ベンチプレスの基本|大胸筋を肥大させる効果的なやり方

ベンチプレスは筋トレをしてる人ならほぼ全員が取り組んでる種目だと思います。
BIG3の1つであり、基本中の基本の種目です。

しかし「基本の種目=簡単」というわけではありません。
シンプルに見えるせいで基本を疎かにしてる人が多く、狙った部位が肥大してない印象です。

ただバーベルを持ち上げるだけではなく、効かせるための様々なポイントがあります。
このページではベンチプレスの効果的なやり方について解説します。

このページでわかること

・ベンチプレスの基本的なやり方
・ベンチプレスのRM設定やセット数、インターバルの長さ
・注意点
・大胸筋に効かせるためのテクニック
・ベンチプレスのバリエーション

1 ベンチプレスの基本

ベンチプレスで鍛えられる筋肉をメインとサブに分けると以下のとおりです。

主動筋大胸筋
協働筋上腕三頭筋
三角筋(フロント)
前鋸筋

鍛えられる部位と表現しましたが、なるべくメインの大胸筋に負荷を寄せるのが理想的な形です。

ベンチプレスは以下のフローで行います。

①ラックの高さを調整

まずはバーベルをセットするラックの高さを調節します。
ベンチに横になってバーベルを持った時に肘が軽く曲がるくらいがベストです。

ちょっと伸ばせばラックアップできるくらいだよ

ラックがあまりに低すぎるとセット毎にラックアップが半レップくらいになるため、エネルギーをロスしてしまいます。

②バーの手幅

ラックの高さを調節したら、ベンチに横になってバーベルを握ります。
手幅はおおよそ肩幅の1.5倍くらいが目安です。

もっと正確に言うと上腕が地面と水平になる高さで前腕がちょうど直角になるくらいです。

③アーチ・ブリッジ

バーベルを握ったら身体の背面でアーチを作ります。
ブリッジとも言われるものです。

一般的には腰を反らせてヘソを突き出す姿勢とされますが、厳密には鳩尾の辺りです。
こうすることで胸を張りやすくなると同時に腰の負担を緩和できます。

④ラックアップ

姿勢を作ったら、ラックからバーベルを持ち上げます。
そして肩の真上の位置にセットします。

⑤バーベルを下ろす

姿勢をキープしたままバーベルを下ろします。
ネガティブは「ゆっくり下ろす」という説明もありますが、あくまでコントロール出来てればOKです。

そして鳩尾の辺りに向かって下ろします。
ボトムでは脇の角度が大体60°くらいになります。
下ろしながら息を吸うのを忘れないようにしましょう。

⑥バーベルを挙げる

最後にバーベルを元のスタートポジションまで戻します。
横から見るとやや弧を描くような軌道です。

挙げながら息を吐くのが基本ですが、高重量を扱う場合は挙げる時に止めてもOKです。

2 ベンチプレスで扱う重量や回数

ベンチプレスの効果を最大にするためにはどれくらいの負荷・回数(RM)・セット数にすべきか気になるところでしょう。

2-1 ベンチプレスの重量はどれくらいがベスト?

ベストなRMは目的によって異なります。
一般的な区分で言うと以下のとおりです。

目的RM強度
筋力アップ3~7RM83~93%
中間8~12RM70~80%
筋肥大13~19RM62~67%
筋持久力20RM以上60%以下

高レップは筋持久力のトレーニングと言われますが、それは20RMを超える場合です。
15~16RMまではトレーニングボリュームを稼げるので、筋肥大効果を狙うことができます。

そしてベンチプレスで狙う大胸筋は傾向的に高レップに反応しやすいと言われています。
そのためどの目的でも上限寄りでセットしましょう。

筋力なら6~7RM、中間なら10~12RM、筋肥大なら15~16RMってとこかな

2-2 ベンチプレスのインターバル

ベンチプレスは上半身の中でも特に体積とパワーの大きい筋肉が動員されます。
そのため非常に大きな負荷を扱うことが可能です。

その代償として消費するエネルギーも大きく、回復まで時間がかかります。

インターバルを短くして追い込みをかけることを重視する人もいますが、体感的なキツさはあまり意味がありません。
筋力でも筋肥大でもパフォーマンストレーニングボリュームが重要になります。

つまりしっかり休んで万全のパフォーマンスで各セットに臨むべきということです。
各セット3~5分はインターバルを取るようにしましょう。

2-3 ベンチプレスのセット数

標準的なストレートセット法の場合は5セットくらいが推奨されます。

ストレートセット法っていうのは毎セット同じ負荷を扱う方法のことね

しかしベンチプレスの場合はこれより少なくすることをオススメします。
具体的には2~3セットです。理由は以下の2つがあります。

①トレーニング時間 ②回復の限界

因みにぼくは全身法なのもあって毎回2セットだけにしてるよ

2-3-1 トレーニングが長くなる

前で解説したとおり、ベンチプレスは各セット間で必要なインターバルが長めです。
5セットもやるとインターバルだけで10~15分もかかってしまいます。

トレーニングが長時間に及ぶと、その分集中力も低下しやすくなります。
またストレスが長く続くことで、コルチゾールによる筋分解も増えてしまいます。

そもそもそんなにトレーニングに時間かけられないしね…

2-3-2 回復しきれない

既に解説したとおり、ベンチプレスは非常に多くのエネルギーを使います。
その回復のために長めのインターバルを取るわけです。

しかしいくら休んでも運動がハードだと、回復には限界があります。
後半のセットになると、いくら休んでも規定のレップ数をこなせません。

せっかく長いインターバルを取ってもムダになっちゃうね

以上の理由から、1回のトレーニングで行うセット数は少なくすることをオススメします。
代わりに頻度を増やして、トータルでボリュームを確保しましょう。

3 ベンチプレスの注意点

ベンチプレスは大きな負荷を大胸筋やその他のサブにかけることが出来ます。
負荷の大きさは筋力や筋肉量アップに効果的なのと同時にリスク要因でもあります。

ここではベンチプレスをやる際の注意点を解説します。
具体的には以下のとおりです。

①アップ ②5ポイントコンタクト ③セッティング ④下ろし方 ⑤グリップ方法

3-1 ウォーミングアップは入念に

大きな負荷をターゲットの筋肉に与えることが出来るベンチプレスですが、その分ケガのリスクも高くなります。
特に多いのが肩関節のケガです。

ケガ予防のために正確なフォームでトレーニングすることはもちろん重要です。
しかしその前のアップも疎かにしてはいけません。実施すべきアップは具体的に以下の2つです。

①ローテーターカフ ②特異的ウォームアップ

3-1-1 ローテーターカフを温める

まずやるべきはローテーターカフのアップです。
肩のケガとは厳密にはこのローテーターカフのダメージのことを言います。

ローテーターカフっていうのは肩関節のインナーマッスルのことだよ

軽いダンベルを持ってストレッチするように肩を回しましょう。
簡単な動作ですが、ケガのリスクは段違いに下がります。

3-1-2 特異的ウォームアップも段階的に

特異的ウォームアップとは実際のトレーニング動作で行うアップのことです。
これにより狙った筋肉を効率的に温めることが出来ます。

具体的にはかなり軽い重量からベンチプレスを行っていきます。
あまり負荷を刻みすぎるとメインセットまでにバテてしまうので、3段階くらいに分ければ十分です。

身体を温めると同時に、正確なフォームを確認する効果もあります。
またうっすら疲労を感じることでターゲットに負荷を乗せる感覚も掴みやすくなります。

予備疲労法ってやつだね

3-2 支点を接地させる

ベンチに寝て行う種目の姿勢の基本が5ポイントコンタクトです。
これは支点となる部分を面にしっかり接地させることを言います。
5ポイントとは具体的には以下のとおりです。

①頭 ②肩の上部 ③お尻 ④右足 ⑤左足

この5点を接地させることによって身体の安定感が増し、パフォーマンスを発揮しやすくなります。
これらを疎かにするとバランスを崩し、パワーが低下するだけでなくケガの原因にもなります。

特にベンチプレスではお尻を浮かせるチート行為を行いやすいです。
これをやると確かに重量は上がります。

しかし上腕三頭筋にかなり頼ってしまい、肝心の大胸筋への負荷が低下します。
これでは何のためのトレーニングが分かりません。

腰のケガの原因にもなるしね

3-3 安全対策は入念に

フォームも然ることながら、器具周りの安全性にも配慮しましょう。
特にマストなのは以下の2つです。

①カラー ②セーフティ

3-3-1 アップでも必ずカラーを着ける

ベンチプレスをする際は必ずカラーをバーベルにセットするようにしましょう。
カラーとはバーベルにウェイトを固定するストッパーのことです。

ほとんどの人は装着してますが、ごくたまにアップの時に着けない人がいます。
軽いから安心してるのかもしれませんが、バランスを崩したらひとたまりもありません。

うっかりつけ忘れちゃうこともあるんだよね…

3-3-2 セーフティーは文字通り命を守る

もう1つ潰れた時の保険としてセーフティも必ずセットしましょう。
セーフティレスのベンチプレスは安全性の面でカラーよりも深刻です。
実際にセーフティなしのベンチプレスで毎年死者が出ています。

セーフティの高さは普通にベンチに寝た時に胸の高さか、それよりやや高いくらいです。
バーベルを落とした時にそこから抜け出せる空間を作れる必要があります。

セーフティが高いと深く下ろし切れないと思うかもしれませんが、ブリッジはその問題を解消するためものでもあります。
動作中はアーチで胸をセーフティの上に出し、潰れた時は身体をフラットにして脱出しましょう。

3-4 バーベルが胸に着かない?

効果的なトレーニングのためには、なるべく広い可動域で動作する必要があります。
ベンチプレスの場合、バーが胸に着くところが下限です。

ただ「胸にバーベルが着かない」という人が結構います。
その原因として挙げられるのは以下の2つです。

①肩関節の固さ ②脱力

3-4-1 肩が固いせいで下ろせない?

肩が固くてボトムまで下ろせないという人はけっこう多いです。

しかし関節の固さは本当の問題ではありません。
大抵の人はバーベルを下ろす位置を間違えています。

多くの人はベンチプレスで肩の位置にバーベルを下ろそうとしますが、この角度では相当な軟体人間でない限り可動域に限界があります。
無理に下ろせば肩関節を痛めてしまいます。

三角筋のフロントに効きすぎるって人は見直した方が良いよ

正しくは既に解説したとおり、鳩尾の辺りです。
ここに向かって下ろせば脇が軽く締まり、簡単に下ろすことができます。

3-4-2 ボトムで力が抜けるから下ろせない?

もう1つの理由とされるのが、筋力の発揮域の外であるということです。
肩関節の可動域の限界までくると、急激に大胸筋から力が抜けてしまいます。

フルレンジで動作しようとすると、このポイントに足を引っ張られて負荷が下がってしまうのです。
そのため必要以上にボトムまで下ろす必要はないという意見もあります。

しかしこれは肩関節の可動だけで動作してることが問題です。
詳しくは後で解説しますが、胸郭の可動を上手く使えばこの問題は解消されます。

因みに胸に着ける代わりにバウンドさせちゃう人も多いからそこも要注意ね

3-5 グリップの仕方も重要になる

バーベルを持つ時のグリップの方法もケガ予防の観点で重要になります。
基本は親指をバーに巻き付けるサムアラウンドグリップです。

たまに親指を外したサムレスグリップで挙上する人もいますが、これはオススメしません。
バーをホールドするために中手骨の辺りで握ることになり、手首が反ってしまいやすくなります。

負荷が大きいほど手首が返されるからケガしやすくなるよ

とは言え「サムレスグリップにする方が腕を使わずに挙上しやすい」という人もいます。
そういう人はバーを安定させるためにパワーグリップなどを使うようにしましょう。

またサムアラウンドグリップでも手首が反ってしまう人はリストラップで手首を補強することをオススメします。

4 ベンチプレスを効かせるコツ・テクニック

肩や手首などの関節、そして命を守るために解説した注意点を押さえるのは重要です。
それだけでなく効果的なトレーニングにするために、コツやテクニックも押さえておく必要があります。

ポイントは以下の5点です。

①胸郭と肩甲骨 ②アーチを作る ③ノンロック ④顎の位置 ⑤ベルト

4-1 胸郭と肩甲骨を動かす

既に肩関節の可動域の話で触れましたが、ベンチプレスは肩の可動だけで行うものではありません。
肩関節の動作だけだと、どうしても肩や腕の関与が強くなってしまいます。

大胸筋を上手く動員したベンチプレスは胸郭と肩甲骨を動かして行うものです。
ボトムでしっかり肩甲骨を寄せ、トップではラットスプレッドの要領で肩甲骨を開き胸郭を閉じます。

身体の中心線を蝶番みたいに動かすイメージだと分かりやすいかも

4-2 背面にアーチを作る

背面にアーチを作ることについても、基本の流れとセーフティのところで触れました。
アーチを作る目的は重量を上げることではなく、大胸筋の貢献を増やすことです。

腰の辺りでアーチを作ってしまう人もいますが、これは重量を上げることを目的にしてしまっています。
大胸筋に効かせるためには腰辺りではなく、上背にアーチを作るようにしましょう。

こうすることで肩甲骨が動かしやすくなるよ

4-3 トップまで挙げ切る必要はない

「フルレンジが良い」と聞いてトップまでしっかり挙げ切る人がいますが、実はこれはあまり意味がありません。
理由はベンチプレスにおいて終動位はほぼ腕の動作だからです。

ベンチプレスでメインターゲットとなる大胸筋にかかる負荷は上腕が床と水平に近い位置にある時に最大になります。
トップで負荷を受けてるのはほぼ上腕三頭筋だけです。

そのためトップまで押し切るのを頑張っても疲労するのは腕だけで、大胸筋の発達にはほぼ貢献しません。
むしろ三頭筋の疲労によってパフォーマンスを発揮しきれないリスクが高くなります。

4-4 顎を引く

ベンチプレスで限界が近付くと顎を上げて後頭部をベンチに押し付けるような動作になります。
しかしこれは大胸筋の発達を考えると逆効果です。

確かに頭を押し付けた方が挙上はしやすくなります。
ただそれは腰で作るブリッジと同じで上腕三頭筋の押し込む力を使いやすくなるからです。

つまり大胸筋にかかる負荷は下がるってこと

また首を後方に反らすことで身体の前面が弛緩してしまい、収縮させたい局面で大胸筋が弛んでしまいます。

あんまり首を突っ張りすぎると痛くなりそうだしね…

4-5 ベルトを巻く

スクワットやデッドリフトでトレーニングベルトを巻く人は多いですが、ベンチプレスでは巻かない人が結構います。

パフォーマンスを上げるため、そして腰のケガを予防するためベルトは巻くようにしましょう。
腹内圧を高めることで体幹が安定し、大胸筋の動作に集中しやすくなります。

またパワーを発揮する上で呼吸も重要です。
下ろす時に吸い、押す時に吐くのが基本になります。

ただ吐く時に腹内圧が下がりやすいので、挙げ切るまで息を止めるのもアリです。
この呼吸の効果もベルトによって意識しやすくなります。

5 ベンチプレスのバリエーション

最後にベンチプレスのトレーニング方法のバリエーションを紹介します。
具体的には以下の3つです。

①スミスマシンプレス ②チェストプレス ③ダンベルプレス

5-1 スミスマシンプレス

スミスマシンプレスはその名前のとおり、スミスマシンで行うプレストレーニングのことです。
基本的なやり方はベンチプレスと変わりません。

軌道が安定していて力が発揮しやすいのがメリットです。
潰れたらロックに引っ掛ければいいので安全性も高く、初心者や女性でも安心して取り組めます。

一方で通常のスミスマシンは軌道が直線なので、ベンチプレスと同じ軌道で動作できません。
軌道が斜めのスーパースミスなら多少は解消されますが、ロスはどうしても起こってしまいます。

5-2 チェストプレス

チェストプレスはウェイトスタック式の大胸筋トレーニング用のマシーンです。
色んなメーカーのものがあり、それぞれ微妙に異なった特徴があります。

中でもオススメはハンマーストレングスというメーカーのものです。
一般的なケーブル式のチェストプレスと違って、こちらは全てのポイントでしっかり大胸筋に負荷がかかります。

ケーブル式より重量交換の手間がかかるのと、置かれてるジムが限られる点だけがデメリットです。
見付けたらぜひトライしてみてください。

5-3 ダンベルプレス

ダンベルプレスもその名のとおり、ダンベルで行うプレス種目です。
単にバーベルの代替としてダンベルで行うというだけのものではありません。

メリットやテクニック、注意点などここで解説するには膨大なので、詳細については別のページで解説します。

準備中

まとめ

ベンチプレスのやり方について解説しました。
単純な種目と思われがちですが、意外と細かい注意点やテクニックがあります。
これらを疎かにしては大胸筋が発達しないばかりか、ケガのリスクも高まります。

注意点をまとめると以下のとおりです。

①アップでケガを予防する
②頭、肩、お尻、両足を接地させる
③カラーとセーフティバーを必ず着ける
④肩の位置ではなく鳩尾の辺りに向かって下ろす
⑤親指を巻き付けるサムアラウンドグリップが基本

また大胸筋に効かせるためのテクニックは以下のとおりです。

①肩関節だけでなく胸郭と肩甲骨を動かす
②ヘソではなく鳩尾の辺りをトップにアーチを作る
③肘はトップで伸ばし切らなくてOK
④顎を上げず、トップではむしろ少し引くくらい
⑤呼吸とベルトで腹内圧を高めてパワーを出す

これだけ細かいことを意識してるとあまり大きな重量は扱えないと思います。
負荷の大きさを追うことも大事ですが、それよりも安全で効果的なフォームを心掛けましょう。
てなとこで。