隠れた名種目?|ワンハンドダンベルローイングのやり方と効かせ方

ワンハンドダンベルローイングはダンベルを使用して片手ずつ行うトレーニング種目です。
ローイングというとベントオーバーローイングが有名ですが、ワンハンドローにも大きなメリットがあります。

因みにぼくはこの種目が一番効くから好き

このページではワンハンドダンベルローイングの基本から効果的なやり方まで詳しく解説します。

このページでわかること

・ワンハンドローイングの効果
・基本的なやり方
・重量設定やセット数
・トレーニング上の注意点
・効かせるためのテクニック
・ワンハンドローイングのバリエーション

目次 -index-

1 ワンハンドダンベルローイングの基本的な知識

まずはワンハンドダンベルローイングの基本的な知識をまとめます。
因みにワンアームダンベルローイングと言ったり略してワンローなどと呼ばれることもあるようです。

ここでは以下のポイントについて解説します。

機能 関節数 関与する筋肉 POF分類

ワンハンドダンベルローイングは解剖学的な機能で分類すると以下の2つが該当します。

①肩関節の伸展 ②肘関節の屈曲

肩と肘の2つの関節が可動するので、コンパウンド(多関節)種目に分類されます。
この動作によって鍛えられる筋肉は以下のとおりです。

メイン(背中)広背筋
大円筋
脊柱起立筋群
サブ(腕)上腕二頭筋
上腕筋
腕橈骨筋

鍛えられると表現してますが、なるべく主動筋に負荷を寄せられるのが理想です。

メインターゲットとなる広背筋にかかる負荷が最大になるのは肩を伸展させ切ったポジションです。
そのためPOF分類ではコントラクト種目に分類されます。

解剖学的な機能①肩関節の伸展
②肘関節の屈曲
関節数の分類コンパウンド(複合関節)種目
主働筋広背筋
大円筋
脊柱起立筋群
協働筋上腕二頭筋
上腕筋
腕橈骨筋
POF分類コントラクト種目(収縮ポジション)

2 ワンハンドダンベルローイングのメリット・デメリット

続いてこの種目のメリットとデメリットの紹介です。
主に目的やフォームの近いベントオーバーローイングとの対比で解説します。

2-1 ワンハンドダンベルローイングのメリット

ワンハンドダンベルローイングのメリットは以下のとおりです。

①安定感・安全性 ②左右のバランス ③グリップの調整 ④可動域

メリット① 安定感と安全性が高い

ワンハンドダンベルローイング最大のメリットはその安定感と安全性です。

ベントオーバーローイングの場合、下半身の力で姿勢を保たなければいけません。
高重量を扱える種目と言っても、ここの支えがないと腰に負担がかかってしまいます。

一方ワンハンドダンベルローイングなら、ベンチなどに手を着いて姿勢を安定させられます。
腰への負担や姿勢の維持に意識を取られることなく、高重量を扱えるということです。

メリット② 左右差が生まれにくい

ベントオーバーローイングのようにバーベルで行う種目だと、どうしても得意な利き手に頼りやすくなります。
そのため左右で筋肉の発達に差が生じがちです。

ダンベルローイングという手段もありますが、両手で同時に動作となるといずれか一方の意識は多少は疎かになってしまいます。
背中は特に可動が意識しにくいので、最大限の注意を向ける必要があるのです。

その点においてもワンハンドローイングは優れています。
片手ずつで左右差の問題を解消すると同時に、正確な動作で効率的な筋肥大の実現にも寄与します。

メリット③ グリップの自由度が高い

背中はとりわけグリップ方法の種類が多い部位です。
そのため、あらゆるトレーニング種目においてグリップ方法が話題になります。

各グリップ方法にはそれぞれ一長一短ありますが、ダンベル種目はそれらを幅広くカバーできるのがメリットです。
なお具体的なグリップ方法や効果については後ほど解説します。

細かいグリップに囚われすぎて肝心のフォームが疎かになるリスクもあるけどね

メリット④ 可動域が広く取れる

トレーニーなら耳にタコが出来るほどだと思いますが、筋肥大のために広い可動域の確保は非常に重要というよりマストです。
ワンハンドローイングはトップ・ボトム両方の可動域に有用です。

ダンベルはバーベルのようにトップで身体に支えることがないので、より収縮を強くすることができます。

またバーベルはウエイトプレートが大きく、ボトムで床に着いてしまうというデメリットがあります。
ダンベルはウエイトのサイズが小さいので、しっかり可動域をとっても床に触れません。

2-2 ワンハンドダンベルローイングのデメリット

ワンハンドダンベルローイングのデメリットはトレーニングに時間がかかることです。
これは多くのワンハンド種目に共通します。

腕や肩などのアイソレート種目であれば左右の間のインターバルが短くて済むので、実質的にトータルのトレーニング時間がほとんど変わらないケースもあります。

しかしローイングのようなコンパウンド種目では扱う重量が大きく、疲労もかなり大きくなります。
そのため左右をスイッチする間にもそれなりのインターバルが必要です。

「片手種目は時間がかかる」がホントに成り立つ珍しいケースだね

メリット・安全性が高い
・安定して高重量を扱える
・左右差が生まれにくい
・動作や筋肉の可動に集中できる
・グリップの自由度が高く、効果を高めやすい
・可動域が広く取れる
デメリット・トレーニング時間がかかる
・細かいテクニックに気を取られるリスクがある

3 ワンハンドダンベルローイングのやり方

ワンハンドダンベルローイングのオーソドックスなやり方は以下のとおりです。
細かい注意点やコツなどは後で詳しく解説します。

①準備

ダンベルをフラットベンチの片側に用意します。
動作しない方の手と膝をベンチに着いて、上体を水平にします。

動作する側の足を置く場所にはあまり決まりはありません。
自然なところでOKですが、あまりダンベルの軌道の邪魔にならないところをオススメします。

②ダンベルを挙げる

体勢を作ったら床に置いたダンベルを持ちます。
息を吸い込んで腹圧を高めて体幹を固めたら、ダンベルを挙上します。

真っ直ぐ真上ではなく、脚の付け根・お尻の方向に向かって弧を描くように挙げましょう。
また肩幅で動作するのもポイントです。

③ダンベルを下ろす

トップに到達したらダンベルを元の位置まで下ろします。
この時も真っ直ぐ下ろすのではなく、挙げる時と同じ軌道を逆順で辿るようにしましょう。

4 ワンハンドダンベルローイングの重量やセット数

筋力トレーニングにおける重量・回数(RM)設定の適正値は、その目的によって異なります。。
おおよそ以下が目安です。

目的RM強度
筋力アップ3~7RM83~93%
中間8~12RM70~80%
筋肥大13~19RM62~67%
筋持久力20RM以上60%以下

ワンハンドダンベルローイングでターゲットとする広背筋においてもこの関係が成り立ちます。

ただし広背筋は体積の小さい筋肉であり、出力はそこまで大きくありません。
この点はよく誤解されてるポイントです。

過度に高負荷で設定してしまうと広背筋では扱い切れなくなり、腕に頼った挙上になりがちです。
なるべく回数多めのRMに設定するようにしましょう。

インターバルについては既に軽く触れましたが、一般的に体積の小さい筋肉は回復が速いと言われています。
ただローイングは扱う重量の大きいコンパウンド種目なので、セット毎の疲労が大きくなります。

万全のパフォーマンスを目指すならインターバルは長めがオススメだよ

ただしスタミナはそこそこある筋肉なので、セットを重ねてもパフォーマンスはあまり低下しません。
セット数は多めに組んでもOKです。

項目設定値の目安
重量(筋力アップ)8RM
重量(筋肥大)12RM
重量(筋持久力)20RM~
インターバル長め(2~3分)
セット数多め(4~5セット)

5 ワンハンドダンベルローイングの注意点

ワンハンドダンベルローイングのトレーニング上の注意点は以下のとおりです。

①上半身を起こさない ②身体を開かない ③脇を開かない

注意点① 上半身は水平を保つ

広背筋を狙うローイング種目で最も気を付けるべきことは、上半身を起こさないことです。
上体が垂直に近付くに従って僧帽筋の動作に近付いてしまいます。

適度な傾斜なら収縮を高められるんだけどね

ベンチに手と膝を着いて行うローイングの場合はこの心配はかなり少なくなります。
それもこの種目のメリットと1つです。

ただ膝を着かずに行うバリエーションなどでは、上体を起こす余地があるので注意しましょう。
この動きもチーティングの一種なので、重量の見直しも必要です。

注意点② 肩のラインの水平を保つ

先程は背中の上下の水平についてでしたが、次は左右の水平についてです。

ダンベルを挙げながら肩を一緒に上げてしまうケースが結構あります。
これも先程と同じくチートの一種です。

体幹の回転でダンベルが上がってるだけだからね

これをやってしまうと広背筋の起始と停止が一定の距離のまま近付かず、収縮させることが出来ません。
コントラクト種目でこれはかなり致命的です。

チーティングに走る原因はほぼほぼオーバーウエイトなので、トレーニングで使用する重量を見直しましょう。

注意点③ 脇を締めて挙上する

やり方のところでも軽く触れましたが、動作中ダンベルは肩幅をキープしましょう。
これは動作を肩関節の伸展に近付けるためです。

脇を開いてしまうと肩の水平外転や肩甲骨の内転まで加わってしまいます。
つまり三角筋のリアや僧帽筋が関与するということです。

ローイングで腕の関与に悩む人は多いはずです。
ただでさえ広背筋に負荷を集中させるのが難しい状況にあって、さらなる関与筋の増加は大きなマイナスになります。

負荷が大きすぎて、他の筋肉に分散させようとしてる場合もありますが、どちらかと言うとこれはフォーム習得の問題です。
最初はやや違和感のある動作だと思いますが、繰り返して身に付けましょう。

6 ワンハンドダンベルローイングを効かせるテクニック

ワンハンドダンベルローイングを広背筋に効かせるためのテクニックは以下のとおりです。

テクニック簡単さ重要度
トップで止める★★★★☆★★★★★
握り★★★★☆★★★☆☆
体幹の曲げ伸ばし★★☆☆☆★★★☆☆
体幹の捻り★★☆☆☆★☆☆☆☆

難易度が低く重要なものから試していきましょう。

テクニック1 トップで動作を止める

ネガティブ局面の重要性は多くのトレーニーが認識してるはずです。
しかしそれを実践出来てる人は多くありません。

ネガティブでコントロールが抜けてしまうと、筋肉の実質的な仕事は往路のみになってしまいます。
復路は単に通過しただけです。これではボリュームにはカウントされません。

勘違いされがちですが、決してネガティブに魔法のような筋肥大効果があるわけじゃありません。
ポジティブよりやや筋肉に与える影響が大きい程度に止まります。

真の問題はトレーニングボリュームの半減ってこと

トップで一時停止することで、一気に下ろさずコントロールして下ろす意識がしやすくなります。

テクニック2 握りの工夫で効かせる

背中の種目全般で問題になるのが、腕の関与による効きの低下です。
この問題は以下のグリップテクニックによって緩和することが出来ます。

①サムレスグリップ ②深く握る

①親指を外してグリップする

サムレスグリップとは親指を外したグリップのことです。
これが腕の関与を減らすのに役立ちます。

親指・人差し指は上腕二頭筋と同じ正中神経に支配されています。
これら2本の指に力が入ると二頭筋も活性化してしまうのです。

小指側重心にする方法もありますが、疲れて来ると親指重心にシフトしやすくなります。
最初から握らなければ頼る余地はないってことです。

②深くグリップする

もう1つのポイントがダンベルを深く握ることです。
指ではなく手のひらで握るようにしましょう。

こうすることで広背筋がストレッチされて表出し、広背筋が活性化しやすくなります。
いわゆる「広背筋に引っ掛ける」ってやつです。
また指先で握ることによる握力の消耗も回避できます。

慣れない内は違和感がある握りだけどね

因みにこれでも握力が消耗してしまうって人はパワーグリップリフトストラップを使って握力の補助をしましょう。

テクニック3 腰を曲げ伸ばしする

ローイング種目では背筋を真っ直ぐに保つのが基本です。
腰を丸めてしまうと大きく負担がかかってしまいます。

しかし広背筋は腰に付着している筋肉です。
そのため実のところ腰を丸めたり伸ばしたりすることで、ストレッチ・収縮をさせたいのです。

ベントオーバーとかでやるのは危険だから「真っ直ぐ」って言われてるだけ

ワンハンドローイングの場合は片手・片足をベンチに置いて姿勢を固めているので、この動作を比較的安全に行うことができます。

下ろす時に背中を丸め、挙げる時に背中を反らすようにしてみましょう。
このとき顎も引いたり、上げたりすると、背中の弛緩と収縮をコントロールできます。

テクニック4 体幹の捻りを加える

これも難易度が高いので、1つ前のものと同じく「余裕があれば」の但し書き付きテクニックです。

体幹を捻るとは、具体的にはNGフォームの真逆をやるということです。
挙げる時に体幹を逆方向に捻って身体を閉じるように動作します。

こうすることによりトップで起始と停止がさらに近くなり、収縮を高めることができます。
捻る空間を確保しようと脇を開きやすいので注意しましょう。

片手じゃないと出来ない動きだから、これもワンハンドローのメリットって言えるね

7 ワンハンドローイングのバリエーション

最後にワンハンドローイングのバリエーションを紹介します。
ここで解説するのはフォームとグリップ方法の2つです。

バリエーション1 膝を乗せないパターン

オーソドックスな方法としてベンチに手と膝を着くものを紹介しましたが、膝をベンチに乗せずにスタンディングで行うバリエーションも存在します。

よくジムでダンベルラックとかを支えにしてやってる人がいるやつね!

ダンベルラックや角度をインクラインに設定したベンチに片手を着いて体を支え、もう片手でローイング動作を行います。
この方法のメリットは以下のとおりです。

①角度の調節 ②動作の自由度

膝を置く場合、フラットベンチを使うので上半身の角度はほぼ水平で固定です。
しかしアジャスタブルベンチなら好きな角度に設定することができます。

少しだけ上体を起こした方が収縮は強くなるよ

また支えを身体の斜め前方に置くので、身体の真下の空間がフリーになります。
フラットベンチの場合、ダンベルの重量が上がるとベンチや脚に触れて動作が妨げられたりしますが、そういう問題が起こりません。

一方で支点が腰から遠くなるので、腰の安定感が低下するデメリットがあります。
体幹を固める必要があり、固定が甘くて動かしてしまうとケガに繋がるリスクもあります。

バリエーション2 グリップ方法による効果の違い

背中の種目にはグリップ方法がいくつかあるので、その特徴とダンベルローイングでの選択について解説します。

なお広背筋狙いのローイングでは手幅はナロー1択なので、手幅についてはここでは解説しません。
握りの向き大きく分けると以下の3つです。

①オーバーグリップ ②アンダーグリップ ③ニュートラルグリップ

①オーバーグリップ

オーバーグリップ(=順手)は広背筋の収縮向きのグリップです。
広背筋は上腕の前面に付着(停止)していて、順手によって腰辺りの起始部と近付けることができるからです。

上腕二頭筋が関与しにくく、その代わりに上腕筋や腕橈骨筋が関与しやすくなるのも特徴です。

②アンダーグリップ

アンダーグリップ(=逆手)は広背筋のストレッチに向いたグリップです。
理由は既に解説したのとちょうど逆で、起始と停止の距離が遠くなるからです。

上腕二頭筋が関与しやすく、引ける重量が大きくなるのが特徴です。
ただし二頭筋に頼ってしまい広背筋に負荷がかからなくなる可能性もあります。

③ニュートラルグリップ

ニュートラルグリップは手のひらを向かい合わせにするグリップ方法です。
パラレルグリップと言われることもあります。

特徴はオーバーグリップとアンダーグリップの中間で、ストレッチでも収縮でもない中間のポジションに向いています。

どのグリップがベスト?

ワンハンドダンベルローイングは収縮狙いのコントラクト種目なので、基本は収縮に向いたオーバーグリップです。

ただしダンベル種目はグリップの自由度が高いので、動作中にグリップを変えることができます。
そのメリットを最大限に活かすなら、挙げながらオーバーグリップにして、下ろしながらアンダーグリップにするのがベストです。

まとめ

ワンハンドダンベルローイングのやり方について解説しました。
この種目の基本情報を以下にまとめます。

解剖学的な機能①肩関節の伸展
②肘関節の屈曲
関節数の分類コンパウンド(複合関節)種目
主働筋広背筋
大円筋
脊柱起立筋群
協働筋上腕二頭筋
上腕筋
腕橈骨筋
POF分類コントラクト種目(収縮ポジション)

ワンハンドダンベルローイングのメリットとデメリットは以下のとおりです。

メリット・安全性が高い(特に腰の)
・安定して高重量を扱える
・左右差が生まれにくい
・動作や筋肉の可動に集中できる
・グリップの自由度が高く、効果を高めやすい
・可動域が広く取れる
デメリット・トレーニング時間がかかる
・細かいテクニックに気を取られるリスクがある

メニューを組む時は以下を参考にしてください。

項目設定値の目安
重量(筋力アップ)8RM
重量(筋肥大)12RM
重量(筋持久力)20RM~
インターバル長め(2~3分)
セット数多め(4~5セット)

ワンハンドダンベルローイングをやる場合には以下の点に特に注意しましょう。
もしやってしまう場合は対策で改善を図ってください。

注意点理由対策
上半身を起こさない有効な可動域が減る
僧帽筋の関与が増える
重量の調整
身体を開かない広背筋が収縮しない重量の調整
フォームの習得
脇を開かない三角筋のリアが関与
僧帽筋が関与
フォームの習得
重量の調整

ワンハンドダンベルローイングをより効果的に行うためのテクニックは以下のとおりです。
難易度が低く、優先順位の高いものから順にトライしてみてください。

テクニック効果簡単さ重要度
トップで止めるネガティブのコントロール★★★★☆★★★★★
握り広背筋の活性化
握力負担の軽減
★★★★☆★★★☆☆
挙げる時=反らす
下ろす時=丸める
収縮の強化
ストレッチの強化
★★☆☆☆★★★☆☆
身体を閉じる収縮の強化★★☆☆☆★☆☆☆☆

ワンハンドローイングには膝をベンチに乗せずにやるバリエーションもあります。
メリットもありますが、デメリットも大きくなるので注意しながら取り入れましょう。

メリット・上体を起こす角度の調節が可能
・障害物が減るので動作の自由度が高い 
デメリット・腰のサポートが減る
=腰のケガのリスクが増大

またダンベルローイングはグリップの向きを自由に変えられるのもメリットです。
そのメリットを最大限活かすため、動作の中でグリップの向きを調整してみましょう。
てなとこで。