ベンチプレスでブリッジはせこい?|組み方とメリット・デメリット

ベンチプレスのブリッジ

ベンチプレスのブリッジって何?やった方がいいの?
「あれはせこい」とかも聞くけど

ベンチプレスは大胸筋を鍛える代表的なトレーニングです。
バーベルを挙上する時に背中を反らせるブリッジ(またはアーチバック)はこのベンチの基本姿勢とも言えるものですが、実はメリットとデメリットの両面があります。

正解か不正解かはベンチプレスにおいてメリット・デメリットの側面を重視するかによって決まるものです。
このページではベンチプレスでブリッジを組む方法とメリット・デメリットについて解説します。

ベンチプレスのブリッジの組み方

ベンチプレスでブリッジを組む時のポイントは以下の3つです。

①お尻と肩甲骨を支点にして、背中を反らせる
 ※骨盤を前傾させると腰の負担が増してしまう
②肩甲骨を寄せて胸を張る
③床についた足でしっかりと踏ん張る

まず基本の姿勢はお尻と肩甲骨をベンチに着き、腰・背中をベンチから浮かせます。
後頭部はしっかりベンチに押し付けておくようにしましょう。
頭をベンチにつけておくのも安定感とパワー発揮にとって重要なポイントです。

そして肩をすくめないように下げて、左右の肩甲骨を寄せます。
意外と疎かにされやすいポイントですが、床についた両脚でしっかり踏ん張ることも重要なポイントです。

ブリッジを組んだ姿勢を崩さないまま、バーベルをラックから上げてゆっくり胸に向けて下ろします。
この動作を勢いよくやってしまって胸にバウンドさせて挙げてしまう人がいますが、これはトレーニング効果が低く、ブリッジを崩す原因にもなるのでNGです。

因みにバーベルを挙げる時に肩甲骨を開き、胸郭を閉じるように動作すると、腕や肩に負荷が入りにくくなります。
そして下ろす時にはまた胸郭を開き、肩甲骨を寄せるように動作することで大胸筋にストレッチが上手く入ります。

初心者のうちは難しいと思うけど、慣れてきたら意識してみて

2 ブリッジを組むメリット

ベンチプレスのブリッジ(アーチバック)の基本的な組み方がわかったところで、そのメリット・目的について解説していきます。
ブリッジを組む理由は大きく以下の3点です。

①高重量を扱いやすい ②大胸筋のストレッチ ③ケガ予防

2-1 高重量が扱いやすい

大胸筋トレーニングとして有名なベンチプレスですが、使われる筋肉は主動筋の大胸筋と補助筋の三角筋フロント、上腕三頭筋だけではありません。
大きな重量を身体の真上で扱うトレーニングなので、腹筋群や下半身の筋肉まで動作に貢献します。
特にブリッジの姿勢で脚の踏ん張りを効かせやすくすることは高重量を扱う上で重要です。

またブリッジにより身体がカーブすることで、バーを押す方向が真正面ではなくやや下向きになります。
このやや下に押す動作で活動が優位になるのが大胸筋の中部・下部です。
大胸筋は中部・下部の出力が大きく、かつ三頭筋が動作に関与しやすいため、トータルの出力が高くなります。

そしてブリッジを組むことで胸の位置が高くなり、バーベルの挙上動作を行う距離が短くなります。
動作範囲が短くなる分、動作での消耗が少なくなるため、高重量であってもクリアしやすくなるのです。

ブリッジがせこいって言われるのはこういう理由から。
お尻まで浮かせたフォームでの記録をPR(個人ベスト)として言うのはさすがにせこいかも。

2-2 大胸筋にストレッチを効かせやすい

筋肥大のために有効な刺激は複数ありますが、中でも効果が高いとされているのがストレッチです。
筋肉を大きく引き伸ばすストレッチ種目は端から端まで筋肉全体を刺激することができるので、部分的に発達のレベルが異なるアンバランスな筋肥大の解決にもなります。

ベンチプレスでブリッジを組むことがストレッチに効果的な理由は以下の2点です。

①肩甲骨が寄せやすくなる ②肘が引きやすくなる

まず大胸筋をストレッチするためには胸郭を大きく開く必要があります。
つまり身体の背面で言うなら左右の肩甲骨を寄せるということです。

この姿勢はベンチに背中をベッタリと着けてしまっているとなかなか上手く出来ません。
ブリッジを組んで背を浮かせることで、肩甲骨(特に下部)がフリーになるので、肩甲骨を寄せやすくなります。

もう1つが肘を後方に引きやすくなることです。
肩と同じ高さで肘を後方に引こうとしてもあまり深く引くことが出来ません。
深く引くためには脇を90°より狭く、だいたい60~70°くらいにする必要があります。

上級者であればフラットな状態でもこのフォームが取れますが、初心者の場合は肩の高さで動作してしまいがちです。
その点ブリッジを組むと動作の方向が斜め下になるので、自然と脇が締まりボトムまで下ろしやすいフォームになります

2-3 ケガの予防

ベンチプレスで大胸筋に負荷を入れたい場合、押す動作そのものよりも胸郭や肩甲骨を動かす意識を持つことが重要です。
これが出来ていないと大胸筋に負荷が入らないだけでなく、ケガのリスクもあります。

大胸筋・上腕三頭筋・三角筋のフロントの3つがベンチプレスで主に関与する筋肉です。
3つの大きな筋肉が関与するからこそ高重量を扱えるわけですが、メインの大胸筋が関与しにくくなると、残る2つで支えることになります。

特に危険なのが下ろす局面です。
動作の中間からトップまでの区間は上腕三頭筋も動作に関与します。
しかしボトムポジションでは三頭筋は伸び切ってしまっていて、サポートが強くありません。
つまり肩のフロントだけで高重量を支えなければいけないってことです。

三角筋のフロントもそこそこ出力が大きい筋肉ですが、ベンチで扱うような高重量を支えられるほどではありません。
そうなれば肩関節にダメージが及ぶことは避けられないでしょう。
この肩の負傷を避けるため、肩甲骨を可動させやすくするブリッジは重要なのです。

大胸筋が発達してないのに三角筋のフロントはやたら発達してるとしたら、肩甲骨の可動が上手く使えてないって証拠だよ

3 ブリッジを組むデメリット

しかしベンチプレスのブリッジは良いことばかりではありません。
ブリッジを組むデメリットは大きく以下の4つがあります。

①トレーニングボリュームの低下
②上部の発達が停滞する
③ケガのリスク
④チーティングに入りやすくなる

3-1 トレーニングボリュームの低下

ブリッジを組むことで動作距離が短くなるため、高重量を扱うことが出来ます。
しかし動作の距離が短いということは、筋肉の収縮運動の範囲が狭いということでもあります。

筋肥大にはトレーニングボリューム(総負荷)の大きさが重要と言われています。
総負荷とは負荷×レップ数×セット数です。
しかし厳密に考えるなら動作を行った距離(=収縮範囲)も考える必要があります。
そのためブリッジを組んで動作の距離を短くすることは、重量の代わりに距離(=ボリューム)を捨てることになるということです。

ちょこちょこ動かすのと最大限の収縮を取るのとで効果が同じとは考えられないもんね

そしてもう1つの問題が姿勢の安定性です。
ベッタリ背中をベンチに着ける姿勢に比べると頭・肩・お尻だけで支える姿勢はやや安定性に欠けます
安定感の低さは挙上できる重量や回数を低くしてしまうため、これもトレーニングボリューム低下の要因です。

高負荷が扱いやすいという点が魅力のはずですが、両脚を含めた5ポイントコンタクトでしっかりバランスを取る体幹の力がないとデメリットだけになってしまいます。

3-2 負荷の偏り

ブリッジを組むとバーベルを押す方向が身体の真正面から、やや斜め下に変わります。
ディップスに近いイメージです。
発揮する筋力の大きい大胸筋の下部や上腕三頭筋の関与が大きくなるため高重量を扱いやすくなりますが、これには問題もあります。

最も分かりやすいのが、大胸筋の上部の発達の遅れです。
フラットなベンチプレスであれば上部も動作に関与しますが、これがデクラインやディップスに近くなるとほとんど関与しません。
実際に大胸筋のトレーニングがベンチプレス中心になっている人は中部・下部に比べて上部の発達が遅れていることが多いです。

またブリッジで力むことが身体に定着してしまうとインクライン種目でも上部が鍛えにくくなります。
ベンチの背を起こしても背中のアーチを効かせ過ぎてしまうと、胸の向きがフラットに近くなってしまうからです。

3-3 ケガのリスクが高まる

ブリッジを組むことのメリットとして肩関節のケガを予防できることを挙げましたが、一方でケガのリスクが高まる部位もあります。それがです。

実はデッドリフトやスクワットなど体幹に大きな負荷がかかるイメージのある種目よりもベンチプレスで腰を負傷するケースが多いと言います。
その原因は大きく分けると以下の2つです。

①ブリッジによる反り腰 ②腹腔内圧の低下

ブリッジは背中でアーチを描くため、腰が強く反った状態になります。
腰の負担を小さくするため骨盤を前傾させないようにするのがポイントですが、この意識を保つのがけっこう難しいのです。
どうしても動作してる最中に骨盤が前傾してしまうため、腰が弱い人は症状が悪化する可能性があります。

またブリッジの体勢は腹筋が引き伸ばされてしまうため、フラットや背中を丸めた姿勢に比べて腹圧を高めにくくなります。
腹圧を高められないと関節にモロに負荷がかかってしまうため、これはヘルニアなどのリスク要因です。

腹筋と背筋にバランスよく力が入るフラットが一番負担の無い姿勢ってことかな

3-4 チーティングに入りやすい

ブリッジによるデメリットの最後の1つがチーティングの問題です。
チーティングとは挙上をサポートするために身体の反動を利用すること全般を言います。
ベンチプレスの場合は両足の踏ん張りを強くしてお尻をベンチから浮かせる反動を挙上に利用する方法です。

チーティングも使い方によっては効果的なんだけどね!

ブリッジの姿勢はお尻が浮かせやすいので、ギリギリで挙上している時につい浮かせてチートしてしまう可能性が高くなります。
チーティングの問題点は以下の3つです。

①負荷の分散 ②安定感の低下 ③腰への負担の増加

チーティングを利用してしまうと挙上はしやすくなりますが、その分ターゲットとなる大胸筋から負荷は抜けてしまいます。

またお尻を浮かせることでコンタクトポイント(接地面)がさらに1つ減ることになるので、姿勢の不安定さがさらに増してしまう点も問題です。

そしてお尻が浮くことによってブリッジの支点が肩と脚になり、最も不安定なアーチの頂点が腰になってしまいます
それだけ腰にかかる負担が増すということです。

まとめ

ベンチプレスのブリッジの組み方、メリット・デメリットについて解説しました。
メリット・デメリットを改めてまとめると以下のとおりです。

<メリット>
①高重量を扱いやすい:力が入りやすい上に動作距離が短い
②大胸筋のストレッチ:肩甲骨の可動で肘を引きやすくなり可動域を広く使える
③ケガ予防:大胸筋からの負荷抜けによる三角筋のフロント・肩関節の負担増加を回避

<デメリット>
①トレーニングボリュームの低下:距離が短い分、筋肉の収縮範囲も狭い
②上部の発達が停滞する:刺激が下部や三頭筋に集中する
③ケガのリスク:腹圧がかけにくく腰の負担が大きくなりやすい
④チーティングに入りやすくなる:ついお尻を浮かせやすくなる

メリット・デメリットの2つを見ればわかると思いますが、ブリッジをすべきか否かは目的次第です。
運動神経の強化という側面があるなら筋肥大を無視して高重量を扱うことにも意味があります。

ただし可動域やケガの予防に関しては大げさなブリッジを組まなくても対策が可能です。
アーチチェスト、すなわち胸(正確には鳩尾の辺り)を張って前に突き出すようにする方法です。
これなら腰に負担をかけずに胸郭・肩甲骨の可動で大胸筋を上手く収縮させることが出来ます。
区別がなかなか難しいですが、この方法ならメリットを残しつつデメリットを解消できるので練習してみてください。
てなとこで。