自重トレーニングで筋肉は発達する?|自宅トレの可能性と筋肥大の限界

自宅筋トレの定番自重トレーニング

自重トレーニングは自宅でも器具なしで気軽にできるトレーニングです。
本格的な筋トレと言えばジムでのトレーニングが主流ですが、アクセスや会費の問題があります。

筋トレ初心者にとってはジム自体がハードルも高いので、自宅での自重トレーニングでも同様の効果が得られるならそれに越したことはありません。
自重トレーニングでも十分に筋肥大ができるとYouTubeやブログなど様々なメディアで紹介されています。

しかし実際のところどうなのでしょうか?
このページでは、自重トレーニングによって筋肥大が可能なのかという点について解説します。

このページでわかること

・自重トレーニングで筋肥大はするか?
・その理由
・自宅でも筋トレの効果を上げるための方法

1 自重トレーニングとは?

当たり前のように使っていましたが、自重トレーニングとは「自」分の体「重」を負荷にして行うトレーニングの総称です。
ダンベルやバーベル、マシンを使わないトレーニングは、ほぼ全て自重トレーニングの範囲に含まれると言っていいでしょう。
自分の身一つで出来るので、思い立ったその時から場所を選ばずに始められるメリットがあります

代表的な自重トレーニングの種目は以下のとおりです。

・腕立て伏せ(大胸筋)
・ディップス(上腕三頭筋)
・シットアップ(腹直筋)
・チンニング・懸垂(広背筋)
・逆さ腕立て伏せ(三角筋)
・スクワット(大腿四頭筋)
などなど

さすがに懸垂は身一つとはいかないけど

メジャーな筋肉はおおよそ網羅できていて、バリエーションも非常に豊富なので筋トレの効果を上げるには十分そうに思えます。
しかし結論を言うと自重トレーニングでの筋肥大には限界があり、効率的な筋トレにはなりません。
カラダを作るプロであるボディビルダーやフィジーカーが揃ってジムでトレーニングしてることからも明らかですよね。
以降その理由等について詳しく解説していきます。

2 自重トレーニングで筋肥大できない理由

筋トレによって筋肥大を目指す時にコントロールする変数・要素は様々ですが、非常に簡略化して考えると以下の2点が重要です。

①効果的な刺激を与えること ②刺激を変化させること

この最も基礎的な2つの要素を満たせないことが、自重トレーニングの筋肥大効果に限界があると考える理由です。

2-1 負荷が小さい

筋肥大を起こすために重要な刺激は以下の3つに分けられます。

①負荷の大きさ ②筋肉の微細な損傷 ③過酷な動作環境

この中でも特に「①負荷の大きさ」は非常にシンプルかつ直感的で、不可欠の要素です。
負荷が重ければ重いほどいいというほど単純でもありませんが、18回以上できるトレーニングでは筋肥大しないことが研究で判明しています。

代表的な自重トレーニング種目である腕立て伏せは体重の3分の2程度しか負荷がかかりません(体重70㎏の人でたったの47㎏)。
しかも複数の関節が動く種目(コンパウンド種目)が多く、メインに筋肉にかかる負荷はさらに小さくなります。
つまり自重トレの負荷は効果的な刺激にはなり得ないということです。

「②筋肉の微細な損傷」も自重トレーニング種目では実現するのが難しいと言えます。
「③過酷な動作環境」については後述します。

2-2 漸進性過負荷

筋肥大は刺激・ストレスへの適応のために起こるので、どんなに効果的な刺激でも変化がなければいずれ停滞してしまいます。
この筋肥大には刺激・負荷の変化が不可欠だとする理論が漸進性過負荷というものです。

前の項目で紹介した筋肥大に効果的な刺激の最もシンプルな変化が負荷を大きくすることです。
ウェイトを用いた筋トレであれば自在に変化させることが出来ますが、自分の体重を負荷にする自重トレーニングではそれが出来ません。
もとからさほど有効な刺激ではありませんが、それを変化させることが出来ないということも筋肥大において自重トレが不利になる要因です。

2-3 回数(セット数)が増える

最も基礎的な筋肥大の3大要素の他にトレーニングボリュームが重要であるとする研究も存在します。
トレーニングボリュームとは簡単に言えば「負荷×回数」です。
つまり負荷が小さくても回数を増やせば筋肥大する可能性はあると言えます。

どういう原理で筋肥大するのかハッキリしてないから、個人的には怪しいと思ってるけどね

しかしめちゃくちゃ負荷の低い自重トレーニングで有効なボリュームを稼ごうとしたら、回数・セット数を増やし時間を長くするしかありません。
トレーニングが長時間に及ぶと筋肉の合成よりも分解が優位になってしまいます
また集中力が低下するので、トレーニングの質も下がりやすくなります。

つまり筋肉に有効な刺激を与えられないどころか分解を進ませてしまうということです。

3 スロトレの有効性について

ゆっくりと動作を行うスロトレの筋肥大効果にも注目が集まっています。
これなら負荷の小さい自重トレーニングでも筋肥大が期待できるかもしれません。

スロトレとは筋肉の緊張時間(TUT)を伸ばし、対象の筋肉を過酷な環境に置くことにより筋肥大させるメソッドで、つまり筋肥大の要素の3番目へのアプローチです。
筋肉が緊張している時、血管が圧迫され酸素の供給が制限されるので、筋肉にとっては活動しにくい過酷な状態になります。
そうなると力の強い速筋が働かざるを得なくなり、筋肥大が起こるというメカニズムです。

太くなるのは主に速筋だから、これを引きずり出せれば筋肥大するってこと

理論的には自重トレーニングでも筋肥大することになりますが、これには1つ難点があります。
それはスロトレでも漸進性過負荷条件は満たせないということです。
効果的な刺激は与えられても慣れないように変化させ続けることは出来ません。

まとめ

自重トレーニングでは筋肥大が起きにくい理由について解説しました。
筋肥大が起きるメカニズムは非常にシンプルで負荷などの脅威への適応です。
つまり大きな負荷を与え、しかも慣れないようにそれを変化させなければいけません
スロトレなどのテクニックによって自重トレでも効果的な刺激を与えることは出来ますが、それを変化させることは難しいです。

では何故自重トレーニングを推奨するようなメディアがあるのでしょう?
もちろん書いた人が不勉強な場合や、本人がたまたまイージーゲイナーで上手くいった場合なども考えられます。
しかし一番納得できる理由はその人が「確証バイアス」という心理作用を知ってたことでしょう。

簡単に言えば、自分に都合のいい情報にしか目を向けない心理のこと

「自宅トレーニングで十分ならいいな」って心理を利用されてるわけか。確かにそういうのに目が行っちゃうな…。

不勉強などころか、心理学を上手く操ってるわけです。
そういうこともあるので、エビデンスは何か?どういうメカニズムで効果があるのか?ということをしっかり考えるクセをつけましょう。
てなとこで。