筋肥大に必須の3大刺激|基本要素を知ってトレーニングを効率化

筋肉を強く大きく肥大させるためにどんなトレーニングが有効なのかはトレーニーにとって定番の議論テーマです。
重量は高負荷か低負荷か?頻度はどれくらいか?セット数は?より効果的な種目は?と幅も広く終わりが見えません。

そんな中にあって最も基本的な部分、すなわち筋肥大はなぜ起きるのかそしてどのような刺激に反応するのかは明らかになりつつあります。
このページでは筋肥大の基本、何に反応して起きるのかについて解説します。

このページでわかること

・筋肥大はなぜ、何のために起きるのか
・筋肥大はどんな刺激に反応して起きるのか
・どのようなトレーニングがその刺激を引き起こすのか

1 筋肥大はなぜ起きる?

「筋トレをすれば筋肉が大きくなる」というのは当然のこととして認識されつつあります。
しかしこの理由を説明できる人は多くないのではないでしょうか?

簡単に言ってしまえば、筋肥大が起きるのはストレスに対する防御反応です。
同じ刺激に対して毎回同じレベルのストレス反応を起こしているようでは、日常生活に支障をきたしてしまいます。
これは筋肉の疲労に限ったことじゃありません。
そのためにストレスへの順応が起きるのであって、筋肉においてはそれが筋繊維を太く、筋肉を大きく、力を強くすることってわけです。

筋肉を大きくする反応を起こすストレスとして最も有名なのは「微細な筋肉の損傷」と言われるものです。
しかし筋肥大を起こす要素はそれだけじゃありません。

このページでは意外とザックリ捉えられがちなトレーニングと筋肥大の関係について細分化して紹介していきます。
そしてそれを通じて筋肥大に効果的なトレーニング方法について検討します。

2 筋肥大を引き起こす3つの刺激

ここからは筋肥大を引き起こすストレス・刺激の種類と、それを発生させやすいトレーニング法について解説します。
効果的なストレスの種類は大きく分けると以下の3つです。
耳なれないワードもあるかもしれませんが、以下でそれぞれについて詳しく解説します。

①メカニカルストレス ②マッスルダメージ ③メタボリックストレス

2-1 メカニカルストレス

1つ目の要素がメカニカルストレスで、力学的ストレスとも言われます。
あまり聞きなれないかもしれませんが、簡単に言ってしまえば大きな力を発揮することで、つまりは高負荷トレーニングのことです。

筋力は筋肉の断面積に比例すると言われています。
逆に言えば筋力を高めることで筋肉の断面積は大きくなるとも言えます。
高重量のトレーニングは大きな筋力を発揮するニーズがあるというサインを筋肉に送り、筋肥大を促す刺激になるということです。

厳密にはmTORの活性化・リン酸化という現象による筋肉の分解抑制と合成促進が働いた結果ですが、難しく考える必要はありません。
一番シンプルで直感的な筋トレと筋肥大の関係と言えます。

ここで注意しておきたいのが、「対象の筋肉が」という但し書きが付くことです。
高重量のバーベルを持つことが重要なのではなく、対象筋に最大限の負荷を乗せることが重要になります。
過度に重量に拘って、正確な軌道から外れてしまえば狙ったメカニカルストレスは得られません。

高負荷を扱ってるはずなのに主動筋どころか協働筋すら発達しない。
そんな負荷の効果が行方不明な人、別名「消えた負荷問題」の原因も負荷の乗せ方にあることが多いです。
メインはカットを出す方法の解説ですが、筋肥大そのもののコツでもあるので、併せて読んでみてください。

2-2 マッスルダメージ

マッスルダメージとはその名の通り筋肉を損傷させることを言います。
メカニカルストレスと混同されやすいですが、大きな負荷をかけて最大筋力を発揮することと筋繊維の損傷は別物です。

マッスルダメージを効率的に起こすのがエキセントリック収縮の局面と言われています。
エキセントリック収縮とは筋肉が短くなろうと筋力を発揮しているにも関わらず、外力によって引き延ばされる収縮のことです。

負荷を下ろす、いわゆるネガティブ局面のことだね

トレーニングのネガティブ局面では、動員される筋繊維(モーターユニット)が少なくなり、その分1本1本にかかる負荷が大きくなります。
同時に強制的に引き延ばされるので、筋肉の微細な損傷が起こりやすいのです。
このエキセントリック収縮による微細な損傷もmTORの活性化に有効な刺激になります。
それにより筋合成が高まると以前よりも損傷個所を厚く修復するので、筋繊維が太くなる、すなわち筋肥大が起きるというメカニズムです。

ネガティブ局面をメインにするトレーニングや、筋肉が大きくストレッチした状態で力を発揮するストレッチ系種目が有効です。

エキセントリック収縮は筋肉痛を引き起こしやすいという特徴もあります。
筋肉痛は達成感もありますが、過度なエキセントリック刺激はmTOR活性を下げ、筋肥大効率を低下させることには注意が必要です。
筋肉痛が残ると次回のトレーニングのパフォーマンス低下にも繋がるので、負荷を上げ過ぎないようにしましょう。

2-3 メタボリックストレス

メタボリックストレスも人によってはあまり聞きなれない要素かもしれません。
これは化学的刺激などと呼ばれることもあります。
血管を圧迫して血流ならびに酸素の供給を制限し、筋肉を無酸素状況下に置くことでかかる刺激です。

酸欠ストレスとも言うよ

加圧トレーニングのメカニズムがまさにこの要素を利用したものと言えます。

筋肉には速筋繊維と遅筋繊維の2種類があることは、もはやトレーニング界隈に限らず常識です。
また効率的な筋肥大のためには速筋の動員を増やすことが大事だってことも、これまた常識でしょう。
この速筋の動員率を上げる要素の1つがこの酸欠状態なのです。

通常負荷が小さいと解糖系よりも酸化系が優位になる、すなわち遅筋優位の有酸素運動に傾きます。
しかし外から圧迫して血管を絞り酸素供給を制限されていると、上手く酸化系回路を回すことが出来ません。
そこでパワー発揮の回路が酸化系から解糖系へ切り替わり、速筋が動員されやすくなるというメカニズムです。

では酸欠状態を作るのに有効なトレーニングとは何か?簡単に言えば収縮が強く、TUTの大きいトレーニングです。
TUTはTime Under Tensionの略で、筋肉が緊張を続ける時間のことを指します。
TUTを高める方法は様々あるので詳しくは別のページで解説していますが、最も簡単な方法は低負荷×高回数トレーニングです。

準備中

またこのようなストレス下に晒された筋肉の内部では乳酸やアナボリックホルモン、成長因子等の分泌が促進され、それもまた筋肥大に寄与します。
これまでは高負荷ほど速筋の動員率が高く、筋肥大にも効果的とされてきましたが、それだけが唯一の答えじゃないってことです。

まとめ

筋肥大を引き起こす基本的な3種類の要素について解説しました。
具体的には以下のとおりです。

①大きな負荷を与えるメカニカルストレス
②ストレッチの刺激によるマッスルダメージ
③筋肉の動作環境を過酷にするメタボリックストレス

これら3つのストレスを複合的に筋肉に与えることで筋肥大が活性化します。
筋肉がなかなか発達しない原因について以下のページでまとめましたが、特にこの基本を理解していないか、それをトレーニングに組み込めてないことが多いのでしょう。

また筋肥大において重量設定が議論になると言いましたが、個人的にはこの議論にあまり意味はないと思います。
それぞれの目的に合わせた複数種目でメニューを組むのが当たり前だからです。
狙いごとに適切な負荷は異なります。
つまりどの負荷も正解ということです。

逆にこのことを考えず、ただ闇雲に効きそうな種目を選んでただけの人は、それぞれの目的に沿った種目を選ぶように心掛けましょう。
てなとこで。