【漸進性過負荷の原則】オーバーロードの方法と負荷を増やすタイミング

徐々に負荷が増えていくウエイト

筋肉ってどうやったら大きくなるの?

筋肥大や筋力のアップはウェイトの負荷から受けるストレスに対する身体の防御反応(ストレス応答)です。
そのため身体にとって刺激になる負荷をかければ、筋肉は発達していきます。

ただし刺激を与えているだけで永久に筋肥大し続けるほど単純なモノではありません。
継続的に筋肉を発達させ、理想的な身体に近付くために必要な考え方が「漸進性過負荷」というものです。

このページではこの漸進性過負荷の原則について解説します。
漢字だらけで何とも複雑そうな名称ですが、中身は非常にシンプルなので安心して読み進めてください。

このページでわかること

・漸進性過負荷の原則とは何か
・その具体的な方法とは?
・オーバーロードを実践するタイミング

1 漸進性過負荷の原則とは?

漸進性過負荷は別名をオーバーロードの原則とも言います。

こういう表現にするとちょっと分かりやすいんじゃないかな

表現は仰々しいですが意味は単純で、「少しずつ負荷を上げていく」という意味です。
筋肉の発達は外部からのストレスの適応によって起こります。
逆に言うと筋肉にかかった負荷がストレスや脅威として認識されないと筋肥大は起きないということです。

同じ負荷が身体にとって脅威にならないようにするために筋肉を発達させるので、負荷が同じままだといつかは筋肉が釣り合ってしまい、ストレスにならなくなります。
これを予防するためには負荷の大きさを、身体の適応すなわち筋肉の増加に合わせて変化させなければいけません。

最も分かりやすい例は、この原則の名前のとおり、扱う重量を大きくすることです。
メカニカルストレスやマッスルダメージはウェイトの大きさに比例して大きくなります。
ただし負荷を大きくすることはフォームの乱れやケガのリスクが上がるので、慎重に行わなければいけません。

そしてもう1つの方法が、反復回数(レップ数)を増やすこと。
特に筋肥大を起こす3つ目のストレスであるメタボリックストレスは、筋肉が緊張してる時間(TUT)を長くすることで高まるからです。
レップ数だけでなく、動作をゆっくりにしたりトップの収縮ポイントで制止する時間を長くするという方法も有効でしょう。

2 筋肉痛は目安にならない

漸進性過負荷(オーバーロード)の原則と実践の方法は分かったところで、残る疑問は「いつ」負荷を上げるのか?ということです。

筋肉の発達はトレーニング経験を積むほど起こりにくくなるので、思っているほど早く筋肉はつきません。
それなのに焦って負荷を増やしてしまうと、フォームの乱れケガで筋肥大の効率を上げるどころか落とすことになってしまいます。

かと言って安全策でいつまでも同じ負荷に甘んじていては、筋肉の発達は緩慢になり、いつかは止まってしまうでしょう。
そうなると筋トレのモチベーションも下がってしまい挫折してしまうかもしれません。

あんまり筋肉痛が出ないから負荷上げた方がいいのかなぁ…

このように負荷を上げるタイミングとして筋肉痛の発生の有無を目安にする人がいます。
「筋肉痛がくる=キツイ」「筋肉痛がこない=軽い」というイメージがあるので、何となく説得力がありそうです。
しかし筋肉痛は筋肉それ自体の損傷とは無関係であるというのが最近の通説になっています。

筋肉組織には痛覚神経がないため、それ筋肉が痛みを感じることはありません。
筋肉痛の正体は疲労によって筋肉内で発生した抗炎症作用のある分泌物が、破れた筋膜の隙間から漏れて外の神経を刺激することで起きています。
つまり筋肉痛が起きるかどうかは筋膜に破れが生じるかによって決まるということです。

筋膜の破れが最も起きやすいのはストレッチ種目であり、対象の筋肉をしっかりストレッチさせられていれば負荷が低くても筋肉痛は起こります。
逆に筋肉痛が起こらないということは筋肉のストレッチが足りないということです。
いずれにしても筋肉痛の有無は負荷の大きさの適性を測る基準にはならないことが分かったと思います。

3 オーバーロードのタイミング

ではいつ負荷を上げるべきか?
これには万人に通じる明確な答えはないというのが正直なところです。
実際トレーニーが負荷を変更するタイミングは千差万別で、統一された見解はありません。

大抵の場合は、規定のレップ数を全てのセットで達成したら次の重量に進むって感じかな

ですが、「人ぞれぞれだよ」というだけでは何の解決にもならないので、ぼくが実践している負荷アップの基準について紹介します。

ぼくの場合はトレーニング種目の狙いごとに負荷の大きさを使い分け、その負荷の大きさによってオーバーロードの判断基準も変えています。
言うまでもなく「漸進性」の名前に従い、負荷を上げる幅は小さくするようにしましょう。

3-1 高負荷を扱う種目の場合

メカニカルストレスをメインで狙う種目は、負荷の大きさが最も重要です。
そのため扱う重量も最も大きいものを設定し、1セットのレップ数は低く設定しています。

高負荷を扱うということはケガやフォーム崩れのリスクも大きいので、負荷を上げる判断はシビアです。
具体的には1セット4回で組んでいる種目は全セットで設定の150%に当たる6回挙がるようになったら加重します。

3-2 マッスルダメージを狙う種目の場合

マッスルダメージを狙う種目も負荷の大きさが重要ですが、それ以上に可動域の広さが重要です。
そのためメカニカルストレスを狙う種目よりは負荷を低く、回数はやや多めに設定しています。

こちらは中負荷なので、ケガのリスクはあまり心配ありません。(油断は禁物ですが)
そのため可動域の端をカバーした丁寧なフォームで全セットクリアしたら負荷を上げます。

3-3 メタボリックストレスを狙う種目の場合

最後がメタボリックストレスを狙う種目ですが、これは負荷の大きさよりも筋肉の緊張時間(TUT)や血管の圧迫が重要です。
そのためトップの収縮ポイントをしっかりカバーすることやレップごとに負荷を抜かないことがポイントになります。

これらを重視しつつ全セットのレップ数が設定の150%をクリアしたところが負荷アップのタイミングです。
負荷を上げてみてトップまで持っていけなかったり、ボトムで耐えられず負荷が抜けてしまう場合は重量を下げます。

まとめ

漸進性過負荷の原則、オーバーロードの原則と言われる筋肥大の基本について解説しました。
筋肥大はストレス・脅威への適応なので、負荷が身体の脅威にならなければ筋肥大は起きなくなります。
そのため徐々に負荷を上げていく必要があるということです。

負荷を上げる基準として筋肉痛の有無を上げる人がいますが、広く可動域をとった丁寧なフォームでトレーニングしてれば、よほど負荷が軽くない限り筋肉痛は起こります。
回数や筋肉の発達の程度などを考慮して各自が思い思いのタイミングで負荷を調整してるのが現状です。

それぞれの種目の目的によって、負荷の大きさ、フォーム、可動域、TUTなど重視するポイントが変わります。
その目的に沿うようにしつつ、同時にリスクも抑えて負荷を調整していくのがベストではないか、というのがぼくの意見です。

筋トレのレベルアップの基本はこのオーバーロードの原則ですが、上級者になるほど伸びにくくなります。
これは8~15RMの低~中負荷トレーニングでは最大筋力が伸びにくいことも関係しています。
その弱点を補うテクニックについて詳しくは別のページで解説します。
てなとこで。