僧帽筋トレーニングの基本|解剖学的機能と効果的な鍛え方【背中に鬼を宿す】

「背中に鬼を宿す」これを目指すトレーニーも少なくないはず。
そのためには広さを出すだけでなくボコボコとした厚み、立体感も欠かせません。

背中はなかなか自分で成果を確認しにくくモチベーションを上げにくい部位です。
ただいくら前面の筋肉が発達してても、背面が疎かでは余計に貧相に見えてしまいます。

広さは高負荷、厚みは低負荷でしょ!

こんな感じで捉えてる人が結構多いようですが、これは単なるイメージです。
確かに人によっては刺激が入りやすいこともあるかもしれませんが、あくまで個人的な感想でしかありません。
どの筋肉をどうやって鍛えるべきなのか正確に知ることが効果的なトレーニングになります。

このページでわかること

・背中の筋肉の構造
・僧帽筋の構造、解剖学的な機能、鍛え方
・僧帽筋と広背筋の鍛え分け

1 背中の厚みは僧帽筋で出す

まずは背中の筋肉の構造とその機能から解説していきます。

1-1 僧帽筋の構造

背中には多くの筋肉があるので、非常に複雑な構造だと思ってる人が多いようです。
確かに背面にはそれなりに多くの筋肉がありますが、それらは幾重にも重なっています。
そのため表面に現れるアウターマッスルの種類は実はそんなに多くないんです。

その中でも背中の厚みに貢献するのは、上背部の中心に位置する僧帽筋です。
僧帽筋の位置と構造 ザックリしたイメージで言うと、僧帽筋は背中の上半分を占める筋肉です。
背中の中心にあるひし形の筋肉で、鍛えることで張り出しが大きくなるので、背中の厚みに貢献します。

僧帽筋も起始と停止が複数あり、それぞれ上部・中部・下部と3つに分けて考えられます。
そして機能も異なるため、鍛え方・種目もそれぞれ異なります。(詳しくは後述)

上部
起始 = 後頭部から頸椎まで
停止 = 鎖骨の外側(1/3)
中部
起始 = 第7頸椎から第3胸椎まで
停止 = 肩甲骨の肩峰と肩甲棘
下部
起始 = 第4胸椎から第12胸椎まで
停止 = 肩甲棘三角 

第○胸椎などは分かりにくいので、画像でザックリどの辺かだけ把握してればOKです。
ただ起始と停止の位置関係は筋繊維の走行方向を知る上で重要になります。
上部と下部は斜めに、中部は水平に筋繊維が走行してるので、鍛える際はこれを意識しましょう。

実はあまり大きな筋肉ではなく体積は458㎤程度です。
面積の割に体積が小さいので、筋肉は薄め。しっかり鍛えないと厚みは出ません。

1-2 僧帽筋の解剖学的な機能

僧帽筋の位置と構造がが分かったところで、続けてその機能を見ていきます。
僧帽筋の配置の画像を見ながらイメージを掴んでいってください。

トレーニング効果を上げるに当たって、その筋肉の解剖学的な機能を押さえることは非常に重要なことです。
解剖学と聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、簡単に解説してるので安心してください。

既に解説した通り、僧帽筋は起始と停止が複数あるので、機能も部位によって異なる所があります。
ですが、基本的には肩甲骨を動かすためにある筋肉という点は共通です。

上部の機能は肩甲骨の上方回旋頭部の伸展挙上、そして内転です。
中部の機能は肩甲骨の内転のみ
そして下部は肩甲骨の下方回旋内転下制です。

上方回旋:深呼吸の吸う時の腕の動き。肩甲骨の下が開く(上部)
頭部の伸展:頭を後ろに倒す動き (上部)
挙上:肩をすくめるように上げる動き (上部)
内転:肩甲骨を寄せる動き。後退とも言う(上部・中部・下部)
下制:なで肩のように肩を下げる動き(下部)
下方回旋:深呼吸の吐く時の腕の動き。肩甲骨の上が開く(下部)

僧帽筋を鍛える上で特に重要な機能が、上~下部まで共通する肩甲骨の内転です。
つまり左右の肩甲骨を寄せるように動作することが、僧帽筋トレでは欠かせません。

厳密に言うと寄せるというより、蝶番みたいにパタパタする動きだよ

ちなみに挙上と下制、上方回旋と下方回旋はそれぞれ真逆の動作になります。
筋繊維の走行方向が真逆なことから分かると思いますが、上部と下部を同時に鍛えるのは難しい
その意味でもこれら2つに共通する肩甲骨の内転が最重要の機能と言えます。

2 僧帽筋の機能から導く効果的なトレーニング方法

僧帽筋の配置と解剖学的な機能について解説してきました。
その機能や特性を参考に効果的なトレーニング方法を考察します。

2-1 僧帽筋の筋力発揮の特徴

僧帽筋を鍛える場合、既に解説したとおり上部から下部まで共通する肩甲骨の内転動作をメインに据えるのが基本です。
肩甲骨の内転動作では動作の中間に当たるポイントで発揮する筋力が最大になります。

ただ実際のトレーニング種目を考えた時、この特性はあまり重要ではありません。
肩甲骨の内転を最も行いやすい種目はローイング動作であり、ストレッチポジションからコントラクトポジションまで直線軌道になります。
これは肩甲骨を挙上する動作(シュラッグ)も同様です。

動作方向と負荷方向の関係が変わらないので、ポイントごとにかかる負荷の大きさにあまりムラが出ません。
厳密に言うと内転動作は肩甲骨で羽ばたくような動きなので、多少は弧を描く軌道になるのが理想ですが、現状の器具のラインナップでは困難です。

諦めて最も筋力の強い中間で負荷が最大になるように設定して1種目で終わらせるか、または狙いごとにアタッチメントの手幅を変えるようにしましょう。

2-2 僧帽筋トレーニングの負荷設定

僧帽筋の速筋・遅筋の比率は速筋:遅筋=46.3:53.7であり、やや遅筋が優位な筋肉です。
背中は動作の確認がしにくい場所でもあり、種目の種類から過剰な負荷を扱うと腕の力で動作しやすくなります。
そういう意味でも低負荷×高回数でしっかり肩甲骨の動作を意識するのが良いでしょう。

ちなみに僧帽筋の深層には僧帽筋と同じ機能を持つ速筋優位の大菱形筋という筋肉があります。
インナーマッスルであり体積も118㎤と小さいですが、高負荷に反応しやすいので内側から押し上げてくれる期待はアリです。

上腕二頭筋に対する上腕筋みたいな関係だね!

高負荷は筋肥大の基本要素でもあるので、そういう点からも低負荷に傾倒し過ぎないようにしましょう。

2-3 グリップの重要性

グリップの重要性は僧帽筋のトレーニングに限ったことではありませんが、特に背中のトレーニングでは重要になります。
肩甲骨の内転動作は腕を後方に引く動作が伴う種目、いわゆるプル系・ロー系と言われる種目が中心です。
既に軽く触れた通り、これらの種目では上腕二頭筋の力に頼りやすくなります。
腕を後方に引く時に肘関節も屈曲するので、「とにかく引く」って意識が強すぎると二頭筋に効いてしまうのです。

もちろん適正なウェイトを設定する必要もありますが、もう1つその問題を解消するテクニックがグリップです。
親指から薬指までを支配する正中神経は上腕二頭筋に繋がっているため、親~薬指で強く握るほど、上腕二頭筋の活動が高まってしまいます。

この問題はグリップの重心を小指側にして握ることで緩和されます。
意識しにくい人は特に力の強い親指・人差し指を外したピストルグリップがオススメです。

まとめ

背中に厚みを持たせる上で重要な僧帽筋トレーニングについて解説しました。
上部・中部・下部の3つに分かれ、機能も広いため鍛え方も様々なバリエーションがあります。
効率的なトレーニングを目指すなら全てに共通する機能である、肩甲骨の内転動作を中心にするのがオススメです。

しかし細かい話をすると、僧帽筋は上部から下部までかなり縦に長いので、動作への関与の度合いには差が出来てしまいます。
上部の場合はシュラッグという単体の種目がありますが、下部にはそういった種目がありません。
広背筋など他の部位の種目に関与するため、そうした種目でしっかり効かせられてるか意識しておく必要はあります。

遅筋が若干優位で低負荷の方が相性が良いですが、下層に位置する菱形筋は速筋優位の筋肉です。
背中の場合は特に丁寧なフォームが大事ですが、筋肥大のメカニズムに従って高負荷まで満遍なくメニューに組み込みましょう。
具体的なトレーニング種目やテクニックについてはこちらのページで解説しています。
てなとこで。