上腕二頭筋トレーニングの基本|解剖学的な機能と効果的な鍛え方【盛り上がった力こぶ】

逞しい上腕、盛り上がった力こぶに憧れる男性も多いでしょう。
多くのトレーニーが筋トレを始めた頃にまず拘るのが、大胸筋または腕だと思います。

上腕二頭筋は初心者でも鍛えやすいシンプルな筋肉と思われがちです。
しかし構造を見てみると意識的にトレーニングしないとなかなか理想的な形に仕上げられない部位だということが分かります。

このページでは、上腕二頭筋の解剖学的な特徴に基づいた効果的な鍛え方について解説します。
難しい印象を受けるかもしれませんが、中身は意外と簡単です。
基本的な事項なのでしっかり押さえておきましょう。

このページでわかること

・上腕二頭筋の構造
・上腕二頭筋を鍛えるメリット、必要性
・上腕二頭筋の解剖学的な機能から見る効果的な鍛え方

1 上腕二頭筋の構造と鍛えるメリット

まずは上腕二頭筋の構造や位置の基本をしっかり押さえた上で、鍛えるメリットを見ていきましょう。

1-2 上腕二頭筋の構造

上腕二頭筋はトレーニーじゃなくとも知ってるほどメジャーな筋肉ですが、まずはその構造から解説します。

上腕二頭筋は上腕、つまり肘から上の前面についている筋肉です。
かなりザックリしたイメージですが、配置や構造については画像を参考にしてください。
上腕二頭筋の特徴はその名前の通り、1つの筋肉にも関わらず起始が2つあるってことです。

ちなみに停止も2つに分かれてるよ

これら2つは 一般的に長頭、短頭と呼ばれて区別されます。
かなり簡略化して説明すると、長頭は力こぶの高さ、短頭は内側の立体感を作るものです。

<長頭(外側)>
起止 = 肩甲骨の関節上結節
停止 = 橈骨粗面

<短頭(内側)>
起止 = 肩甲骨の烏口突起先端
停止 = 前腕筋膜 

長頭は横から見た時の厚み、短頭は前から見た時の厚みとも言えるね

上腕二頭筋と言うと「肘関節を曲げる筋肉」というイメージが強いですが、実は肩関節と肘関節の2つを跨ぐ筋肉です。
さらにその肩関節の跨ぎ方が長頭と短頭とで異なっています。
この意外と知られていない事実がトレーニング方法と効果を左右するので、それは後で詳しく紹介します。

力こぶで目立ちはしますが、体積は366㎤とそこまで大きな筋肉じゃないので、しっかり鍛えないとなかなか力こぶは盛り上がりません。
速筋:遅筋の比は53.6:46.4とやや速筋が優位なので、比較的トレーニングで大きくなりやすい筋と言えます。

1-2 上腕二頭筋を鍛えるメリット

上腕二頭筋を鍛えるメリットは何と言っても逞しい力こぶのある上腕を作り上げることです。
よく「腕を太くしたければ三頭筋」と言われます。
体積的に見れば確かにそうなのです。
しかし三頭筋は横の張り出しを作る筋肉なので後ろから見た時はよく分かりますが、その他の方位が疎かになってしまいます。

上腕二頭筋は前にせり出すように発達するので、横から見た時の腕の太さに大きく影響します。
前面から見た時の三角筋のフロントとの境界をハッキリさせる意味でも重要です。
さらに上腕の前面は皮下脂肪がつきにくく、発達してくると血管も浮き始めるので逞しさはさらに加速します。

トレーニングで血流が増えれば血管自体も太くなるしね

力こぶを周囲に披露する機会は滅多にないですが、夏場に半袖から覗く上腕の血管に萌える女子も多いんじゃないでしょうか?知らんけど。
もちろんあからさまな腕太自慢は引かれますが…。

2 上腕二頭筋の解剖学的な機能

肘のガイドに従っていれば自然と効果的な動作になると思ってる人も多いんじゃないでしょうか?
上腕二頭筋の構造について解説したとこでも軽く触れましたが、シンプルに見えて意外と複雑な筋肉です。
意識しなくても満遍なく鍛えられるほど単純なパーツじゃありません

具体的な機能を知って、効果的なトレーニング方法を習得しましょう。
解剖学というと何やら小難しい話のように思えますが、砕けば実態は非常にシンプルなものです。
同じ種目でも効果を最大化するテクニックの習得にも繋がる大事なポイントなので、しっかり押さえておいてください。

2-1 長頭・短頭に共通の機能

まず長頭と短頭には共通する機能と独自の機能の2つがあります。
共通の機能は誰もが知ってるとおり肘関節の屈曲です。

肘関節の屈曲:肘を曲げる動き

そして肩関節を通っているため、実は肩の動作にもうっすら関与します。
具体的には肩関節の屈曲と水平内転です。

肩関節の屈曲:腕を下ろした状態から前に挙げる動き
肩関節の水平内転:Tの字に開いた腕を高さを維持したまま身体の前で閉じる動き

実はこれらの機能は大胸筋三角筋広背筋・大円筋の機能でもあります。
ベンチプレスやフロントレイズ、ラットプルダウンなどの種目で二頭筋にも疲労が出るのはこのためです。
腕立て伏せでは二頭筋を鍛えられないと説明するサイトもありますが、解剖学的に見れば厳密には正しくありません。

ただメインターゲットじゃないってだけ

2-1 長頭・短頭それぞれに特有の動き

そして上腕二頭筋の鍛え分けに最も重要なのが長頭・短頭それぞれに特有の働きです。

長頭(外側)は肩関節を外側から通っているため、肩関節の外転に関与します。
三角筋のミドルを鍛える種目のサイドレイズで上腕二頭筋の長頭側が軽く疲労するのはこのためです。

長頭に特有の働き>
肩関節の外転:腕を下ろした状態から横に広げる動き(Tの字を作る)

一方の短頭(内側)は肩関節を内側から通っているため、肩関節の内転に関与します。
そして肘関節の回外も短頭に特有の機能です。

短頭に特有の働き>
肩関節の内転:Tの字に開いた腕を閉じて身体の脇に戻す動き
肘関節の回外:親指を外側に向けるように腕を捻る動き

肩関節の内転に関与するため、広背筋のラットプルダウンや大胸筋の(ハイ)ケーブルクロスオーバーなどでも疲労します。

3 上腕二頭筋の高価的な鍛え方

基本的には長頭と短頭に共通の肘関節の屈曲をすることで上腕二頭筋は鍛えられます。
しかし効果的に鍛えるためには、重量の設定や細かい特徴についても把握しておかなくてはいけません。

3-1 最大のポイントは手のひらの向き

その中で特に問題になるのは短頭に特有の機能である肘関節の回外です。
アームカールなどを行う時にウェイトを持つ一般的なスタートポジションは手のひらを上に向けた(肘を回外させた)姿勢になります。

上腕二頭筋に限ったことではありませんが、トレーニングをする上で重要になるのが、これから機能を発揮する筋肉が強く働くという筋力発揮の特性です。
つまり最初から半分くらい回外した姿勢でスタートすると短頭の機能発揮が弱くなるので、漠然と続けると短頭(内側)の発達が疎かになってしまいます。

力こぶの厚み(丸み)は主に短頭が作るので、上腕二頭筋でも特に印象的な部分がなかなか発達しません。
手のひらを最初から上に向けたフォームに偏ることなく、様々なバリエーションを持たせることがバランスの良い発達には不可欠です。

3-2 上腕二頭筋の筋力発揮の特性

効果的なトレーニングメニュー構成のためには筋力発揮の特性の理解が欠かせません。

上腕二頭筋の解剖学的な機能の中で最も主要な肘関節の屈曲動作では、90~120°近辺で筋力が最大になります。
これは肘の屈曲動作のちょうど中間に当たるので高負荷はミッドレンジ種目で扱うのが効果的です。
通常のスタンディングで行うアームカールであれば、ちょうど肘の角度が直角に近くなるところで負荷が最大になる(=重力の方向と一致する)ので、さほど問題はないでしょう。

問題になるのはストレッチポジションと収縮位での負荷です。
通常のアームカールではこれらのポイントで、上腕二頭筋にはほとんど負荷が乗りません。
つまり肘を曲げる動作をしてるだけで、十分な刺激は筋肉に届いていないということです。
この辺りのことも踏まえた上腕二頭筋のトレーニング種目についてはこちらのページで解説しています。

3-3 重量の設定

速筋:遅筋の比率は53.6:46.4と上腕二頭筋はやや速筋の量が多いですが、その差は小さくほぼイコールです。
速筋があまり多くない上に、筋繊維の走行も平行筋ということで爆発的な力を生み出すことにはあまり向いていません。
肘関節の屈曲動作がメインになるコンパウンド種目もほとんどなく、他の筋肉のサポートを受けて高重量を扱う余地もほとんどないです。

研究でも上腕二頭筋には高負荷×低回数よりも負荷×回数の方が筋肥大効果が高かったというエビデンスがあります。
こういった事情から上腕二頭筋のトレーニングには低負荷トレーニングが効果的で、重くても8RMくらいが限度でしょう。

ちなみに肘関節の屈曲動作の中で肘が直角になるポイントは特に力が入りにくいポジションで、スティッキングポイントと言います。
ここで腰や膝の反動を使ってしまいやすいので、その点も重量設定の際は注意しましょう。

負荷が最大になるポイントだからね

平行筋とは何か

筋肉の起始から停止線のラインと筋繊維の走行方向の関係によって筋肉の種類が変わり、特性も変わります。
平行筋とはその名の通り起始・停止線と筋繊維が平行に走っている筋肉です。
別名を紡錘状筋と言います。
平行筋は筋の全長が長いため収縮距離が長く、広範囲で力を発揮できます。
収縮速度が速いのが特徴ですが、その一方で発揮できる力はあまり大きくありません。
トレーニングの際のレップ数の設定は低負荷×高回数の方が効果的とされています。

4 上腕筋って二頭筋と違うの?

実は上腕には二頭筋と三頭筋というよく知られた主要筋の他にもう1つ上腕筋という筋肉があります。
これは上腕二頭筋の下層に位置する筋肉で、インナーマッスルに近いものです。
上腕筋は内側から上腕二頭筋を押し上げ、高さを作るのに貢献します。

上腕二頭筋と同じく肘の屈曲(曲げる動作)に関与するもので、二頭筋のトレーニングによって同時に鍛えられるので、個別に狙う人は少ないかもしれません。
しかし上腕筋が発達してるかどうかは腕の印象を大きく左右するものです。
上腕筋が発達していないと腕の断面が楕円形で細長くなってしまいますが、上腕筋が十分に発達していると、これが円形に近付きます。
地味ながらも丸太のように太い腕を作る上では欠かせない筋肉なのです。

トレーニングに充てられる時間に限界がある場合は優先度が下がりますが、余裕があるなら鍛えてみることをオススメします。
上腕筋のトレーニングについては別のページで詳しく解説するので、興味がある人はそちらもご覧ください。

準備中

まとめ

上腕二頭筋を効果的に鍛えるための基本について解説しました。
肘の動作は1方向に固定されているので、このガイドに従うだけで十分に鍛えられると考える人が多いです。
しかし「二頭」の名のとおり、起始・停止が2つずつあり、しかも肩を異なる方向から跨いでいるという複雑な特徴を持っています。

上腕二頭筋の主要な機能は一般的なイメージのとおり、肘の屈曲です。
そして内側と外側の関与に影響するため、次に肘の回外という機能が重要になります。
肩の屈曲もまた、最大負荷のポイントや鍛え分けに重要なポイントですが、それはトレーニング種目を解説したページに譲ります。

上腕二頭筋は速筋の比率がやや高いですが、平行筋というのもあって爆発的な力を生み出すのは得意ではありません。
最大負荷を設定するにしても8RMくらいを限度として、低負荷×高回数トレーニングを中心にする方が効果的です。
あまりに負荷を大きくし過ぎるとスティッキングポイントで膝のチーティング(反動)を使いやすく、ケガのリスクもあるので注意しましょう。
てなとこで。