広背筋トレーニングの基本|解剖学的な機能と効果的な鍛え方【逆三角フォルムを作る】
逆三角形のフォルム、広がりのある背中は筋トレをする男の憧れです。
しかしいざ筋トレを始めてみると身体の前面に比べると成果が確認しずらい分、背面はどうしても疎かにされがちになります。
大胸筋、腹筋、上腕二頭筋を重視したくなるのも分かるけどね!
とは言え前面の筋肉を鍛えれば身体に厚みは出ますが、一向に広がりは生まれません。
また背中のトレーニングについては正確な認識をしてる人が少ないという特徴もあります。
背中を鍛える時の方向性は「幅を広くする」ことと「厚みを出す」ことの2つです。
低負荷だと広くなって、高負荷だと厚みが出る!
ロウだと厚み、プルだと広さに効くんだよね!
なんて言われることもありますが、実はこれは単なるイメージであって正しい情報じゃありません。
しっかり筋肉の種類と機能から正しい鍛え方を押さえていきましょう。
このページでは、広背筋の解剖学的な機能を踏まえた正しいトレーニング方法について解説します。
・背中の広さを出すために鍛える部位(背中の構造)
・広背筋の機能と鍛え方
・握り方で効果が大きく変わる件
1 逆三体型のために鍛えるは広背筋
背中には非常に沢山の筋肉があるため、複雑な構造をしてると思われがちです。
しかし背中の構造・筋肉をよく見てみると実は意外とシンプルなことが分かります。
具体的には主要なアウターマッスルは広背筋と僧帽筋の2つだけです。
ではなぜ背中を広くするためには広背筋が重要なのか、広背筋の構造を見ながら解説します。
1-1 広背筋の位置と構造
ザックリ言うと広背筋は背面の下半分を占める筋肉です。
腰の周辺から上腕に向かって筋肉が伸びてるので、発達してくると身体の側面の張り出しを作ります。
そしてこの筋肉の伸びる方向というのはトレーニングの効果を最大化するに当たっても大事なポイントです。
筋肉の構造や鍛え方を正確に押さえるには、解剖学的な知識も必要です。
細かいところまでは必要ないって人は読み飛ばしてください。
<広背筋の起始>
①第6胸椎から第5腰椎までの棘突起 = 背骨の出っ張り部分
②正中仙骨稜、③腸骨稜 = 骨盤の周辺
④第9~12肋骨 = いわゆるあばら骨
<広背筋の停止>
上腕骨の小結節稜 = 上腕の内(脇)側
画像も参考にして、だいたいの位置関係が分かればOKです。
この上腕の内側に付着してるってのが結構ポイントだよ!
かなり大きな筋肉って印象があるかもですが、実は体積は550㎤程度と実は上腕三頭筋よりも小さいんです。
面積は広いですが、反面それだけ厚さはあまりない筋肉ってことで、背中の厚みにはあまり貢献しません。
1-2 広背筋を鍛えるメリット
広背筋を鍛えるメリットは大きく2つあります。
1-2-1 逆三角形のシェイプに必須
広背筋を鍛える目的はシンプルに逆三角形の身体を作ること。
広背筋は背面の筋肉と言いつつ、正面からもサイドの張り出しはバッチリ確認できます。
広背筋の横の張り出し部分は三角形の辺の部分に当たり、ここが疎かになると漏斗のようなシルエットになってしまうのです。
せっかく肩や大胸筋が発達させても、その差が大きくなるほどウエストラインが細く貧相な印象になります…。
男性の場合は特に肩や胸、そして臀部の張り出しに負けないよう広背筋をしっかり鍛えましょう。
1-2-2 ボディラインのメリハリ
逆三角形のシェイプというと男性だけに関係することのように思えますが、女性にも関係します。
メリハリのある曲線美を作るにはウエストのくびれが欠かせません。
余分な脂肪を落としてウエストを絞ることはもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。
日本人にはずん胴体型が多く、ウエストを絞るだけではそんなにメリハリが生まれません。
ヒップや背中に筋肉をつけることが、相対的にウエストを細く見せることに繋がります。
1-2-3 代謝の向上?
筋肉が増えると代謝が向上して痩せやすくなる!
これは筋トレのメリットでよく挙げられるポイントですが、実はあまり正しいとは言えません。
筋肉量が増えることで消費カロリーが増えますが、それは運動によって消費するカロリーです。
何もしないでも使われるカロリーは安静時代謝や基礎代謝と言われますが、筋肉の影響は全体の20%ほど。
筋肉を増やしたら何もしてなくても体脂肪が燃えていくなんてことはほとんどありません。
「筋肉が増えたから」というより「筋トレで身体を動かすから」の方が正確かな!
しかも構造のところで触れた通り、広背筋はあまり体積が大きな筋肉ではありません。
つまり基礎代謝に占める割り合いという点で見てもそこまで大きく貢献することは無いでしょう。
2 広背筋の機能と鍛え方
広背筋の構造と配置が分かったところで、今度はその機能を見ていきましょう。
機能を知って実際のトレーニング中にその動作を意識することが、より効果的なトレーニングに繋がります。
2-1 広背筋の解剖学的な機能
既に一度登場した解剖学についてここで掘り下げていきます。
出てくる言葉は漢字がいっぱいで小難しそうに見えますが、難しいのは言葉だけで中身は非常に簡単です。
広背筋は肩関節を跨いでいるので、主に肩の4つの動作に強く関与します。
それが肩関節の伸展、内転、水平外転、そして内旋です。
伸展:リレーのバトンパスを受けるように腕を身体の後ろに引く動き
内転:Tの字に開いた腕を閉じて気をつけの姿勢を作る動き
水平外転:Tの字に開いた腕をその高さのまま後方に引く動き
内旋:腕相撲のように腕(肩関節)を内側に回転させる動き
非常に多くの機能がありますが、それだけトレーニング種目のバリエーションも豊富になるってことです。
この中でも特に伸展と内転は広背筋がよく動員されるメインの機能で、その他2つは補助みたいな感じ。
他の筋肉のメイン機能だったりもしますが、伸展や内転と一緒に使うことで広背筋を活性化するテクニックとして使えます。
ちなみに広背筋の上にある大円筋も伸展と内転で同時に鍛えられるよ!
また筋肉を覆う筋膜が大殿筋などお尻の筋肉と繋がってることも鍛える時の重要なポイントです。
2-2 広背筋トレーニングのポイント
広背筋に限らず、筋肉を鍛えるためにはその機能を発揮する動作をすればOKです。
そしてできるなら意識した方がいいのが、停止と起始を近付けるよう最短で動作すること。
筋繊維は起始から停止に向かって走行しており、最短距離で近付けようとすれば自ずとその走行に沿うようになるからです。
広背筋の場合は、上腕と体幹の下部を近付ける意識を持つようにしましょう。
さらに、見えにくい背中のトレーニングで特に注意したいのが拮抗筋の存在です。
拮抗筋とは一方が収縮している時には他方は弛緩しているという関係にあります。
広背筋の場合に特に注意したい拮抗筋が、同じく背中の筋肉である僧帽筋です。
動作中に肩をすくめたり肩甲骨を寄せたりすると、僧帽筋が収縮して広背筋が上手く収縮できなくなってしまいます。
具体的なトレーニング種目のページでも拮抗筋の存在を踏まえて注意点を解説しますが、常に頭の片隅に置いておきましょう。
2-3 広背筋トレーニングの負荷設定
広背筋は体積はそこそこ大きい筋肉ではありますが、負荷の設定には注意が必要です。
速筋と遅筋の比率が49.5:50.5と半々で、遅筋の比率がやや多くなっています。
速筋がそこまで多くないということは、爆発的な力を発揮するのが得意な筋肉とは言えません。
そうでなくても背面かつ他の筋肉の影響で、トレーニング効果を意識しにくい部位なので高負荷は不向きでしょう。
あまりに負荷を高く設定し過ぎると上腕二頭筋に頼ってしまったり、拮抗筋である僧帽筋の竦める動作が起こりやすくなってしまいます。
10RMくらいをMAXにして、正確な動作でしっかり広背筋を使うことを優先した方が筋肥大には効果的です。
2-4 広背筋の筋力発揮の特性
効果的なトレーニング種目の選択にためには、筋力発揮の特性を考慮する必要があります。
広背筋トレーニングは主に肩関節の内転と伸展動作を伴う種目が中心です。
この2つの解剖学的な機能はいずれも動作角度が90°になったポイント、動作の中間で最大になります。
つまりストレッチ・コントラクト種目とは別に最大筋力の発揮を狙う種目としてミッドレンジ種目が必要ということです。
ただ最大筋力と言っても既に解説した通り、速筋比率がそこまで高い筋肉じゃないので無茶な重量は逆効果になります。
3 広背筋トレーニングの重要なテクニック
広背筋のトレーニング種目の全てに共通するポイントがあるので先に解説します。
それがバーやアタッチメントなどのグリップの握り方です。
地味で見落とされがちな内容ですが、トレーニング効率に大きく影響する大事な要素になります。
ここを疎かにすると、他の筋肉に負荷が逃げやすくなるから要注意!
3-1 「広背筋に引っかける」とは?
上級トレーニーの中には広背筋トレで「引っかける」という表現をする人がいます。
これはいわゆる「負荷が乗った状態」と同じような意味です。
広背筋のトレーニング種目は引く動作が中心ですが、そのグリップをテキトーにしてしまう人が非常に多い。
何も考えずにグリップすると、バーを手のひらと指の境界辺りで握ることになるでしょう。
この時に広背筋の動きを見てみると、ほとんど動いておらずあまり負荷が乗っていません。
そこでグリップをもう少し深くして手のひらで持つようにすると、脇に広背筋がスッと浮かび上がります。
これが負荷の乗った、俗に言う「引っかかった」状態です。
広背筋の種目では指ではなく手のひらに負荷を乗せて手全体で引く意識を持つとより効果的になります。
猫手みたいなイメージをすると分かりやすいかも
3-2 グリップの重心
広背筋トレで僧帽筋の関与と同じくらい注意しなければいけないのが上腕二頭筋の関与です。
引きつける動作にはほぼ必ず肘の動作が伴います。つまり二頭筋が働くってことです。
そこでちょっとしたコツになるのが、グリップする手の重心です。
頑張ってウェイトを引こうとすると、力の入りやすい親指・人差し指側に重心が移りやすいでしょう。
しかしこれが上腕二頭筋の関与を強めてしまう原因になります。
なぜなら親指から薬指にかけてを支配する正中神経は、同時に上腕二頭筋を支配する神経でもあるからです。
なるべく手の小指側に重心を置いて、手刀でバー引くくらいのイメージで動作しましょう。
意識だけで難しい場合は親指と人差し指をバーから離したピストルグリップもオススメです。
指でバーンってやるあの形のままグリップする方法だよ!
因みにネガティブの局面では親指側に重心を置いてグリップした方がストレッチがかかりやすくなります。
ただ手のひらの重心位置に気を取られ過ぎて、広背筋そのものの動作への意識が疎かになっては本末転倒なので、無理に実践する必要はありません。
まとめ
逆三角フォルムを作るのに欠かせない広背筋の鍛え方の基本を解説しました。
背中の下半分という広範囲を占める筋肉で、多様な作用があり鍛え方のアプローチも様々です。
一方で「大きな筋肉」と括られがちな広背筋ですが、面積に対して体積はさほど大きくなく、一般的なイメージとはズレがあります。
速筋比率も決して高くはないので、過剰に高負荷でトレーニングするのは得策ではありません。
背面で意識しにくいので、僧帽筋や上腕二頭筋などへの分散も注意が必要です。
意識のフォーカスも重要ですが、解剖学的な機能をベースにしたテクニックにも頼りましょう。
具体的なトレーニング種目については以下のページで解説しています。参考にしてください。
てなとこで。
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