【インクラインじゃ不十分】ライイングサイドレイズのメリットと効果的なやり方
肩を鍛える種目やバリエーションは非常に多く、中でもインクラインサイドレイズは人気の種目です。
インクラインサイドレイズのやり方については別のページで詳しく解説します。
人気種目ですが、これはそれほどベストな種目でもないというのがぼくの見解です。
このページでは、効果的ではないと考える理由と真に効果があると種目について解説します。
・インクラインサイドレイズの弱点、問題点
・ライイングサイドレイズの基本知識
・重量やセット数
・ライイングサイドレイズの注意点
・効かせるためのコツやテクニック
・ライイングサイドレイズのバリエーション
※最後のまとめで各項目を一覧表にしています。忙しい人はそちらを参考にしてください。
1 インクラインサイドレイズの弱点
通常のスタンディングで行うサイドレイズではストレッチポジションでは負荷が入りません。
このポジションでも負荷を入れられるというのが、インクラインサイドレイズの最大のメリットです。
しかしこの種目には大きく2つの弱点・問題点があります。
①ストレッチ種目ではない ②必要の無いポジション
1-1 ストレッチ種目ではない
しかしこの種目について厳密に考えると、実はストレッチ種目ではないことが分かります。
どちらかと言うとミッドレンジ種目です。
腕が床と水平になり、三角筋にかかるダンベルの負荷が最大になるポイントは動作の中間らへんになります。
ストレッチポジションでも腕が床に垂直にはならないので、負荷は抜けません。
ただし最大の負荷ではないので、「ストレッチポジションでも負荷がかかる」と言う方が正確です。
1-2 ミッドレンジ種目は不要
大胸筋や大腿四頭筋など主要な筋肉が最大のパワーを発揮するポイントはほぼミッドレンジです。
そのためパワー・ストレッチ・収縮の3つの観点から、コントラクト・ストレッチと併せて3つのポジションを意識した種目が必要になります。
しかし三角筋の中部に関しては、このミッドレンジ種目は要りません。
と言うのも肩関節の外転動作の中で最大筋力を発揮するポイントはストレッチポジションに一致するからです。
つまり三角筋の中部においてミッドレンジは、ストレッチでも収縮でも最大筋力でもない(=何の特徴もない)ポイントということです。
2 ライイングサイドレイズの基本的な知識
そんなインクラインサイドレイズの問題点を解消する種目がライイングサイドレイズです。
これはベンチに完全に横になって行うサイドレイズになります。
解剖学的な機能で言うと肩関節の外転のみで、これは通常のサイドレイズやインクラインサイドレイズと変わりません。
肩関節のみが可動するアイソレート種目です。
通常のサイドレイズは厳密に言うと肩甲骨の上方回旋も入るけどね
この種目によって鍛えられる筋肉は主に三角筋の中部です。
インクラインサイドレイズ以上に僧帽筋の関与も少なくなります。
そしてダンベルの負荷が三角筋にMAXでかかるポイントは脇を完全に閉じたポジションです。
つまりこれこそが真のストレッチ種目になります。
解剖学的な機能 | 肩関節の外転 |
関節数 | アイソレート(単関節)種目 |
対象筋 | 三角筋の中部(ミドルデルタ) |
POF分類 | ストレッチ種目 |
3 ライイングサイドレイズのメリット・デメリット
万能な種目ではなく、メリットと同時にデメリットも存在します。
ライイングサイドレイズのメリットとデメリットはそれぞれ以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
強いストレッチ 僧帽筋の関与が少ない 動作への集中 | 有効な可動域が減る 関節の負担 |
3-1 メリット
ライイングサイドレイズのメリットは何と言っても強いストレッチをかけられることです。
ストレッチ刺激は筋肥大に特に重要な刺激とされています。
また肩甲骨の可動(肩甲-上腕リズム)が始まる前に動作を切り返すので、僧帽筋の関与も防げます。
このメリットはインクラインサイドレイズとも共通です。
3-2 デメリット
一方でダンベルの負荷がかかる有効な可動域はインクラインサイドレイズより狭くなります。
インクラインサイドレイズが90°近く確保できるのに対し、こちらはその半分弱くらいしかありません。
体側よりさらに下までダンベルを下ろせば可動域を拡げ、ストレッチも高められます。
ただしかなり不自然な動作になるので、肩関節にかかる負担が大きくなり、ケガのリスクも高まってしまいます。
4 ライイングサイドレイズのやり方
ライイングサイドレイズのオーソドックスなやり方を解説します。
とは言え既に軽く触れたとおりで、非常に中身はシンプルです。
①準備
片手にダンベルを持ってフラットベンチに横になります。
無ければ床でもOKですが、可動域が狭くなってしまうので、ベンチを使用するのがベターです。
ベンチならボトムまで深く下ろす場合は下ろせます。
ただし肩に無理のない範囲にとどめる注意が必要です。
②ダンベルを挙げる
体側または身体の前からダンベルを挙げます。
基本的に動作する方向についてはインクラインサイドレイズと同じです。
挙げる時は手の甲を真上に向けるか、やや親指を上に向ける(フルカン)ようにしましょう。
③ダンベルを下ろす
だいたい脇が45°開く手前まで挙げたら、ダンベルを下ろします。
挙げた時と同じ軌道を辿ってスタートポジションに戻しましょう。
下ろしすぎには特に注意しましょう。
最大でも水平から30°下くらいにしないと肩関節の負担が大きくなってしまいます。
5 ライイングサイドレイズの重量・セット数
一般論としてトレーニングのベストな重量は、その目的によって異なるとされています。
具体的には以下のような関係です。
目的 | RM | 強度 |
---|---|---|
筋力アップ | 3~7RM | 83~93% |
中間 | 8~12RM | 70~80% |
筋肥大 | 13~19RM | 62~67% |
筋持久力 | 20RM以上 | 60%以下 |
ライイングサイドレイズでメインターゲットとする三角筋の中部についてもおおよそこの関係が成り立ちます。
重量設定について、「三角筋の中部は高負荷に反応しやすい」とする解説が多いです。
扱う重量に関連して挙げられるミドルデルタの特徴として以下の2つがあります。
①速筋比率の高さ ②羽状筋
これらの特徴はいずれもその筋肉が発揮するパワーが大きいことの要因です。
ということは高負荷×低回数が向いてるってことか
ただこれを鵜呑みにして大きな重量を扱うことはオススメしません。
多くの人が考える高重量は三角筋にとっては「超」高重量だからです。
通常のサイドレイズでは僧帽筋やチートの力を借りて挙げてるため、三角筋の正確な筋力を計れていません。
ライイングサイドレイズではこれらの関与がほとんどないので、改めてウエイトを調整する必要があります。
6 セット数やインターバルの設定
一般的に「高重量に反応しやすい」と言われる筋肉ほど、パワーが強くスタミナは少ない傾向にあります。
既に解説したとおり、筋繊維の分類から三角筋の中部は高重量に反応しやすいと言われる筋肉です。
しかしスタミナが無いかと言えばそうでもありません。
むしろセットを重ねてもパフォーマンスが落ちにくいです。
そのためセット数は5~6セットと多めに組んでもOKで、かつインターバルもそこまで長くとる必要はありません。
個人的な体感ではむしろ低負荷×高回数の方が反応しやすい
一般的な理論を押さえることも大事ですが、自分自身の体感を大事にしてベストな設定を探っていきましょう。
重量 | 一般論=高負荷 体感=低~中負荷 |
セット数 | 多め(5~6セット) |
インターバル | 短め(1~2分) |
7 ライイングサイドレイズの注意点
ライイングサイドレイズをやる上で注意すべきポイントは以下のとおりです。
①体幹を動かさない ②肘を曲げない ③肩甲骨を開かない ④下ろしすぎない
注意点① 体幹の向きを安定させる
インクラインサイドレイズでも同じ注意をされますが、ライイングサイドレイズではより注意が必要です。
それは膝を立てたり足を着いて身体を安定させにくいからです。
ベンチの上でゴロゴロと身体を動かしてしまうとチートになってしまいます。
肩による動作角度も少なくなるのでトータルで負荷が大きく縮減してしまいます。
動作に習熟していない状態で高負荷を扱うとこのNGフォームになってしまいます。
まずは軽めの重量から始めましょう。
また空いた手で身体を支えることと、ベンチに足を立てて安定させるのも効果的です。
注意点② 肘を曲げすぎない
サイドレイズでは肘を軽く曲げる姿勢を推奨されます。
これは肘を伸ばし過ぎてしまうと、肘関節の伸展にエネルギーを取られるからです。
しかし肘を曲げ過ぎてしまうのも問題です。
その理由は大きく2つあります。
①負荷の減少 ②ケガのリスク
肘を曲げるほど可動の中心になる肩関節からの直線距離は短くなります。
筋トレの用語的に言うとモーメントアームの短縮です。
テコの原理と同じで、ウエイトが中心に近くなるほど、かかる力は小さくなります。
つまり通常より重い負荷を扱えるということです。
ただし三角筋を基準に考えると掛かる負荷は変わりません。
ただただ身体全体に掛かる負荷・ケガのリスクが大きくなってしまうだけです。
重量を追いすぎるとなりやすいフォームだから気を付けて
注意点③ 肩甲骨を開かない
サイドレイズをやる時に大きな課題になるのが僧帽筋の関与です。
三角筋を十分に刺激する前に僧帽筋の疲労でセットを終えてしまうこともあります。
ライイングサイドレイズであれば、「肩甲-上腕リズム」が働く位置まで動作はしません。
そのため僧帽筋の上部の関与は心配しなくてOKです。
しかしこの種目ではダンベルを身体の前に下ろすので、肩甲骨が開きやすくなります。
つまり肩甲骨の外転・内転で僧帽筋の中部・下部が関与しやすくなるということです。
ダンベルを下ろす時に肩甲骨を開いてしまうと、ストレッチされた反動で僧帽筋がアクティブになってしまいます。
胸を張って肩甲骨はなるべく寄せた状態をキープしましょう。
注意点④ 可動域は広すぎても問題アリ
ライイングサイドレイズはストレッチ側の有効可動域が広いことが大きなメリットです。
ただし可動域は広ければ良いというわけじゃありません。
挙げすぎて腕が床と垂直になれば負荷はなくなります。
同じくストレッチを狙って真下まで下ろしても三角筋に負荷はかかりません。
また下ろし過ぎると三角筋が筋力を発揮できるポイントから外れてしまいます。
そうなるとダンベルの負荷を肩関節で受け止めることになり、ケガのリスクが高まってしまいます。
水平より下ろすにしても30°くらいが限度かな
8 ライイングサイドレイズのテクニック
ライイングサイドレイズを三角筋の中部に効かせるためのコツやテクニックは以下のとおりです。
テクニック | 簡単さ | 重要度 |
---|---|---|
①拳の向き | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
②体幹の回転 | ★☆☆☆☆ | ★★★☆☆ |
いずれもリソースを要するもので、メインの動作に影響しやすくなります。
あくまで「余裕があれば」くらいでOKです。
テクニック① グリップの向きを変える
可動域の制限やケガのリスクから、サイドレイズは親指を上にしたフルカンが推奨されています。
確かに安全面を考えればそれがベストですが、効かせを考えるとベストではありません。
小指を上にしたエンプティカンの方が三角筋が活性化しやすいのは確かだからです。
そこで動作の途中でグリップの向きを変えるという方法があります。
スタートはエンプティカンで始めて、徐々にフルカンに切り替えていきましょう。
水平を越えた辺りでフルカンになってると安全かな
なおエンプティカンの姿勢が肩関節に負担をかけるようになるのは、脇が90°以上開いたところからです。
この種目はそこまで動作しないので、終始エンプティカンの姿勢でもケガの心配はないかもしれません。
テクニック② 体幹を逆に動かす
ライイングサイドレイズではダンベルの動きに着いて身体がゴロゴロ揺れてしまうのはNGと解説しました。
チートでかつ可動域が狭くなるからです。
これは逆にダンベルの動きと体幹を反対に動かせば、有効な可動域を増やすことが出来るとも考えられます。
具体的には下ろす時にやや仰向け気味になり、挙げる時にうつ伏せ気味の姿勢をとるということです。
かなり安定させにくいので、気持ち意識するくらいで十分かもしれません。
9 ライイングサイドレイズのバリエーション
ライイングサイドレイズのバリエーションとしてオススメなのが、ケーブルを使ったサイドレイズです。
一般的なケーブルサイドレイズではプーリーを下に設置します。
ただストレッチを効かせたければ、プーリーは腰くらいの高さに設定しましょう。
こうすることでボトムで横に引く力がかかるので、ストレッチの刺激を三角筋に与えられます。
立った状態でライイングサイドレイズと同じ刺激を入れられるってこと
腕を真横まで挙げてしまうと負荷が完全に三角筋から抜けてしまうので、脇は45~60°くらいまで開けばOKです。
動作や体勢が窮屈になりにくく、個々人の特性に合わせて斜め前に挙げたり、真横に挙げたり自由度が高くなります。
テクニックの実践もダンベルより容易です。
一方でジムでしかできず、しかもケーブルマシンは人気で混むというのが若干のデメリットになります。
それケーブルじゃなくて良くない?って使い方の人も多いよね…
まとめ
ライイングサイドレイズについて解説しました。
一般的なインクラインサイドレイズは正確にはストレッチ種目ではなく、「ストレッチポジションでも負荷が入る」に過ぎません。
筋肥大を効率的に進めるためには、ストレッチポジションを狙って強い刺激をかける必要があります。
そのためには腕が体側に付いた時に負荷がMAXになるような設計が必要です。
ライイングサイドレイズの基本的な事項を以下にまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
強いストレッチ 僧帽筋の関与が少ない 動作への集中 | 有効な可動域が減る 関節の負担 |
またメニューを組む際には以下を参考にしてください。
重量 | 一般論=高負荷 体感=低~中負荷 |
セット数 | 多め(5~6セット) |
インターバル | 短め(1~2分) |
ライイングサイドレイズを実践する際は以下の点に特に注意しましょう。
NGフォーム | 問題点 | 原因・対策 |
---|---|---|
①体幹が安定しない | チートの原因 有効可動域の減少 | 重量の調整 手で身体を支える 脚を立てて固定 |
②肘を曲げ過ぎる | オーバーウェイト | 重量の調整 (ニワトリ卵) |
③肩甲骨を開く | 僧帽筋の中部・下部の関与 | 肩甲骨を寄せてキープ (重量の調整) |
④可動域が広過ぎる | 肩の負担が増える | 重量の調整 |
より効かせるためのテクニックは以下の2つです。
いずれも難易度が高いので、マストではありません。
テクニック | 簡単さ | 重要度 |
---|---|---|
①拳の向き | ★★★☆☆ | ★★★★☆ |
②体幹の回転 | ★☆☆☆☆ | ★★★☆☆ |
バリエーションとしてはケーブルマシンで行う方法がオススメです。
メリット・デメリットを以下にまとめます。
メリット | デメリット |
---|---|
立った状態でできる 関節の個人差に合わせた動作 テクニックが実践しやすい | ジムでしかできない しかも人気で混みやすい |
インクラインサイドレイズ以上に強くストレッチがかかり、かつ僧帽筋など他の筋肉の関与を受けにくい種目です。
重量設定には特に注意しましょう。
てなとこで。
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