三角筋中部(ミドルデルタ)トレーニングの基本|解剖学的な機能と鍛え方【目指せメロン肩】

筋トレをするなら男らしい逆三角形のボディラインには誰もが憧れるはずです。
肩はその三角形の頂点に当たる非常に重要なポイントで、フィジーカーにも人気の高い部位。

特に肩のサイドは肩幅への影響が大きい筋肉ですが、上手く発達しないと嘆き悩む人が多いポイントでもあります。
ぼく自身も肩は特に発達しにくく、悩みのタネでした。
そんな中で試行錯誤を繰り返し少しずつ効かせられるようになってきたのは解剖学的な理解があったからです。

このページでは、三角筋の中部(ミドルデルタ)の解剖学的な特徴を踏まえ、効果的な鍛え方を紹介します。

このページでわかること

・三角筋の構造
・三角筋の解剖学的な機能と鍛える方法
・種目は正しいのに発達しない原因
・三角筋の中部を鍛える負荷の設定と種目の選び方

1 三角筋の構造と鍛えるメリット

肩回りを構成する三角筋は付着の仕方や特性の違いから3つの部位に分かれています。
ここでは3つの部位の関係と中部を鍛えるメリットについてまずは解説します。

1-1 フロント・サイド・リアデルタ

三角筋は前・横・後と3つに分かれ、肩の関節全体を覆うようについている筋肉です。
筋を広げると二等辺三角形になることが名前の由来と言われています。

実は3つの部位を合わせると上半身の筋肉の中で体積は最大になります。
各部位とも三角形をしているので、それぞれフロント・サイド・リアデルタと呼ばれることもあります。

大胸筋とか広背筋より大きいってかなり意外だよね

<起始>
前部(フロントデルタ):鎖骨部
中部(ミドルデルタ):肩峰部
後部(リアデルタ):肩甲棘部

<停止>
フロント・ミドル・リアデルタとも上腕骨の三角筋粗面

三角筋の各筋肉の付き方も重要なポイントになります。
画像では真下に向かってついていますが、実際はこの筋肉の走行は完全な垂直方向ではありません。
前・中・後部はいずれも肩の後ろの方から前面にかけてやや斜め気味に走行しているというのが正確です。

特に今回解説する三角筋の中部はこの影響を顕著に受けるので、覚えておきましょう。

1-2 サイドデルタを鍛えるメリット

肩を鍛えるというと誰しもが真っ先に思い浮かべるのがサイドデルタなのでメリットも良く知られてるかもしれません。
サイドデルタを鍛えるメリットは大きく3つです。

①肩幅 ②メリハリ ③鍛え分け

1-2-1 肩幅を広くする

男らしい理想的な逆三角形のボディラインを作る上で、肩幅を拡げるのは必須です。
その最前線にあり、肩幅を拡げることに直結するのが三角筋の中部。

肩幅は骨格的な問題で決まると思われがちですが、肩のサイドを丸く発達させることでコンプレックスを解消できます。
フィジークで重視されるパーツでもあり、その手のコンテストを目指すのであれば必須です。

いわゆるメロン肩を目指す上でも中心的な役割を果たす筋肉で、鍛えない人はもはやいないでしょう。

1-2-2 腕のメリハリを作りだす

サイドデルタというと前から見た時の幅の影響が多いと思われがちですが、横からの印象にも影響します。
上腕には三角筋の他に上腕二頭筋・三頭筋というメジャーな筋肉がついています。
全てがしっかりと発達した腕は側面から見た時には大きく3つに分かれているように見えるのです。

しかしサイドデルタの発達が甘いと肩と腕のセパレーションが生まれず、下膨れのような何となく貧相な印象になります。
メリハリのある腕を作るためにも三角筋の中部は外せません。

1-2-3 効果的な肩の鍛え分けに繋がる

三角筋の3つのパーツは非常に密接しているので、境界が分かりにくいという特徴があります。
特に三角筋の前部と中部はトレーニングの狙いを分けるのが難しい部位。

どの筋肉にとってもその走行に合わせた動作が一番ロスがなく、効果的なトレーニング方法です。
つまり効果的な鍛え分けのために境界をハッキリさせることが非常に重要になります。

肩のパーツ間のセパレーションを作り、前部を効果的に鍛えるためにも中部のトレーニングは欠かせません。

2 三角筋中部の鍛え方のポイント

三角筋が上手く発達しないと悩むトレーニーは多くいますが、それはポイントをしっかり押さえてないからです。
三角筋の中部の効果的な鍛え方を身に付けるために、鍛え方の要所をしっかり把握しておきましょう。
具体的には以下の3つのポイントについてです。

①解剖学的な機能 ②負荷の設定 ③種目選択の方法

2-1 三角筋中部の解剖学的な機能

関節や筋肉の作用を知る上で解剖学の知識は不可欠です。
とはいっても中身はそんなに大層なものではないので安心して読み進めてください。

三角筋の中部はシンプルに肩関節の外転動作にのみ働きます。
なのでトレーニングでも脇を開く動作で効果的に鍛えることができます。

肩関節の外転:脇を開くように腕を横に開く動作

Tの字を作るようなイメージね

ただし腕を振り上げてバンザイの姿勢をとる時、肩関節は単体では働いていません。
真下から真上までの180°の可動のうち100°程度を肩甲骨の可動によって補助されています。

脇が90°に差し掛かる手前くらいから肩甲骨が動くので、肩単体の可動では完全なTの字にはなりません。
Tの字、またはそれ以上の角度を動かそうとしてしまうと、肩甲骨が回旋する、すなわち僧帽筋が働いてしまいます。

僧帽筋に効いちゃうって人は挙げすぎて肩がすくんでないか要チェック

2-2 ミドルデルタトレーニングの難しさの原因

三角筋の中部に上手く効かせられないと悩む人は多いですが、その難しさの原因は大きく分けると以下の2つです。

①隣接する筋肉が多い ②動作のコントロール

まずシンプルに三角筋以外の筋肉が動作に関与してしまうということです。
既に解説した僧帽筋の上部が最も分かりやすい例でしょう。
肩関節を跨ぐ筋肉はその他にも大胸筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋などがあり、特に上腕二頭筋や前腕の力でウェイトを挙げてしまうケースもあります。

そしてもう1つの原因が肩関節そのものの特性です。
肩関節は球状関節と言われるもので、肘や膝などの関節ほど動作の方向に制限がありません。
動作の可動域という点では非常に優れたものですが、筋トレにおいては軌道が定まりにくいというデメリットにもなります。

どの方向に挙げても関節には大きな負担がかからないため、三角筋の中部を鍛える上で非効率な動作、無意味な動作をしていても気付きにくいのです。

2-3 三角筋の中部の適切な負荷設定

三角筋の中部は低負荷×高回数よりも、高負荷×低回数の方が反応すると言われますが、実際のところはどうでしょう?

三角筋は3つのパーツを合わせると体積は上半身で最大になりますが、別々の働きをするので個別の出力はそこまで高くありません。
三角筋全体の速筋・遅筋の比率で見ても42.9 : 57.1と遅筋優位の構成になっています。

しかし三角筋の中部だけは出力の大きい羽状筋と呼ばれる筋で、パワーが比較的大きい筋肉です。
そのため高負荷でのトレーニングが効果的と言われるのにも理があります。

ただ直前に解説した通り、肩関節は自由度が高い分フォームがブレやすくトレーニング効率が落ちやすい部位です。
重量を追い過ぎるあまり、ほとんどの負荷を僧帽筋に逃がしてしまっては元も子もありません。
最高でも8~10RM程度の重さに抑えるのが得策でしょう。

羽状筋とは

筋肉の起始から停止線のラインと筋繊維の走行方向の関係によって筋肉の種類が変わり、特性も変わります。
羽状筋とは鳥の羽のように起始・停止ラインから繊維が斜めに走っている筋の種類です。
筋繊維は短い代わりに太く、筋収縮のスピードは遅い代わりに大きな力を発揮できます。
筋繊維が短いので収縮できる距離が短い。
トレーニングの際のレップ数の設定は高負荷×低回数の方が効果的とされています。

三角筋中部が関与する可動域が狭いのは筋繊維が短いからなんだね!

2-4 三角筋中部の筋力発揮の特性

筋力発揮の特性を把握することはトレーニング種目の選択において非常に重要なポイントになります。

三角筋中部は肩関節の外転動作のみなので、この動作の特性さえ押さえればOKです。
この動作は初動、すなわち脇が全く開いてないポイントで発揮する筋力が最大になります。
これはつまり三角筋中部のストレッチポジションです。

そのため筋肥大を起こす3大要素のうちメカニカルストレスとマッスルダメージの2つを同時に狙えるということです。
これはミッドレンジ種目は不要ということでもあり、ストレッチ種目とコントラクト種目の2つに的を絞って重点的に鍛えるのが最も効率的になります。

また既に解説したとおり、腕を上げるほどに僧帽筋の関与が強くなります。
脇を閉じた状態は僧帽筋の関与ほとんどを受けないポイントなので、三角筋に負荷を集中させられるメリットもあり、この事実は一石二鳥です。

三角筋全体で見るとやや遅筋優位ですが、ミドルデルタは羽状筋であることもあり高負荷への耐性がやや高いと言えます。
とは言え肩関節はその自由度の高さゆえにインピジメントを起こしやすいという弱点もあるので、負荷の設定にはやはり注意しましょう。

まとめ

三角筋の中部(ミドルデルタ)を効果的に鍛えるための基本要素について解説しました。
解剖学的な機能は肩関節の外転動作のみなので、動作自体は非常にシンプルです。
しかし関節の形状や僧帽筋の関与など、様々な障害があるため思ったように簡単には鍛えられません。

筋繊維の走行に沿うように動作することが最も重要です。
また筋力発揮の特性からミッドレンジ種目は不要で、大きな負荷はストレッチ種目で扱えば良いことが分かります。
このポイントであれば僧帽筋の関与が少ないので、ミドルデルタに効かせやすくなるでしょう。

具体的なトレーニング種目やテクニックについては、ここで解説したポイントを踏まえて以下のページで解説します。
ぜひ参考にしてください。てなとこで。