睡眠不足で太る4つの理由|モナリザ仮説とは?

運動してるのに全く痩せないんだけど…

ダイエットの定番と言えば運動、そして食事制限でしょう。
しかし最近ではこれらをいくら頑張っても睡眠がしっかりとれてなければ全てがムダになってしまうことが分かっています。
もしかしたらあなたが痩せないのも睡眠不足が原因かもしれません。

このページでは睡眠不足が肥満を引き起こしてしまうメカニズムについて解説します。
睡眠不足と肥満の関係は様々な角度から説明できます。
具体的には以下の4つです。

①自律神経の疲労 ②コルチゾール ③成長ホルモン ④自制心

以下で順番に解説していきます。

1 自律神経の疲労が肥満に繋がる

まず1つ目の原因が睡眠不足による自律神経の疲労です。

1-1 モナリザ仮説とは?

モナリザ仮説とは睡眠とダイエットの関係を端的に表現したものです。
以下の文章の頭文字をとってMONALISA仮説と呼ばれています。

Most Obesities kNown Are Low InSympathetic Activity

直訳すると 以下のような意味になります。

肥満体の多くで交感神経の活動が低下している

太っている人の多くが交感神経の活動が低下していることが研究で確認されたのです。
この観察された事実から交感神経の疲労が肥満に繋がるのではないかと推測されています。

レオナルドダヴィンチの名画は全く関係ないのね

そりゃそやろ

自律神経は交感神経副交感神経の2つから成っており、起きている間は交感神経が、リラックス中や睡眠中は副交感神経がそれぞれもう一方より30%ほど優位に働いています。
交感/副交感神経が上手く交代することで各々の役割をしっかり果たすことができるわけです。

しかし睡眠が不十分だと覚醒状態を担当する交感神経が働く時間が長くことになり、休む時間が無い上に回復も出来なくなってしまいます。

1-2 交感神経の疲弊が肥満に繋がる理由

でも何で交感神経が疲労すると太るの?

交感神経が疲弊すると肥満に繋がるのはシンプルに過食に陥るからです。
この過食には以下の2つのことが関係しています。

①レプチン・グレリンの分泌異常 ②ジャンクフードのワナ

1-2-1 脳のバグによるホルモン異常

本来グレリンは胃が空っぽになったのを感知して分泌が活発になる食欲増進ホルモンですが、睡眠不足に陥ると空腹とは無関係にグレリンの分泌が過剰になります。
そして食事を適量に抑える役割を果たす食欲抑制ホルモンであるレプチンの分泌が減少してしまうのです。

つまり食欲が止まらなくなるってこと

交感神経の疲労が食欲を暴走させる理由は単純にシステムのバグです。
本当の原因は睡眠不足にも関わらず、疲労の原因をエネルギー不足だと脳が勘違いしてしまいます。
当然たくさん食べても寝なければ交感神経の疲労は回復しませんが、それに脳が気付くことは無く、さらに過食を促してしまうのです。

しかし問題は単なる過食を促すということだけにとどまりません。
食欲の増進によって食べてしまうモノにも問題があるのです。

1-2-2 さらにバグる

そしてもう1つの原因がジャンクフード摂取による悪循環です。
グレリンはただ食欲を増進するだけじゃなく高カロリーなモノ、特にジャンクフードなど糖や脂質が異常に多い食品を欲します。
その方が効率的にカロリーを摂取できることが分かっているからです。

当然ジャンクフードはハイカロリーなので、エネルギーの余剰が生まれやすくなります。
また栄養の質も悪いため、同じカロリーをクリーンな食事で摂るより肥満リスクが高いことが分かっています。
しかしジャンクフードの問題はそれだけではありません。

ジャンクを食べることによって脳のバグがさらに加速してしまうのです。
ジャンクフードに含まれる砂糖や脂質は食欲を加速させる性質を持っています。
そして空腹とは無関係な食事を繰り返す内にレプチン・グレリンの分泌システムが壊れ、いずれ機能しなくなってしまうのです。

1-3 グレリンは間の悪いホルモン

グレリンが分泌されるタイミングにも問題があり、ここから肥満の悪循環が生まれます。
そのタイミングとはズバリ疲労がピークに達する夜遅い時間です。

「夜食に何かつまみたいなー」と思った経験がある人は多いはず

夜食の問題は大きく以下の2つです。

①食べたエネルギーが消費されない ②睡眠の質の低下

夜間は1日の中でも特に活動レベルが低く、何かを食べてもその後にやることと言えばテレビを観て寝るくらいでしょう。
当然のことながら夜食のカロリーは余ることになります。

また夜食を食べて間もない内に入浴したり、そのまま寝てしまうこともあるでしょう。
このような行動は消化不良を起こし、睡眠の質を著しく低下させます。
つまり交感神経の疲労をさらに加速させ、過食になるという悪循環に転落してしまうということです。

2 ストレスホルモンで太る

睡眠不足で肥満になる2つ目の理由がストレスホルモンコルチゾールの分泌の加速です。
このコルチゾールには非常に厄介な3つの働きがあります。

①食欲を増進する ②体脂肪の蓄積を促進する ③筋肉を分解する

いずれも説明するまでもなく、ダイエッターにとってはありがたくない働きばかりです。

何で睡眠不足になるとコルチゾールが分泌されやすくなるの?

睡眠不足で即コルチゾール分泌ってわけじゃなくて、
陥る状態がコルチゾール分泌を促進するんだ

睡眠不足の状態だと何となく神経が過敏になってると感じることは無いでしょうか?
普段は気にならない小さな物音が気になったり、些細なことでイライラしたりすると思います。
このように睡眠不足になると本来は生じないはずのストレスが多く発生し、その分コルチゾールの分泌も増えてしまうのです。

ここからは睡眠不足で過敏になる理由の解説
興味のある人だけでOKだよ

そして些末なことに敏感に反応してしまうのは、脳が野生モードになっていることが原因です。
自然界では常に命の危険があるため、あらゆる刺激に敏感に反応するよう常に警戒しています。

一方で文明社会を生きる人間において、そんな危険を心配をする必要はほとんどありません。
そのため通常であれば、理性(前頭葉)が野生(辺縁系)をなだめすかして刺激に適切に対処しているわけです。

しかし文明社会を生きる人間であっても、睡眠不足に陥ると一気に野生モードに引き戻されてしまいます。
睡眠不足によって脳が野生モードに入ってしまう理由は大きく以下の2点です。

①理性は燃費が悪い ②理性は後付けのもの

まず理性は非常に膨大なエネルギーを消費します。
脳の疲労は睡眠によって回復されますが、それが不十分だとエネルギー不足で理性が上手く働くことが出来ないのです。

そしてもう1つ、理性が優先されにくいという性質も関係しています。
もともと進化の過程で考えれば野生がベースにあって、理性は後からついてきたものです。
つまり人間においても本質的なところは野生的な本能ということです。

3 成長ホルモンが分泌されないと痩せない

成長ホルモンというと身長を伸ばすホルモンという印象が強いと思います。
筋力トレを行っている人ならば、筋肉のキズを修復し、筋肉を大きく成長させるのに役立つホルモンということも知っているでしょう。
実はこうした主要な作用のほかに、糖質・脂質の代謝促進・体脂肪の燃焼促進というダイエット効果もあります。

成長ホルモンは就寝後3時間に分泌されますが、分泌には以下の条件が必要です。

①運動量
②低血糖(絶食)
③深い睡眠

つまり良質な睡眠が取れていないと成長ホルモンは分泌されず、余剰のエネルギーや体脂肪が残りやすくなる、つまり肥満になりやすいということです。

実は前の項目で紹介したコルチゾールも睡眠に大きく関わっています。
というのもコルチゾールは血圧や血糖値の上昇など起床・覚醒に関わるホルモンで、夜間に分泌されてしまうと入眠を妨げることになるからです。

そしてグレリンの暴走による夜食も成長ホルモン分泌の阻害要因であることが分かります。
グレリンの分泌で欲するのは脂質と糖質の多いジャンクフードで、そんなものを食べた直後に寝ようにも低血糖状態にあるわけがないからです。

4 睡眠不足で自制心が崩壊する

極めつけが睡眠不足による自制心の崩壊です。
睡眠不足になるとグレリンの分泌によって食欲が暴走しても、レプチンはおろか自制心によってもそれを止めることが出来なくなってしまいます。
ではなぜ睡眠不足によって自制心が崩壊してしまうのでしょうか?

自制心の源は認知リソース(ウィルパワー)という脳の体力です。
ただ認知リソースを消費するのは自制心だけではありません
思考や判断、感情などいわゆる人間的な脳の機能は全て認知リソースを消耗します。

キレ食いはストレスが認知リソースを消耗しすぎて自制心が働かせられなくなった結果だよ

そしてこの認知リソースを回復する唯一の手段が睡眠です。
つまり睡眠不足になれば自制心を含めた思考の全般が機能不全を起こすことになります。

ダイエットが続かない時に自分の自制心の無さを責める人は多いと思います。
しかし自制心の強さは問題ではありません。
そもそもの問題は自制心が何なのかを知らないことです。

自制心が認知リソースという脳の体力を源泉にしてること、認知リソースを様々な思考が共有してること、回復するには十分な睡眠が必要なこと。
これらを知れば適切なコントロールができるようになるはずです。

まとめ

睡眠不足と肥満の関係について解説しました。
睡眠不足になるとありとあらゆる方向から肥満を加速してしまいます。

特にレプチン・グレリン・コルチゾール・成長ホルモンなどのホルモンの分泌の影響は絶大です。
一般的には自制心の影響が大きいというイメージだと思いますが、後付けの理性だけで本体である本能をコントロールし続けることは出来ません。

そもそも睡眠不足だと頼みの自制心も働かないんだけどね

睡眠不足によって負のループが回り出してしまうことが分かったと思いますが、もう1つ重要なことがあります。
それは肥満もまた睡眠不足の原因になるということです。
肥満だと成長ホルモンの分泌が阻害され、睡眠の質が低下してしまいます。
つまりもっと大きな悪循環も存在するということです。

悪循環を断ち切るにはやっぱり睡眠をどうにかすることから始めるしかないね

これだけでも睡眠不足の害は十分わかったとは思いますが、その他にも広く悪影響を及ぼしQOLを下げることになります。
そのことについて解説した以下のページも是非ご覧ください。
てなとこで。