意外と奥が深い?ダンベルショルダープレスのやり方|肩に効かせるコツ

ダンベルショルダープレスはその名前のとおり肩を鍛えるのに有効なプレス種目です。
見た目はかなりシンプルな動作ですが、狙った筋肉に効かせるのは案外かんたんではありません。

このページではショルダープレスを効果的に行う方法について解説します。

このページでわかること

・ショルダープレスの基本的なやり方
・ショルダープレスのセットの組み方
・注意点・効かせるためのコツやテクニック
・ショルダープレスのバリエーション

1 ダンベルショルダープレスの基本的な知識

まずはショルダープレスの基本的な事項から確認していきましょう。

1-1 ショルダープレスの目的

ショルダープレスは複数の関節・筋肉が可動するコンパウンド種目です。
解剖学的には主に以下の3つの動作になります。

①肩関節の屈曲 ②肩関節の水平内転 ③肘関節の伸展

複数の関節が可動するので、コンパウンド(複合関節)種目に分類されます。

この動作によって鍛えられる筋肉は以下のとおりです。

メイン三角筋前部(フロントデルタ)
サブ上腕三頭筋
三角筋中部(ミドルデルタ)
大胸筋上部

メインの動作である肩関節の屈曲を中心に考えると、動作の中間で負荷が最大になるミッドレンジ種目です。

たいていの筋肉であればミッドレンジは最大筋力を発揮するポイントになります。
しかし三角筋の筋力が最大になるのはストレッチポジションです。

だから解剖学的に見るとややちぐはぐなトレーニング種目なんだよね

解剖学的な機能①肩関節の屈曲
②肩関節の水平内転
③肘関節の伸展
関節数による分類コンパウンド(複合関節)種目
主動筋三角筋の前部(フロントデルタ)
協働筋上腕三頭筋
三角筋中部(ミドルデルタ)
大胸筋上部
POF分類ミッドレンジ種目

1-2 ショルダープレスのメリット・デメリット

ショルダープレスのメリットは大きな重量を扱えることです。
三角筋の前部を鍛える種目は他にもフロントレイズなどがありますが、単関節種目なので扱える重量が大きくありません。

ショルダープレスは強力な上腕三頭筋が関与するコンパウンド種目なので、他の種目に比べて大きな重量を扱えます。
その分、強い刺激を三角筋のフロントに当てることが出来るのです。

一方で既に軽く触れたとおり、解剖学的に見るとややちぐはぐな種目でもあります。

三角筋のフロントが最大の筋力を発揮するのはストレッチポジションです。
しかし当のショルダープレスで最大の負荷がかかるのはミッドレンジになります。

メリット大きな重量を扱いやすい
デメリット解剖学的に見ると不必要な種目(?)

2 ショルダープレスのやり方

ダンベルのショルダープレスは以下の流れで行います。
動作としては非常にシンプルです。

①スタンスを固める ②ダンベルを抱える ③スタートポジションにセット ④ダンベルを挙げる ⑤ダンベルを下ろす

以下でかんたんに解説していきます。

①スタンス

ダンベルを手に持ち、スタンスは肩幅に開いて立ちます。
トレーニング動作のベースになるので、地味ながらけっこう大事なポイントです。

②ダンベルを抱える

腰の高さにあるダンベルをまずは肩の高さまで抱える必要があります。
扱う重量が大きい場合はオンザニーを使いましょう。

オンザニーっていうのは腿にダンベルを乗せて蹴り上げる勢いで持ち上げるテクニックね

③スタートポジションにセット

肩の位置までダンベルを持ってきたら、ショルダープレスのスタートポジションにセットします。
位置は身体の真横、上腕が水平になるところです。

肘の角度は直角にしましょう。
このポイントが最も三角筋に負荷がかかるので、負荷をしっかり感じておくことも重要です。

肘の真上にダンベルが来るように前腕の角度にも注意しようね

④ダンベルを挙上する

セットしたポジションから頭上にダンベルを挙上します。
肘を伸ばすことよりも脇を開いて肘を挙げるイメージを持つようにしましょう。

ダンベルを挙げることよりも肘で弧を描くイメージの方が重要だよ

⑤ダンベルを下ろす

トップに到達したらダンベルを下ろします。
一気に下ろさずに、ウェイトをコントロールしながら動作しましょう。

3 ダンベルショルダープレスの負荷・セット数

一般的な分類ではトレーニングの目的によって効果的なRMの設定は異なります。
具体的には以下のとおりです。

目的RM強度
筋力アップ3~7RM83~93%
中間8~12RM70~80%
筋肥大13~19RM62~67%
筋持久力20RM以上60%以下

ダンベルショルダープレスは複数の関節・筋肉が可動するため、非常に大きな重量を扱うことができます。
左右合計で100kgを挙げる人もいるくらいです。

しかし高重量がオススメかと言うとそうでもありません。
それはメインターゲットとする三角筋のフロントは遅筋優位であり、体積も単体ではさほど大きくないからです。

負荷が大きすぎると筋力の強い上腕三頭筋の活性が高まってしまいます。

複数の筋肉が関与するコンパウンド種目であり、扱う重量も大きい傾向があるので、回復にはそれなりの時間がかかります。
インターバルは長めにとるようにしましょう。

そして三角筋のフロントはベンチプレスなどで酷使されやすく、さらなる高重量トレーニングはオーバーワークに繋がる可能性があります。
セット数も少なめで十分です。

これは他の三角筋前部のトレーニングにも共通する話だよ!

項目設定値
重量(筋力アップも狙う)8RM
重量(筋肥大)12RM
重量(筋持久力)15RM~
インターバル長め(3分程度)
セット数少なめ(2~3セット)

4 ダンベルショルダープレスの注意点

ダンベルショルダープレスの注意点は主に以下の4つです。

①オーバーワーク ②可動域  ③チート ④肩を上げない

4-1 フロントはオーバーワーク気味

まず1つめは既に1個前の項目で話したオーバーワークの問題です。

三角筋のフロントは主に大胸筋を鍛える種目全般で協働筋として働いています。
これらはいずれも高重量を扱う種目であり、三角筋にかかる負荷も大きいです。

鍛えすぎでアンバランスになる可能性のほかに、オーバーワークで分解が優位になり、逆に肥大しなくなる可能性もあります。
負担が大きいと感じる人はセット数や負荷を少し減らしてみましょう。

ぼくはセット数を減らしたら少し発達がスムーズになってきたよ

4-2 可動域を拡げ過ぎない

効率的な筋肥大のためには、「なるべく広い可動域で動作することが重要」と言われます。
動作の範囲が広い方が運動のボリュームが大きくなるからです。

筋肉の収縮・伸長の範囲も大きくなるからね

しかしことショルダープレスにおいてはフルレンジが正義とも限りません。
その理由が肩関節の故障リスクです。

肘を肩より下まで大きく下ろすと肩に違和感を感じることがあります。
人によっては関節がボキボキ鳴るかもしれません。

これは肩関節の水平内転/外転の可動域の外だからです。
筋肉が上手く力を発揮できないポジションに入ってしまうので、負荷を関節で受け止めることになってしまいます。

当然ながら関節はそんな大きな重量を受け止めるようには出来ていません。
大きな力が無理な角度でかかれれば、当然ケガのリスクは高まります。

肘を肩と同じ高さか、やや下まで下ろせば十分だよ

4-3 チートを使わない

スタンディングで行う種目で最も多いのが、膝の屈伸の力でチートしてしまうことです。

確かにチートを使えば高重量を扱えますが、トレーニング効果は上がりません。
挙げにくいスタートポジションが最も三角筋に負荷がかかるポイントであり、そこを脚の力で挙げてしまうからです。

膝を軽く曲げたりなどしてしまうと脚を使う余地を与えてしまいます。

どうしてもチートしやすい人はスタンスを拡げて、足を逆八の字に開くようにしましょう。
この立ち方ならよほど使おうと意識しない限り、脚のチートは使いにくくなるはずです。

4-4 肩を竦めない

ショルダープレスで肩や首筋が痛くなってしまうという人は、肩の竦みが原因です。
サイドレイズなどにありがちなミスですが、ショルダープレスでも起こります。

力むとどうしても肩が上がっちゃうんだよね…

これだと三角筋のフロントに十分な負荷が入る前に、僧帽筋の疲労で終了してしまいます。

たいていは無理な重量を扱ってることが原因です。
肩を下げて動作する意識も大事ですが、変な力みをせずに挙げられる重量を選択しましょう。

5 ダンベルショルダープレスのコツ

ダンベルショルダープレスをターゲットとなる三角筋のフロントに効かせるためのコツやテクニックは以下のとおりです。

①フィニッシュ不要 ②親指重心 ③肩の内旋・外旋 ④胸を殺す

5-1 トップまで挙げなくてOK

フルレンジで動作しなくて良いのはボトムだけではありません。
トップにおいてもフルで動作しなくてOKです。

これはトップがショルダープレスのメインターゲットである三角筋前部の動作に関係がないからです。
トップでは三角筋の動作の向きと負荷の向き(重力)がクロスしてしまいます。

最後の押し上げの部分は肘関節の伸展、つまり上腕三頭筋の動作ということです。
三角筋を鍛えるという目的においては無意味になります。

5-2 親指重心

些細なテクニックですが、意外と重要なのがグリップの重心です。
この位置によって効き方が変わります。

具体的には、重心をやや親指寄りにしましょう。
あまりやり過ぎると肘が曲がってしまい、肘の伸展動作が大きくなってしまいます。

ちょっと手首を傾けるくらいでOKだよ

その分だけ手首が安定しなくなるので、重量は扱えなくなります。
また手首をケガするリスクも高まるので、そこまで重視しなくても大丈夫です。

5-3 グリップの向きを変える

メインの機能ではありませんが、三角筋のフロントは肩関節の内旋にも関与します。
なので挙上の際に内旋を加えることによって三角筋の活性が高まります。

具体的に肩関節の内旋とはピッチング動作のような肩の回転動作です。
ショルダープレスで肩を内旋すると手のひらを外側に向けるようになります。
手の向きが固定されたバーベルでは出来ないので、ダンベルショルダープレス限定のテクニックです。

内旋させる時に注意すべきことは、肩の安定感が落ちるということです。
肩の回転動作を加えない場合に比べると扱える重量は確実に落ちます。

低負荷でしっかり効かせるテクニックってことだね

またストレッチまで狙うなら、ボトムではパラレルグリップにしましょう。
手のひらが自分の方を向くように下ろせばOKです。

5-4 大胸筋の関与を抑える

三角筋に負荷が逃げてしまって大胸筋が上手く発達しない人がいる一方で、その逆に三角筋が発達しにくい人もいます。

これは胸郭動作と肩関節の動作の区別が出来ていないことが原因です。
三角筋を鍛えたい場合は肩関節を動かし、胸郭の動作を抑える必要があります。

その最もかんたんな方法が胸を張らないことです。
胸を張ると大胸筋がストレッチされてしまい、その反発として収縮しやすくなります。

そこで敢えて身体をやや内向きに丸めて胸を張らないようにすると、大胸筋の関与をかなり抑えることが出来ます。
胸の関与が減る分だけ押せる重量は下がりますが、これも低負荷で効果的に鍛えるということです。

胸を張ると肘の位置が後ろになって、背中に入る(痛める)原因にもなるよ

6 ショルダープレスのバリエーション

ここまでダンベルで行うショルダープレスを念頭に解説してきました。
その他にもいくつかバリエーションがあるので、ここで紹介します。

①シーテッド ②ワンハンド ③バーベル ④スミスマシン ⑤プレスマシン ⑥バックプレス

なおメリット・デメリットは最後のまとめで一覧にして紹介します。

6-1 シーテッドショルダープレス

ここまでスタンディングでのショルダープレスを紹介してきました。
ただ個人的にはシーテッドで行う方法をオススメします。理由は以下の2つです。

①チート防止 ②体幹のサポート

スタンディングで最も気を付けるべきは脚力に頼るチート行為です。
確かに重量は上がりますが、肝心のポイントで三角筋に効果的な負荷が入りません。

座ってしまえば脚のチートに頼る余地はなくなります。
またアジャスタブルベンチなどを使えば寄りかかって動作できるので、同時に体幹の弱さもカバーすることができます。

大胸筋の関与を減らすためにも、胸を張りにくくする必要があります。
なるべく垂直に近い角度でベンチの背をセットするようにしましょう。

ただ完全な垂直よりも80°くらいのやや倒した角度の方がフロントに入りやすいよ

6-2 ワンハンドショルダープレス

名前のとおり、片手ずつ行うショルダープレスです。
特にレベルアップして扱う重量が大きくなってくると効果を発揮します。

両手でやっても片手でやってもそれぞれの三角筋にかかる負荷の大きさは変わりません。
問題は体幹にかかる負荷です。

体幹は1つなので、両手でやれば大きな負担がかかることになりますが、片手でやれば両手の半分の負荷で済みます。
しっかり体幹を安定させて丁寧に動作できるので、効果的なトレーニングになります。

体幹の弱さが原因で伸び悩むケースもあるので、扱う重量がアップする可能性もあります。

6-3 バーベルショルダープレス

両手の軌道が自由になるのがダンベルの利点です。
しかし関節の安定など細かいコントロールが必要になります。

そこに足を引っ張られて重量が伸び悩んでいる人もいるかもね

バーベルでショルダープレスを行う場合、自由度は犠牲になります。
その代わりに安定感が増すので、扱える重量が伸びることが多いです。

動作が安定すれば、動作のブレによる関節のケガも予防できるね

重量が増えるとチートしやすいから、シーテッドが良いよ

次のスミスマシンにも通じますが、グリップ幅は上腕が床と水平になるところで肘が垂直になるくらいです。
因みに手幅によって効き方が変わるという解説もありますが、単純に種目が変わってるだけです。

6-4 スミスマシンショルダープレス

こちらも名前のとおりスミスマシンで行うショルダープレスです。
バーベル以上に安定感が高くなります。

その一方で当然のことながら軌道がガチガチに固定されてるので、自由度は全くありません。
人によっては体格や関節の動作に合わない可能性はあります。
なるべく無理な可動にならないよう、軌道が斜めに設定されているスーパースミスがオススメです。

因みにスミスマシンなら軌道を安定させた上でワンハンドのプレスもできるよ

スミスマシンでワンハンドプレスをする場合はマシンに横向き座って行いましょう。
グリップはパラレル一択になりますが、ストレッチをかけやすくなります。

6-5 ショルダープレスマシン

ショルダープレスは主要なトレーニング種目なので、専用のマシンも各メーカーがリリースしています。

マシンの場合は体幹や軌道の安定だけでなく、負荷のロスが少ないのがメリットです。
ものによってはスミスマシンと変わらない場合もありますが、三角筋の動作の向きに常に負荷がかかるよう調整されてるものもあります。

ゴールドジムとかだとハンマーストレングスのショルダープレスマシンが人気ですね。
ウェイトの交換にロスがありますが、身体を安定させられて負荷のロスが少ないイメージです。

6-6 バックプレス

最後に紹介するのはバックプレスです。
これまで紹介した種目はいずれも身体の前面または側面でプレス動作を行うものでした。

一方でバックプレスは頭の後ろに向かって下ろす方法です。
この方法の最大の利点は大胸筋の関与を限りなく減らせるところにあります。

大胸筋の関与を減らす方法は既に紹介しましたが、これは意識が大きく関係します。
重量を追ってしまうとなかなか上手く実践できません。

バックプレスであれば解剖的にも大胸筋が関与しにくくなります。
ただその一方で肩関節の負担も増えるので、重量設定は慎重に行いましょう。

肩に違和感がある場合は関節が堅いってことだからあんまり向いてないかも…

まとめ

三角筋のフロントを鍛えるショルダープレスについて解説しました。
色んな理由からあまり重量を追いすぎないことが重要な種目です。

種目の基本的な事項を改めてまとめると以下のとおり。

解剖学的な機能①肩関節の屈曲
②肩関節の水平内転
③肘関節の伸展
関節数による分類コンパウンド(複合関節)種目
主動筋三角筋の前部(フロントデルタ)
協働筋上腕三頭筋
三角筋中部(ミドルデルタ)
大胸筋上部
POF分類ミッドレンジ種目
メリット大きな重量を扱いやすい
デメリット解剖学的に見ると不要な種目(?)

トレーニングメニューを組む際は以下のことを参考にして下さい。

項目設定値
重量(筋力アップ)8RM
重量(筋肥大)12RM
重量(筋持久力)15RM~
インターバル長め(3分程度)
セット数少なめ(2~3セット)

ショルダープレスの注意点をまとめると以下のとおりです。

注意点理由対策
セット数は控えめに大胸筋種目でも酷使されてる2~3セットにする
可動域を拡げ過ぎない関節にかかる負担が大きい水平で止める
膝を動かさないチートスタンスを拡げる
足を逆八の字にする
肩をすくめない僧帽筋の関与重量の見直し
正しいフォームの習得

また三角筋に効かせるためのコツ・テクニックは以下のとおりです。
なるべく難易度が低く優先順位の高いものから試してみましょう。

テクニック・コツ目的簡単さ重要度
トップまで挙げない三角筋に負荷が入らない★★★★★★★★★★
親指重心三角筋に負荷を乗せる★★★★☆★★★☆☆
グリップの回転収縮・ストレッチの最大化★★☆☆☆★★★☆☆
胸を張らない大胸筋の関与を減らす★★☆☆☆★★★★☆

そしてショルダープレスのバリエーションをいくつか紹介しました。
メリット・デメリットをまとめると以下のとおりです。

バリエーションメリットデメリット
シーテッドプレスチートの防止
体幹が安定
特になし
ワンハンドプレス左右差の解消
体幹が安定
動作への集中
時間がかかる
ダンベルショルダープレス左右差の解消
使えるテクニックの幅が広い
動作が不安定
扱える重量が小さい
バーベルショルダープレス動作が安定
高重量を扱える
グリップが固定される
=テクニックの幅が狭い
スミスマシン動作・軌道が完全に安定
安全性が高い
高重量を安心して扱える
軌道の自由が全くない
ショルダープレスマシン軌道が安定
体幹が安定
負荷のロスが少ない
体格に合わない可能性
バックプレス大胸筋の関与を抑える肩関節に負担が大きい

自分が苦手とする部分をカバーできる種目をセレクトしてみましょう。
繰り返しですが、三角筋のフロントはオーバーワーク気味なので注意しておきましょう。
てなとこで。