【筋肥大の左右差】筋肉が均等に発達しない5つの原因と対策|意外と多い悩み

左右の筋肉が均等に発達しないという悩みを抱える人は意外と多くいるようです。
かく言うぼく自身も左右で若干の肥大差が生じています。
左右の手足で同じように重量を同じ回数だけ扱ってるはずなのに、その負荷はどこに消えたんだろうか?と不思議に思いますよね。

どちらも発達しないというなら単純にトレーニングボリュームが足りないか、食事、睡眠などを疎かにしてるケースもあり得ます。
しかし片側だけでも発達してるならこうした可能性はないでしょう。

右腕にだけ重点的に栄養を送り込む機能とかはないからね

筋肥大の左右差の原因は1つではなく人によって様々で、対策も人それぞれです。
このページでは、筋肉の左右差が生じる原因とその対策についてを解説します。

このページでわかること

・トレーニングの仕方に原因がある左右差
・骨格的な問題によって生じる左右差
・それぞれのパターンの対策

1 利き手が逆手の仕事を奪うケース

力の強い利き腕・利き足側の筋肉の方が発達する理由のうち、最も典型的なパターンです。
まずはここから確認してみましょう。

1-1 バーベルなどで起こりがち

ベンチプレスやスクワット、ラットプルダウンなど多くの種目は1つのウェイトを両手・両足で扱います。
基本的には利き手の方が筋力が強いので、半分以上の重量を利き手(足)がカバーしてしまっているケースがけっこう多いです。
傍から見てるとバーが傾いて動作してるのがよく分かります。

当然のことですが左右の筋肉にかかっている負荷が均等になっていなければ、均等に発達することはありません。
消えてしまったと思っていた負荷も、実は利き手側に吸収されていただけってことです。

カニのシオマネキみたいになってたら間違いなくこれが原因!

本人は均等に挙げてるつもりでもパートナーやトレーナーに客観的に見てもらうと、挙げ方のクセが見つかったりします。
一度外から挙げ方のクセをチェックしてもらいましょう。

1-2 対策

対策としては、大きく以下の3つが考えられます。

①利き腕と反対の側の動作に意識を向ける
②片手種目に切り替える
③利き腕と反対の側に重量を合わせる

まず利き腕と逆側の筋肉の動きを重点的に意識するのが有効です。
利き腕側は特に意識しなくても正確なフォームをとって筋肉をダイナミックに使えていることが多いと思います。
なので逆側が理想的なフォームで筋肉のストレッチと収縮ができているかに優先的に注意を向けましょう。
もともと利き腕側に比べて逆側はマインドマッスルコネクションが弱く刺激を感じにくいので、このくらいのバランスでちょうど良いと考えられます。

目に見えて左右差が生じてしまっている場合、左右の筋肉でかなりの筋力差があるはずです。
そのため利き腕側に意識を向けようにも、その余裕がそもそもない可能性も大いにあります。
そういう場合、片手でウェイト(ダンベル)を扱う種目や左右それぞれに負荷がかかるマシーンに置き換え可能な場合には、種目の変更も有効です。
多くの場合はこれまで扱っていたウェイトの半分をかなり重く感じると思います。

もう1つの対策が重量を発達の遅れている側に合わせるというものです。
片手種目や左右それぞれに負荷がかかる種目で代替できない場合はこちらで対策することになります。
利き手側が物足りなく感じてしまうかもしれませんが、左右差を解消する方が先決です。
しかも筋肥大を引き起こす刺激は重量だけではありません。
TUTを上げたり、可動域の端でしっかりと筋肉をストレッチすることでも有効な刺激を与えられます。

これらの対策で利き手側と逆側がしっかり可動するようになったら、慎重に重量を上げていきましょう。
ここでまた重量を過度に追ってしまうと、左右の差を拡げることになるので要注意です。

2 負荷を逃がしているケース

次によくあるケースが負荷を協働筋などメインではない筋肉に逃がしているパターンです。

2-1 利き手・逆手のどちらでも起こり得る

ほとんどのトレーニング種目は主動筋と補助筋があり、肥大を狙っているのは主動筋です。
そのため補助筋を動員しつつも主動筋に重点的に負荷をかける必要があります。

しかし、とにかく挙げることで精一杯になってしまうと、過度に補助筋群に頼ってしまいがちです。
よくあるパターンとしては大胸筋を狙うベンチプレスで、メインよりも上腕三頭筋や三角筋のフロントが発達してしまうケースがあります。

複数の関節が可動する複合関節(コンパウンド)種目ほど多くの筋肉が動作に関わるので、この傾向が現れがちです。
身体の中心から遠い部分は発達してるのに、中心に近い大きな筋肉が発達していないという人は恐らくこれに該当します。

因みにこれは利き手側と逆側のどちらでも発生する可能性がある現象です。
力の弱い逆側がメインだけでは耐えられずに協働筋に負荷を逃がしてしまうパターンが典型的ですが、利き手の器用さが災いするパターンもあります。
負荷を逃がさなかった方だけが発達して、逃がしている方は発達しない結果として生じる左右差です。

2-2 対策

この問題の解決策は大きく以下の2点があります。

①負荷を調整する
②アイソレート種目に切り替える

左右いずれの発達が遅れているにしても、高負荷に設定し過ぎていることが最も分かりやすい原因です。
主動筋から補助筋に負荷を分散させる場合、少なからず正しいフォームからずれていると考えられます。
もし動作のコントロールが出来ていないことが確認出来たら、まずは負荷を落としてみてください。

もう1つの対策として協働筋の少ない、または無い種目に切り替えるという方法です。
可動する関節が少ないほど動作に関与する筋肉の数も減るので、狙いたい筋肉にダイレクトに刺激を与えやすくなります。
なるべく単関節(アイソレート)種目に近い種目がないか検討してみましょう。
先程のベンチプレスの例であれば、ダンベルフライに切り替えることで上腕三頭筋の関与を無くすことが出来ます。

因みに協働筋に負荷を逃がすためのフォームの乱れは筋肥大の左右差の問題にとどまりません。
人間の脳には動作特異性と言われる性質があり、特定のフォームでの力の発揮を記憶してしまいます。
その記憶された姿勢でのみ力が発揮できるので、正しいフォームに矯正すると扱える重量が一気に下がってしまうことが多いです。
一進一退を繰り返していては一向に筋肥大が進まないので、やはり重量を追い過ぎるのは考え物と言えます。

3 挙げ方に問題があるケース

筋肥大の左右差の問題で意外と多いのが、弱い側のメインどころか協働筋すら発達していないというケースです。
これは特に腕のように単関節(アイソレート)種目がメインで、そもそも協働筋がほとんどない部位が分かりやすいと思います。

同じ重さのウェイトをそれぞれの手に持って同じ回数だけ動作してるはずなのに、何故か片方だけが発達する。
この不思議な現象のことをぼくは個人的に「消えた負荷問題」と呼んでいます。
そしてこの現象のカギを握るのが挙げ方の違いです。

種目や重量の設定、レップ数に比べると軽視されがちですが、挙げ方というのも筋肥大を左右する重要な要素になります。
では具体的にどんな挙げ方が問題かと言うと、それは瞬発力を使った挙上です。

「負荷を乗せる」と言いますが、ウェイトを持って関節を動かせば対象の筋肉に負荷がかかるというわけではありません。
動作の各ポイント、瞬間瞬間で常に筋肉が力を発揮していなければ「負荷が乗っている」ことにはならないのです。

そして瞬発力・勢いを使ってしまうと、ほぼ初速でトップまで到達してしまうので、筋力発揮、負荷が乗るのはほんの一瞬だけになります。
しかも負荷が生じる最初のポイントというのは、バイオメカニクス(解剖+力学)で考えると対象筋にはほとんど力がかかってない場所です。

瞬発力を使った動作は鍛えたい筋肉にポジティブ局面ではほとんど刺激を与えられていないと考えられます。
下ろす時は丁寧に動作できるので、全く疲労感がないわけではありませんが、左右で同じ回数やってるつもりでも実際は半分しかやってないのとイコールです。

このケースもまた利き手側と逆側の両方で発生する可能性があります。
重量が大きすぎて逆側が瞬発力に頼らざるを得なくなるパターンが多いです。
ただ利き手側がその器用さ故にスポーツ的な効率の良い瞬発力を使った動きをしてしまうというパターンも考えられます。

以下のページのメインの内容はカットを出すトレーニング方法の解説ですが、挙げ方の大事なポイントを解説してるので、参考にしてください。

4 意識が逆効果になってるケース

マインドマッスルコネクションの観点から弱点の側の意識を高めることの重要性をこれまで何度か解説してきました。
しかしこの弱点の側に対する意識高さが原因で、筋肥大の左右差が起きている可能性もあります。
では自分の弱点を意識し過ぎることの何が問題かと言えば、それはオーバーワークです。

これまでは同じ重量を同じ回数、同じセット数だけ熟す前提で解説してきました。
しかし実際には自分の弱点を克服しようと、弱い側のセット数や回数、重量を増やして対策しようとする人が結構います。
負荷の総量が増えるのだから筋肥大も加速して左右のバランスが整っていくように思えますが、実際にはこの対策は逆効果です。

筋トレによる効果的な刺激は筋合成のスイッチを入れる重要な要素ですが、同時に筋肉の分解も促進することになります。
トレーニングそれ自体で消耗するエネルギーの不足を補うため、そして運動のストレスで筋分解作用のあるコルチゾールが分泌されるからです。
これらは長時間トレーニングがNGだとされる理由としてもよく知られています。

つまり左右差を解消しようと弱い側のトレーニングに必死になる余りに逆にその差を拡げることになってしまってるということです。
因みにこれは弱点部位が発達しなくなる問題の原因の1つでもあります。

この問題を解決するための対策はシンプルに、トレーニングボリュームを適量に抑えることです。
むしろ減らしてみても良いかもしれません。これまで1種目5セットやっていたら3セットに減らしてみましょう。
セット数が少なくなることで集中力が増し1レップを大事にもするので、トータルのクオリティは上がると考えられます。

5 骨格的な問題

骨格のゆがみがある場合にも、筋肉の左右差が起きやすくなります。
現代のデスクワーク中心の生活は、同じ姿勢でいる時間が非常に長く、足を組んだり頬杖を突いたりと様々な歪みを生じさせる原因です。
骨格が筋肉の左右差に与えるパターンについて以下の2つを紹介します。

①筋肉の見え方に違いがある場合
②筋肉の走行方向が異なっている場合

5-1 筋肉の見えの問題

肩の巻き込み具合や左右の傾きなどにより、筋肉の見え方は大きく変わります。
これまで紹介したようなトレーニングの方法に問題がない場合はこれが原因の可能性が高いです。
つまり筋肉の「つき」の問題ではなく、「見え」の問題と考えた方がいいでしょう。

プロのフィジーカーなどでも筋肉の形やストリエーションが左右非対称の人はいます。
十分に発達していたとしても、骨格的な問題があると左右の筋肉の大きさに違いがあるように見えてしまうのです。

骨格の歪みは生まれつきのものから姿勢など日常の癖によってついた後天的なものまで原因は多岐に亘ります。
整体や骨格矯正、ピラティスなどで多少は改善できる可能性もありますが、劇的な改善は難しいと受け止めて上手く付き合っていくしかありません。
日常的に姿勢を崩さないように注意すること、同じ姿勢を続けないなどの心掛けが対策の中心です。

最近はデスクワーカーに特に多い巻き肩に注目が集まっています。
パソコンに向かって前傾した姿勢が続くので、背中が丸まり肩も内側に巻いてしまうのです。
肩が内側に巻いているので、正面のイメージで重要な大胸筋や三角筋などの見え方に特に大きく影響します。
これについては着用することで巻き肩の改善効果が期待できるAウェアというアイテムが販売されています。
意外と効果が大きいみたいなので、興味がある方はチェックしてみてください!

5-2 筋繊維の走行方向に影響する場合

筋肉は関節を動かすために、全身の骨に付着しています。
そのため骨格が歪むと筋肉の位置(走行)も若干ですが歪んでしまうのです。

この点は先に説明した筋肉の見え方にも影響してきますが、同時に筋肥大を妨げる要因にもなり得ます。
一般的に正しいとされるフォームであっても、それが自分の骨格と筋繊維の走行に合っていなければ狙った筋肉に刺激を与えることは出来ません。
さらに骨格の歪みで左右の筋肉の走行にも違いがあるとなれば、左右対称に動作をしても刺激の入り方に違いが出てしまいます。

わかりやすいので三角筋中部を鍛えるサイドレイズを例にして解説しましょう。
前の項目でも解説したとおり、骨格の歪みで最も起きやすいのが両肩の巻き込みで、これはぼく自身もかなり悩んだ部分です。

三角筋の筋繊維は真下ではなく、後ろから前に向かってやや斜めに走行しています。
そのためサイドレイズのフォームはやや前傾し、肘・小指の側から挙げていくというのが一般的です。
しかしぼくのように肩の巻き込みが強い人は、三角筋も身体の前面に寄って筋肉が走行しています。
そのため正しいとされるフォームだと三角筋後部への刺激が強くなってしまうので、前傾を緩めなければいけないのです。

同時に巻き肩はその巻き込み具合に左右差があることが多く、その違いもまたトレーニング方法に影響します。
実際にぼくは左肩には巻き肩がほとんどなく、むしろ張り過ぎてるくらいです。
そのため、こちらはしっかり前傾しないとフロント寄りに刺激が入ってしまいます。

このように骨格の歪みがあって、なかなか教科書どおりのフォームで効果が得られない場合はまず自分の筋繊維の走行方向を確認しましょう。
そしてその方向に左右差が無いかも確認する必要があります。
左右で違いがある場合は、同じフォームで同時に鍛えるのは難しいので、片手ずつそれぞれに適したフォームで実践するしかありません。

まとめ

筋肉の発達に左右差が生じる原因と対策方法について解説しました。
深刻な悩みであり、原因をして考えられる要素も多岐にわたるのでボリュームが多くなっています。
ポイントをまとめると以下のとおりです。

①強い側が反対側の仕事を奪っている → 負荷の調整か片手種目に切り替え
②協働筋に負荷を逃がしている → 負荷の調整かアイソレート種目に切り替え
③瞬発力で挙げている → 負荷の調整と筋肥大に効果的な挙げ方の習得
④オーバーワーク → 逆に減らしてみる
⑤骨格の歪み → 骨格の矯正、筋繊維の走行を確認してトレーニングする

骨格的な問題は先天的な部分も多く、簡単には解決しません。
ただし日常的な姿勢のクセなどによって後天的についた歪みの可能性もあるため、矯正を行いつつ生活で常に気を付けるようにしましょう。

それに比べるとトレーニング方法に起因する左右差の問題はそこまで苦労せずに解消できそうです。
もちろんこれまでの負荷からレベルを下げることになるので、後退するようなイメージがあって気が進まないかもしれません。
しかしそのまま続けていても左右の差が開いていき、どんどんアンバランスになるだけです。
一度リセットして正しいフォーム、正しい挙げ方を習得していきましょう。
このロスを経験することで、闇雲に負荷を追ってしまって問題を引き起こすこともなくなるはずです。
てなとこで。