モーターユニットとサイズの原理|筋トレの負荷設定に関わる基礎知識

効率的に筋肥大させるためには高重量×低レップが良いのか、低重量×高レップが良いのか、重量設定に悩む人は多いと思います。

そのことを考えるに当たって必要になるのが、①モーターユニット②サイズの原理です。
筋繊維の特性についてしっかり把握しておかないことには、何が・なぜ筋肉の発達に効果的なのかを考えることは出来ません。

このページではこの2つがどのようなものなのか、よく知られている速筋・遅筋の区分との関係やその特性について解説します。

このページでわかること

・筋肉の構造とモータユニットの関係について
・サイズの原理とは何か
・モーターユニットと速筋・遅筋の関係
・速筋、遅筋の特徴

筋肉の構造とモーターユニット

各筋肉が筋繊維の集合体であることは一般的にも良く知られたことで、経験のあるトレーニーにとってはもはや常識と言えます。
しかし同じ筋肉の中でも繊維ごとに個別にコントロールされているということはあまり知られていません。

1つの筋肉には複数の(運動)神経が繋がっており、その神経がそれぞれいくつかの筋繊維でできた束をコントロールしています。
この1本の神経にコントロールされる筋繊維の単位がモーターユニット(運動単位)です。

ある筋肉を狙ってトレーニング動作をする時、全体が一体になって働いていると思ってる人が多いですが、実際には一部のモーターユニットが働き、残りは休んでいます。

因みにこの性質のことを「全か無の法則」って言うよ

そのため、セット数が少ないと一部のモーターユニットしか使われなくなってしまいます。
効果的に筋肥大を起こすには、広範囲の筋繊維に満遍なくストレスをかけなければいけないため、インターバルを挟んで複数セット行う必要があるのです。
因みにインターバルの重要性や長さについて詳しくは以下のページで解説しています。

そして1つの神経にコントロールされる筋繊維の本数、すなわちモーターユニットの大きさは一定ではありません。
そしてモーターユニットはその大きさによってそれぞれ異なった特徴を持っています。

サイズの原理とモーターユニットの関係

サイズの原理は筋トレ業界において既に古典の域に達しており、これまたある程度の経験があるトレーニーとっては常識になっています。
これは負荷に応じて動員されるモーターユニットの大きさが変わることを説明した理論で、ハーバード大学のヘンネマン氏らによって提唱されました。

内容は以下のように至ってシンプルなものです。

<サイズの原理>
負荷が高くなるほど大きなモーターユニットが優先的に動員されるようになる

つまり負荷が大きいほど同時に動員される筋繊維の数が多くなるということです。

筋肥大は構成する筋繊維に満遍なく刺激・ストレスを与えることで起きるので、多くの筋繊維に一気に刺激を与える方が筋肥大の効率は高まると言えます。
つまりサイズの原理に従えば、より多くの筋繊維で構成される大きなモーターユニットが使われやすい高負荷を扱うのが効率的ということです。

モーターユニットと速筋・遅筋の関係

筋繊維も全てが同じ性質を持っているわけではなく、2種類の異なる特性を持ったものが存在します。
それが速筋・遅筋という分類であり、これはモーターユニットやサイズの原理に比べればかなり有名なので、筋トレ初心者を含めてほとんどの人が知ってるはずです。

速筋がさらに2種類に分かれるから厳密には3種類なんだけどね

実はこの速筋・遅筋という区別にも、これまで解説してきたモーターユニットとサイズの原理が大きく影響しています。
モーターユニットは大きさによって性質が異なっており、ザックリ説明すると以下のとおりです。

大きいモーターユニット
 筋繊維は数百から数千本。大きな力を発揮できるが疲れやすい。

小さいモーターユニット
 筋繊維は数十本程度。力は小さいがスタミナがある。

後半に述べた特徴はまさによく知られている速筋と遅筋の性質そのものです。
つまりサイズの原理は高負荷トレーニングほど速筋繊維が動員されやすいということを述べているわけです。

速筋繊維は単に多くの筋繊維で構成されてるだけでなく、太くなりやすいという性質を持っています。
こうした理由から効率的な筋肥大のためには高負荷のトレーニングが有効とされているわけです。

ついでに速筋繊維(モーターユニット大)と遅筋繊維(モーターユニット小)の特性についてもここで押さえておきましょう。

遅筋繊維速筋繊維(中間型)速筋繊維
筋繊維の色ピンク
筋肥大肥大しにくい肥大しやすい肥大しやすい
ATPase染色法 タイプⅠ タイプⅡa タイプⅡb
運動の種類低負荷×高回数
有酸素運動
高負荷×低回数
無酸素運動
高負荷×低回数
無酸素運動
代謝・エネルギー源脂質糖・脂質糖質
解糖系酵素活性
酸素系酵素活性中間
ミトコンドリア数中間
ミオグロビン量中間

速筋繊維は2種類(厳密には3種類だが、3つめはほとんど無視できる量)に分かれ、その特性が若干異なります。

速筋繊維は解糖系の酵素活性が強く、無酸素性代謝つまり筋トレなどの無酸素運動で働き、糖質を中心に消費します。
中間に当たる速筋繊維(タイプⅡa)はトレーニングをすることによって増加し、脂質も代謝するようになります。

遅筋繊維は酸素系酵素活性が強く、ミトコンドリアやミオグロビン量が多いので有酸素性代謝、つまりジョギングなどの有酸素運動で働き、脂質を中心に消費します。

まとめ

筋肥大を考える上での基本中の基本に当たるモーターユニット・サイズの原理、そして速筋・遅筋の分類について解説しました。
これらは適正な負荷設定やセット数、インターバルの長さなどを考えるための基礎になる知識です。

サイズの原理に従えば、負荷の設定は高重量1択になりそうです。
筋繊維が肥大しやすい速筋が優先的に動員されることからも、高負荷の方が効果的なように思えます。

しかし実際には、ここで解説した以外にも様々な要因が複雑に絡み合っていて、一概に高負荷に設定すれば良いとも言い切れません
高負荷トレーニングを肯定する1つの要素にはなりますが、結論を急がないようにしましょう。
てなとこで。

参考文献