ニキビと腸の関係|腸内環境の悪化が老化にも繋がる理由

老若男女問わず、見た目の印象を左右する肌はキレイに保ちたいものだと思います。
肌荒れに悩む人は多いと思いますが、その原因は千差万別です。
ビタミンなどの栄養素の摂取や睡眠、そして保湿や洗顔などの基本的な肌のケアをちゃんとしてるのにニキビができるなら、それは腸の不調が原因かもしれません。

美容なんか男には関係ないね~

なんて人もいるでしょう。
しかし肌のキレイさは無意識に健康や有能さの判断基準にもされてるので、その影響は単なる異性からの評価にとどまりません。
仕事での評価や昇進にも影響してくるとても重要なファクターになります。

何より腸内環境の悪化は様々な疾患の原因であり、毎日鏡で見る顔の皮膚は腸のコンディションを観察する指標の1つです。
このページでは、腸内環境の状態と肌のコンディションの関係について解説します。

このページでわかること

・腸内環境と肌の関係
・腸内環境から肌の老化を止めるアンチエイジングの方法

一口に肌荒れと言ってもその症状は様々なモノがあります。
腸内環境の悪化によって起きる主な肌のトラブルは以下のようなものです。
それぞれ腸内環境の悪化とどのような関係があるのか個別に解説します。

・ニキビやくすみ ・乾燥や脂性 ・シワやたるみ

1 ニキビ

ニキビの原因は基本的にアクネ菌などの皮膚の常在菌の過剰な増殖です。
アクネ菌の過剰な増殖はエサとなる皮脂が多量に皮膚に留まることによって起こります。
そしてその皮脂の過剰分泌というのは、古い角質がスムーズに代謝されずに皮膚の表面に残ってしまうことが原因です。
つまり皮膚のターンオーバー(細胞の多角化)の周期が乱れることがニキビの真の原因ということです。

1-1 腸内とターンオーバーの関係

では腸内細菌とターンオーバーの乱れにはどのような関係があるのでしょう?
その関係においてキーになるのが腸内細菌が作り出した有毒物質です。

正常な腸内でも悪玉菌によるアミノ酸の分解などで一定量の有毒ガスは発生しています。
ただし善玉菌が腸壁を守る粘膜のもとを生成しているので、それらの物質は腸に留まり適切に処理されます。

しかし腸内フローラが乱れてしまった場合は話が別です。
悪玉菌の増殖によって有毒ガスの発生が増え、同時に善玉菌の減少によって粘膜が薄くなってしまい、有毒ガスや腸内細菌そのものが腸から体内に漏れ出してしまいます。
いわゆるリーキーガットと呼ばれる状態です。

そうして漏れ出した有毒物質の代謝は主に肝臓や腎臓が行いますが、フェノール類と言われる物質だけは肝臓より皮膚に溜まりやすいことが分かってます。
当然皮膚にそのままとどめておけないので、皮膚はフェノール類の代謝を優先し、結果としてターンオーバーが後回しになるっていう関係です。

また皮膚の常在菌の異常な増殖は免疫機能の低下の現れでもあります。
この免疫機能の低下にも腸内環境の悪化が関係してるので、腸内の荒れは二重の意味でニキビの原因です。
免疫と腸内環境の関係について、詳しくは別のページで解説します。

1-2 くすみの原因にも

ターンオーバーが乱れるということは古くなった皮膚細胞がいつまでも表面に残ることになります。
つまり死んだ細胞を表面にまとってるようなものです。

死んだ細胞は水分やハリもなく色もかすんでいるので、くすみや化粧乗りの悪さにも繋がります。

また一生懸命に化粧水や美容液などを塗ってケアしてる人も多いでしょうが、肝心の生きてる皮膚の細胞にそれらの成分が届かずにムダになってしまう可能性もあります。

どうしてもターンオーバーが戻らないという人は究極の対症療法としてピーリングを定期的にしておきましょう。
これも肌のバリア機能を落とす可能性があるので、やりすぎは禁物です。
あくまで腸内環境の悪化を食い止めるという根治が大切になります。

2 乾燥や脂性

乾燥と脂性は真逆のことに見えますが、根本の原因は同じ皮膚の乾燥にあります。
皮膚の内部の水分が失われたのを油分で補おうと過剰に皮脂を放出した結果が脂性だからです。

腸内で発生する有毒物質のフェノール類は皮膚に蓄積しやすいと解説しましたが、これが角層の保水量にも影響を与えることが分かっています。
フェノール類が蓄積した皮膚は表皮細胞の面積が小さくなる、つまり形が崩れ細胞と細胞の間に隙間ができてしまうのです。
これには角層カテプシンL様活性を低下させる作用がフェノール類にあることが関係しています。
その隙間から水分が揮発して皮膚の保水力が落ち、乾燥してしまうって仕組みです。

細かいことは覚えなくてもOK!

さらにその乾燥によって脂性になると皮脂の過剰分泌が起きる、つまり常在菌のエサが過剰になります。
これもまたニキビを悪化させる要因の1つになるのです。

3 シワやたるみ

前の項目で解説した皮膚の乾燥、すなわち表皮細胞の保水力の低下は肌の表面のハリを失わせるため、当然のことながらシワの原因になります。
しかし本当に怖いのは以下の2つの影響によるものです。

①活性酸素による酸化 ②糖化

3-1 活性酸素による老化

腸内環境がシワやたるみに影響する1つ目の要素が活性酸素です。
活性酸素が老化の原因になるメカニズムを説明した上で、酸化と腸内環境の関係について解説します。

3-1-1 活性酸素と老化

アンチエイジングは活性酸素による酸化への対策(=抗酸化)から始まったとも言え、今や常識になりつつある老化現象です。

ぼくたちは生きるために空気中の酸素を取り込んでますが、そのうちの数%が反応性の強い活性酸素になります。
活性酸素は電荷が不安定なことに起因するその強い酸化作用で免疫の一部として働くので、一定量は無くてはならないものです。

しかしその生成が過剰になると正常な細胞まで攻撃してしまい、肌のハリや潤いを奪い老化の原因になります。
活性酸素の産生が過剰になる原因はハードな運動や睡眠不足などが挙げられますが、影響が大きいのはやはりストレスです。
また紫外線や電磁波、放射線などの影響もありますがこれらは対応が簡単ではありません。
つまり発生を予防するよりも、発生してしまった活性酸素を無害化する対策の方が重要ということです。

3-1-2 酸化と腸内環境の関係

アンチエイジングの基本の抗酸化とは、この活性酸素による酸化反応を抑えることになります。
一番身近な方法が電荷を安定させる作用のある抗酸化物質、つまり電子を食品から摂取する方法です。
しかし食品からでは摂取効率が悪く、その効果自体に疑問の声も上がっています。

そこで重要なのが腸内環境です。
なんと腸の常在菌は抗酸化物質を作り出す働きもしていると言われています。
つまり腸内環境を整え、細菌の活動を活性化させることが抗酸化に繋がるってことです。

逆に言えば腸内が荒れればこの働きは弱まってしまい老化を促進することになるとも言えます。

3-2 糖化

酸化による老化に比べると糖化はあまり聞きなれないかもしれません。
しかし最近ではこの糖化が老化に及ぼす影響の方が問題視されています。
ここでも糖化が老化に繋がるメカニズムを解説し、その上で腸内環境との関係を説明します。

3-2-1 糖化とは

揚げ物や肉などにこんがりと美味しそうな揚げ色や焼き色がつきますが、あれをメイラード反応と言います。
これは食品中のタンパク質が、加熱によって空気中の酸素と結合した結果として起きる現象です。

そして糖化とはこれと同じ現象が人間の体内で発生することを言います。
身体で余った糖が皮膚などのタンパク質と結びつきAGEsエージス(終末糖化産物)という老化物質を作り出してしまうのです。

糖化されたタンパク質は劣化してしまうので、シワやたるみなどハリのない皮膚、すなわち老化の原因になります。
糖質制限のダイエット効果は薄く寿命を縮めると言われてますが、糖化を防ぐ意味で適正なレベルに糖質を控えるのは重要ということです。

3-2-2 腸内環境との関係

腸内環境と糖化の関係において重要になるのが、糖の代謝能力です。
適切な量の糖の摂取だったとしても、その代謝(=エネルギーへの変換)が上手くいかなければ余分ということになってしまいます。

そしてこの糖の代謝異常の最たる原因がインスリン抵抗性の発現です。
これはインスリンに身体の細胞が反応しにくくなり、糖の摂り込みが十分に行われなくなる現象のことを言います。

このインスリン抵抗性にも先に紹介した腸の漏出、すなわちリーキーガットによる全身での慢性炎症が関係しているのです。
現にインスリン抵抗性の最果てである2型糖尿病の患者の血中からは健康な人の7倍近く腸内細菌が検出されやすいと報告されています。
もちろんニワトリ卵ではありますが、糖の代謝と腸内環境の間に何らかの関係があることは間違いなさそうです。

4 ビタミンの合成の低下

ここまで肌の不調と腸内環境の関係について解説してきましたが、最もダイレクトなのがビタミンの不足です。
これまで紹介してきた皮膚の不調の全般に関係します。
腸内細菌は食物繊維などを代謝して様々な物質を作り出しますが、ビタミンの生成もその役割の1つです。
本当に腸は沢山のことを処理していますね…。

腸で生成されるビタミンは、ビタミンB1、B2、B6、B12、K2、パントテン酸、ビオチン、ナイアシンなどなど。
この中でも特に肌に関わりが深いのがビタミンB2です。
エネルギーの生成や代謝に関わるビタミンで、皮膚細胞のターンオーバーにも大きく関わります。

美肌のビタミンとか言われるほどだよ!

ビタミンB2は水溶性のビタミンで体内に留めておくことが出来ません。
そのため定期的に摂取して常に不足しないように備えてあげなければいけないビタミンです。
ビタミンB2を豊富に含む食品の代表が豚肉などの赤身肉ですが、赤身肉の持つ様々なデメリットを考えると継続的な摂取はオススメ出来ません。

①経済的な負担
②赤身肉に含まれるカルニチンは炎症性の物質
③飽和脂肪酸が過剰
④肉類の過剰摂取は腸内環境を悪化させる

こうした事情から腸内環境を整え、内部からビタミンの必要量を満たしてあげる方が合理的と言えます。
もちろんそれだけでは不十分なので、時々サプリメントや肉類で補うことも必要です。

まとめ

腸内環境の悪化と肌荒れの関係について解説しました。
肌荒れと言うとニキビのイメージが強いですが、腸内環境の悪化の影響はそれだけにとどまりません。
シミや乾燥、シワやたるみも腸内環境の悪化によって引き起こされます。
活性酸素や糖の代謝不良が起きることで、老化だけでなく糖尿病などの疾患にも繋がりかねません。

糖尿病の人は平均して健康な人より10年も寿命が短いって言うから只事じゃないよね。

皮膚は体内の異常を確認するためのパラメータであり、肌に不調が現れているということは何かしら体内で問題が起きていると推測できます。
幸いプロバイオティクスやプレバイオティクスの摂取によって、ここで紹介した様々な症状が改善したという研究があるので、気付いた時から対策を始めることが重要です。
てなとこで。
(参考:ヤクルト本社中央研究所 腸内細菌学会 サイエンスリポート)