トランス脂肪酸はなぜ悪い?|その問題点と減らす方法
「トランス脂肪酸は悪い」とはよく聞くものの、具体的にどうわるいのかについて詳しく知らない人は多いと思います。
実は海外では使用が規制されるほどのものです。
このページではトランス脂肪酸のデメリットについて解説します。
・トランス脂肪酸が「食べるプラスチック」と言われる理由
・トランス脂肪酸が健康に及ぼす影響
・海外でのトランス脂肪酸の規制状況
・日本の現状と問題点
1 マーガリンは食べるプラスチック?
トランス脂肪酸の問題点を端的に言い表した表現として「食べるプラスチック」という有名なフレーズがあります。
これは自然界に存在しない不自然な物質という点がプラスチックに似てるからです。
たまに「成分がプラスチックと同じだから」って思ってる人もいるけど、それは違うよ
プラスチックが自然界で分解されないのと同じように、人工のトランス脂肪酸も自然界で分解されません。
ネズミやゴキブリ・ハエなどの害獣・害虫も寄ってこないのです。
そして放置しても腐りすらしません。
つまり細菌なども分解しない・出来ないということです。
文字通り虫も食わないってことね
これらのたくましい生き物が分解できないということは、人間の体内でも上手く分解できない可能性は高いということです。
因みに脂質は代謝や健康のために摂取しなければいけない栄養素ですが、トランス脂肪酸は全く摂取する必要はありません。
2 トランス脂肪酸の健康リスク
トランス脂肪酸は体内で分解できない可能性が高いだけでなく、様々な健康上のリスクが指摘あります。
具体的には以下のとおりです。
①心臓病 ②アレルギー ③肥満 ④発達障がい ⑤認知症
2-1 心臓病のリスク
数ある指摘の中でもエビデンスが確立されているのが心臓病のリスクです。
トランス脂肪酸にはHDLコレステロールを減らし、LDLコレステロールを増やす作用があります。
そのため脂質異常症などを引き起こすことになります。
また動脈硬化も進むことから、心臓病のリスク要因でもあるのです。
摂りすぎが問題と言われますが、具体的には総摂取カロリーの2%を超えると症状が顕著になると言われています。
2-2 アレルギーを発症するリスク
トランス脂肪酸の摂取によってアレルギーを発症する可能性も指摘されています。
トランス脂肪酸の摂取によって、CRP(C-リアクティブプロテイン)やIL-6(インターロイキンー6)の値が上昇することが確認されています。
これらはいずれも体内での炎症レベル測る指標であるため、継続的な摂取は全身での慢性炎症の原因になるということです。
炎症反応に伴って発疹や皮膚の赤みや痒みが発生します。
これがアトピーやアレルギーです。
ただしEUなどで行われた研究では、相関が弱い or 一貫性無しとの報告がされているので、正確なところはまだ分かっていません。
2-3 トランス脂肪酸は太りやすい?
脂質は1g当たり9kcalとエネルギーが大きいです。
トランス脂肪酸も脂質の一種なので、エネルギー余剰も当然生まれやすくなります。
ただトランス脂肪酸の問題はエネルギー量だけではありません。
アレルギーのところでも解説したとおり、トランス脂肪酸は体内の炎症の原因です。
そしてこの慢性炎症が肥満の原因になります。
炎症のストレスによって体内で生じるコルチゾールは筋肉を分解し、ついでに食欲を増進させる作用があるからです。
また炎症によって代謝の要である肝臓がダメージを受けることの影響も大きいです。
そして血中トランス脂肪酸濃度が高いほど中性脂肪、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値も高くなることが研究で明らかにされています。
HbA1cは糖尿病のリスクを測る指標だよ
インスリン抵抗性を生じると一気に太りやすくなるんだよね
2-4 子供の発達障害
母乳などを介して母体から乳児や胎児にトランス脂肪酸が吸収されることの悪影響が指摘されています。
脂質は脳を構成する主要な物質であり、脳の発達にも重要な役割を果たします。
そのため健全な脳のためには良質な脂質が欠かせません。
ナッツとか青魚とかってよくブレインフードって言うよね
「魚を食べると頭が良くなる」と言われるように、摂取する脂質の質は脳の機能に直結します。
なので、摂取する脂質に占めるトランス脂肪酸の割合が増えると、その影響が強くなる可能性が高いです。
特に胎児・乳児期は脳の成長が著しい時期であり、人工のトランス脂肪酸が脳の発達に回されしまうリスクは大きいと言えます。
そしてこの影響によって脳内の神経伝達が変質し、ADHD、うつ、集中障害などの原因になるとされているのです。
2-5 トランス脂肪酸でボケる?
先程の問題は子供の脳に与える影響でしたが、成人の脳に与える影響も指摘されています。
それがトランス脂肪酸の認知症リスクです。
九州大学が久山町の住民1628人の健診結果を分析した有名な研究があります。
この研究はアメリカの神経学会誌にも掲載されました。
研究の対象になったのは40歳以上で認知症のない住民だよ
血中のエライジン酸の濃度と認知症発症リスクの関係を調査したところ、認知症リスクが最大で1.6倍になることが判明しました。
つまりトランス脂肪酸はボケを加速するリスクがあるということです。
エライジン酸は代表的なトランス脂肪酸の種類だったね
日本人を対象とした研究であり、調査対象も多いので、信頼性の高い研究と言えます。
2-6 その他の疾患とトランス脂肪酸の関係
その他にも様々な疾患との関連が指摘されています。
具体的には、がん・脳卒中・胆石・クローン病などです。
EUで、これらとトランス脂肪酸の関連も調べられましたが、相関は弱いか一貫性が無いと結論づけられてます。
ただこの結果だけを見て安心はできないでしょう。
あくまで脂質代謝力の高い欧米人を対象にした研究だからです。
因みに天然のトランス脂肪酸における研究では冠動脈疾患のリスク上昇は見られなかったようです。
天然と人工の影響の違いは分かっていませんが、人工のモノの方が身体への悪影響が大きい可能性は高いと考えられます。
天然のトランス脂肪酸はむしろ不足すると身体に悪影響って研究報告もあるくらいだからね
マーガリンの方がトランス脂肪酸が少ないって言ってる会社もあるけど、問題は量より質ってことだね
3 どれくらいならトランス脂肪酸を食べてもOK?
身体への悪影響は具体的にどれくらいの量を食べることで現れるのか気になるところですよね?
許容量の目安を押さえておきましょう。
因みにぼくの結論を先に言ってしまうと、特に人工のトランス脂肪酸についてはゼロを目指すべきです。
不要な栄養素であり、摂取するメリットは一切ありません。
「タバコを1日何本までなら吸ってもいいですか?」って聞いてるようなもんだよ
3-1 国際的に参考にされてる基準
最も一般的な基準はWHOの設定したものです。
WHO/FAO合同専門家会合では1日の総摂取カロリーの1%未満に抑えるよう勧告を出しています。
・WHO:世界保健機関 ・FAO:国連食糧農業機関
1日の摂取カロリー2,200kcalなら1%は22kcalです。
脂質は1gあたり9kcalなので、この場合は2.4gが摂取上限の目安ということになります。
<計算方法>
総摂取カロリー(kcal) × 0.01 = トータルカロリーの1%(kcal)
トータルカロリー(kcal)÷ 9(kcal)= トランス脂肪酸の摂取上限(g)
日本においてもこの基準を採用してるんだよね
3-2 トランス脂肪酸に対する海外の対応状況
外国ではトランス脂肪酸の危険性が注目され、次第に規制が強まって来ています。
2015年時点では規制をする国は7か国だけでしたが、2022年時点では44か国です。
主要な国における具体的な規制の内容は以下のような感じです。
国(地域)名 | 対応時期 | 対応内容 |
---|---|---|
カナダ | 2018年9月 | トランス脂肪酸(水素添加油脂)の使用を禁止 |
デンマーク | 2003年 | トランス脂肪酸の含有量規制(2%未満) |
オーストリア | 2009年 | トランス脂肪酸の含有量規制(2%未満) |
タイ | 2019年 | トランス脂肪酸の輸入・製造・販売を禁止 |
アメリカ | 2006年 | トランス脂肪酸の表示義務 |
2015年 | FDAが部分水素添加油脂をGRASから除外 GRAS=一般に安全と認められる食品 | |
ニューヨーク | 2008年 | 1人前に0.5g以上のトランス脂肪酸の使用を禁止 |
カリフォルニア州 | 2011年 | トランス脂肪酸の使用・販売を禁止 |
台湾 | 2018年 | 流通する全ての食品において部分水素添加油脂の使用を禁止 |
EU | 2021年 | 食品中のトランス脂肪酸の上限を設定 |
3-3 日本におけるトランス脂肪酸の現状
海外で規制が強まる中、日本での規制はどうなっているのでしょうか?
日本では厚生労働省がWHO/FAQ合同専門家会合の基準に準拠し、推奨するのみになっています。
具体的な規制は一切ないというのが現実です。
日本で規制に踏み切らない理由として、日本人の摂取量の少なさが挙げられています。
日本人の摂取量は海外に比べればかなり少なく、この基準の範囲内に収まっているからというわけです。
まあ本音は利権の問題だろうけどね
4 トランス脂肪酸を減らす方法
トランス脂肪酸の摂取をゼロにする方法は非常に簡単で、加工食品・ジャンクフード全般の摂取を止めるだけです。
なるべく外食も止めた方が良いでしょう。
トランス脂肪酸が多く、避けるべき食べ物についてはこちらのページで解説しています。
準備中
実際にぼくはパンとかお菓子とか年に数回くらいしか食べないよ
しかし普通の人はこうした食べ物を断った生活など出来ないと思います。
4-1 トランス脂肪酸カットの食品を使う
マーガリンなどの水素添加油脂はトランス脂肪酸が多い食品の代表です。
見れば見るほどプラスチックに見えてきます。
しかし最近は企業努力によってトランス脂肪酸の含有率は低下傾向です。
大手食品メーカーのマーガリンはバターよりトランス脂肪酸が少なくなっています。
このような製品を選ぶことで、トランス脂肪酸の摂取量を大幅に減らすことが出来るでしょう。
ただ「量が少ないからバターより安全」とはならないから注意してね
天然と人工を量だけで比較するのはナンセンスだよね
4-2 トランス脂肪酸の排出を促す
摂取してしまったトランス脂肪酸をなるべく早く身体から排出する工夫も必要です。
具体的には以下の2つの方法があります。
①オメガ3脂肪酸の摂取 ②ケトジェニックダイエット
4-2-1 オメガ3でトランス脂肪酸を排出
「健康に良い脂質」とされるオメガ3脂肪酸はトランス脂肪酸と置き換わる作用があると言われています。
つまりオメガ3脂肪酸を摂取することでトランス脂肪酸が排出されるということです。
オメガ3脂肪酸の中でも特に亜麻仁油などのオイルを購入する時に1つ気を付けるべきポイントがあります。
それは低温圧搾法で抽出したものを選ぶことです。
高温で脱臭・抽出処理してるとトランス脂肪酸が増えちゃうもんね
4-2-2 ケトジェニックダイエットでトランス脂肪酸を排出
「効果の高いダイエット法」として最近とくに人気のケトジェニックダイエットですが、実はトランス脂肪酸の排出にも効果があります。
ケトジェニックダイエットは糖質制限によって不足したエネルギーを脂質の代謝によって補うというものです。
糖質を厳格に制限してケトーシス状態になれば、脂質がどんどんエネルギーに変換されていきます。
エネルギーになりにくいトランス脂肪酸も同様です。
こうしてエネルギーとして代謝されることによってトランス脂肪酸を排出することができます。
ケトジェニックでは脂質の積極的な摂取が必要になるんだよね
ここでトランス脂肪酸を紛れ込ませないように注意してね
4-3 注意点
トランス脂肪酸を減らすことは重要ですが、気にしすぎも問題になります。
理由は大きく以下の2つです。
①栄養バランス ②飽和脂肪酸
4-3-1 避けすぎると栄養バランスが崩れる
食べるものを過度に制限することによって、他の栄養素の摂取に影響してしまう可能性があります。
特に人工と天然のトランス脂肪酸をごっちゃにしてしまわないようにしましょう。
牛や羊などの反芻動物に由来する肉や乳製品には多くトランス脂肪酸が含まれます。
天然のトランス脂肪酸まで削ろうとすると牛肉やチーズなども食べられなくなってしまうのです。
4-3-2 飽和脂肪酸の方がヤバさが確実
またトランス脂肪酸は不飽和脂肪酸に含まれるからといって不飽和脂肪酸全体を避けようとすると飽和脂肪酸に偏りやすくなります。
マーガリンよりバターを選ぶというのが典型的なパターンです。
飽和脂肪酸はトランス脂肪酸よりも悪影響のエビデンスが確立されているものです。
こちらの摂取が増えることは間違いなく健康に悪影響を及ぼします。
まとめ
トランス脂肪酸の問題点について解説しました。
中でも人工のものについては多くの健康リスクが指摘されています。
具体的には以下のとおりです。
①心臓病 ②アレルギー ③肥満 ④発達障がい ⑤認知症
海外では規制が進んでいるにも関わらず、日本においては摂取基準を示すのみに止まっています。
海外ほど摂取量が多くないというのが国の言い分です。
しかし海外と比べれば日本はそこまで多くないから安心というのは暴論・詭弁です。
日本人と外国人(特に欧米人)を同じ土俵で考えることは出来ません。
昔から脂質の多い食事が当たり前の欧米人と、粗食が基本のアジア人とでは脂質の代謝能力に差がある可能性が高いからです。
身体症状・悪影響についても同じ結果になるとは限りません。
そもそもトランス脂肪酸に関する研究のほとんどは、健康意識の高い欧米諸国でのものです。
健康意識が低く、トランス脂肪酸以外の添加物などを「安い!」と喜んで食べている日本人においてリスクはより大きくなると考えられます。
健康に対する意識を高く持ってる人は、基準など気にせず完全にゼロにする意識で生活しましょう。
てなとこで。
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