怠感に関係しています。

よく勘違いされていますが、コルチゾール自体がストレスを生み出すわけじゃありません
ストレスを感じた時にその脅威に対応するために分泌されるホルモンです。

正確には抗ストレスホルモンって言われるよ

ストレスというと外部からの刺激をイメージすると思いますが、実はそれだけではありません。
腸内環境の悪化による腸管内の炎症や、リーキーガットによって漏れた毒素による全身の炎症に対してもコルチゾールは分泌されます。
そしてこのコルチゾールの分泌が過剰になることもまた疲労感の原因なのです。
コルチゾールの過剰分泌が疲労感に繋がる理由は大きく以下の2つあります。

①睡眠不足 ②副腎疲労

コルチゾールは抗ストレスホルモンとしての役割の他に起床を促すという役割があります。
活動のエネルギーを作るために心拍数や血圧、血糖値を上げていくものです。

これが起床時に分泌されるのは自然ですが、炎症が慢性化して夜間にも構わず分泌されていては十分に眠れません。
覚醒状態すなわち交感神経が優位な状態が続いてしまうので、副交感神経に支配される腸を含む消化管の活動が停滞し、環境が悪化するという悪循環も起きます。
現代は外部からも様々なストレスが降りかかっているので区別がつきにくいですが、もしかしたら内部にも問題があるかもしれません

そして慢性的な炎症のせいでコルチゾールの分泌が過剰になることのもう1つの問題が副腎疲労です。
コルチゾールを出し続けた副腎皮質が疲労してしまうとホルモンの分泌不全が起き、これがまた疲労感に繋がります。
さらに副腎疲労が重症化すると副腎不全となり、嘔吐や低血圧、意識障害などを発症するリスクまであるので注意が必要です。

5 寝ても疲れが取れないのも腸のせい?

睡眠時間をしっかり取っていても起きぬけに怠さを感じていつまでもベッドでグダグダしてしまう。
そんな経験は現代人なら誰しも経験があることでしょう。

睡眠は時間よりも質が大事だってことはもはや常識になりつつあり、時間が長くても質が低ければ疲れは残ってしまいます。
その大事な睡眠の質を左右する要因は様々ですが、これにも腸内環境が関わっている可能性があるのです。

腸は短鎖脂肪酸やビタミンだけでなくホルモンの生成まで担っています。
その中でも重要なホルモンの1つがセロトニン。これは幸せホルモンなどと呼ばれることもありますが、実は睡眠の質にも大きく関わるホルモンです。

セロトニンは分泌されると夜に向けて徐々にメラトニンというホルモンに変わりますが、このメラトニンが睡眠の質を大きく左右します。
つまり腸内環境が乱れ、セロトニンの生成が不十分になると夜間にメラトニンが十分に生成されず、睡眠の質が低下する可能性があるということです。

また質の良い睡眠でリラックスし、副交感神経を優位にすることが腸を含む消化管の活性化には不可欠になります。
セロトニン不足を通じて睡眠の質が悪化することは、腸内環境の悪化に繋がるという悪循環を生んでしまうのです。

まとめ

腸内環境の悪化と慢性的な疲労感や倦怠感との関係について解説しました。
疲労感が睡眠や栄養の不足でなければ、代謝機能を担う肝臓や腎臓といった器官の不調の可能性があります。
その原因が腸内環境の悪化により毒素が多量に作られること、そしてリーキーガットによって腸から漏れた毒素が外からこれらの臓器を攻撃することです。

またリーキーガットによって漏れた毒素の影響で全身に炎症が拡がると、コルチゾールの分泌が慢性化し、睡眠の不調や腸管の活動が鈍ると同時に副腎疲労を招きます。
副腎疲労は疲労感そのものの原因であり、かつ悪化すると重篤な症状を引き起こす危険な状態です。

またコルチゾールの過剰分泌だけでなく、腸の活動低下によるセロトニンの分泌不良も睡眠の質を低下させる要因になります。
また夜間に自律神経が上手く切り替わらないことで腸内環境が悪化するという悪循環も発生します。

このように腸の不調を発端に様々な悪影響・悪循環を生んでしまうので、腸内環境に気を配ることは重要です。
疲労感は続く重大な症状の初期段階でもあるので、慢性的な疲労を自覚したタイミングから改善を図っていきましょう。
てなとこで。