【横川理論】ドロップセット法は甘え?|オールアウトを目指すデメリット

一時期、山本義則先生と横川尚隆選手のトレーニング手法のどちらが正しいのか議論になりましたね。
いわゆる山本理論VS横川理論ってやつです。
簡単に纏めると以下のような感じ。

理論考え方の基礎トレーニング方法筋肥大の刺激
山本
理論
101(%)理論前回のトレーニングを少し越える強度で鍛える漸進性過負荷
横川
理論
オーバーワーク(?)ドロップセット法で疲労困憊になるまで追い込むオールアウト

いずれも筋肥大に昔から有効とされてきた負荷を筋肉に与えることを目指すものです。
そのためどちらにも理があるように思えます。

しかし個人的に横川理論、というよりオールアウト理論には若干の疑問があります。
そこでこのページではオールアウト、そしてセットにされやすいドロップセット法の問題点について解説します。

オールアウトとドロップセット法の考え方についてはこちらのページをご覧ください。

1 オールアウトとドロップセットの問題点

オールアウトを目指すことと、そのためのドロップセット法には大きく3つのデメリットがあります。

①トレーニング時間が長くなる
②カタボリック
③次回のパフォーマンスに影響する

1-1 筋トレ時間の長時間化

ドロップセット法をメニューに組み込む場合、基本的にはメインセットの後に追加で入れることになります。
つまりその分だけ通常のトレーニングより時間が長くかかるということです。
仕事や家事に忙しい中でのジム通いなら、長時間のトレーニングはあまり現実的ではないでしょう。

また人間の集中力はそこまで長く持続しません
筋トレの時間が長くなるほど後半のトレーニングのクオリティは低下してしまいます。

もちろん軽い重量でも凶器には変わりないからケガのリスクも高まるよ

1-2 カタボリック

筋トレをしてる人にとって、筋肉の分解(カタボリック)は最も避けたい現象だと思います。
ドロップセットを行うと、この忌むべきカタボリックを進めることになってしまうのです。

ドロップセット法ではトレーニングボリュームが非常に大きくなります。
ボリュームが筋肥大の要素であるとする研究が存在することも事実です。
しかしボリュームが多いほど筋肥大に有利かと言えばそうとも限りません。
筋トレは筋肉の合成を進めるスイッチであるだけでなく、分解の原因にもなるからです。

重ねてトレーニングが長時間に及ぶことによって栄養摂取の間隔が空いてしまうのもカタボリックを促進する原因になります。

1-3 次回のパフォーマンスに響く

言うまでもなく筋トレは質の高いトレーニングを継続していくことで初めて成果に繋がります。
つまり1回で出し切っても、次のトレーニングのパフォーマンスが低下してしまっては何の意味もないということです。

既に解説したとおり、ドロップセット法で組むとトレーニングボリュームが非常に大きくなります。
最後は本当に軽いウエイトでも動かせなくなるほどです。
そこまで削られてしまうと次回の筋トレに回復が間に合わない可能性が高くなります。

しっかり回復するまで休むという選択もありますが、それだと今度は頻度が著しく下がってしまいます。
ボリュームが大きいことがメリットのはずですが、長期で見た場合に通常のメニューに劣るようでは元も子もありません。

2 そもそもオールアウトに意味はあるのか?

ここまでオールアウトやドロップセットに付随するデメリットについて解説してきましたが、そもそもオールアウトそのものの意義にも疑問があります。
具体的には以下のとおりです。

①疲労は筋肥大の刺激ではない ②遅筋を刺激する意味

2-1 疲労は筋肥大に必須じゃない

「もうこれ以上1回も挙げられない」という状態まで追い込むと、グッタリすると同時に非常に達成感があります。
しかしこれは必ずしも筋肥大に繋がるとも言えません。

①代謝ストレス(負荷の大きさ)
②マッスルダメージ(筋肉の損傷)
③メタボリックストレス(酸欠状態)

筋肥大とは刺激やストレスに対する防御反応・適応(ストレス応答)によって起こるもので、その刺激とは具体的には上記の3つです。
単なる筋肉の疲労はここに含まれてはいません

そして疲労感を重視し過ぎた結果として、刺激の与え方への意識が疎かになっている可能性もあります。

ただ疲れるだけなら負荷の大きさもストレッチも酸欠も要らないからね

有効な刺激が加わらないということは適応も起きない、すなわち筋肥大は起こらないということです。

2-2 遅筋を刺激する意味

オールアウトとドロップセットがセットで語られるのは、レップ・セットを重ねる毎に発揮出来る力が小さくなっていくからです。

発揮できる筋力に合わせて負荷を下げていくってことだね

発揮する筋力が低下するのは、サイズの原理という有名な性質があるからです。
簡単に説明すると以下のような感じ。

サイズの原理:負荷が大きいほど大きなモーターユニット(=速筋)が動員される

つまりセット毎に発揮する力が小さくなるのは「消耗した速筋に代わって遅筋が優位な小さなモーターユニットに切り替わるから」です。

ここで1つの疑問が生じます。
基本的に太くなりやすいのは速筋繊維で、遅筋はほとんど肥大しません
そんな遅筋を刺激するのに時間と労力をかける意味が果たしてあるのだろうか?ということです。

けっこうデメリットもあったしね

3 全く意味がないわけではないが…

このようにオールアウトを目指すことの重要性には疑問があります。
もちろん「トレーニングボリュームこそが筋肥大に有効であった」とする研究もあるので完全にムダとは言い切れません。

しかしオールアウトを目指すトレーニングには多くのデメリットも伴います。
単なる可能性を得るためにしては、やや大きすぎるデメリットです。

結局この選択は、筋トレにおいて効率を重視するかどうかに懸かっています。
完璧なトレーニングを100として、必要最小限の努力で80~90を目指すのが山本理論です。
それに対して保険をかけまくって120とか150やるのが横川理論と言ったところでしょう。

結局は人それぞれってことか…

まとめ

オールアウト、ドロップセット法に対する疑問について解説しました。
山本義徳先生VS横川尚隆選手といった構図で暫く議論が起こった話題です。

トレーニングボリュームやオールアウトは長らく筋トレ・筋肥大における基本要素でしたが、デメリットも存在します。
具体的には以下の3点です。

①トレーニング時間:どうしても長くなり、集中力の低下が起きる
②カタボリック:筋トレによる分解が進むし、栄養摂取の間隔が空く
③パフォーマンス:過剰な疲労が次のトレーニングや筋トレ頻度に響く

そしてこれらの犠牲を払った上で得られるオールアウトの効果それ自体にも疑問があります。
具体的には以下の2点です。

①疲労は筋肥大の要素でない ②遅筋を刺激する意義が不明

筋肉が疲労すること自体は筋肥大に必要なストレスではありません。
しかも疲労困憊まで追い込むことを重視すると、真に筋肥大に有効な刺激・ストレスを取りこぼしやすくなります
現にドロップセット法は負荷を落としていくので、十分な代謝ストレスはかかりません。

ドロップセット法で重量を落とすのは、後半に活動するのが力の弱い遅筋だからです。
なので落とした負荷が遅筋にとっては十分な大きさという可能性もあります。

しかしそもそも太くなりにくい遅筋を丁寧に刺激することに意味はあるでしょうか?
最後の項で解説したとおり、追い込み自体は完全にムダではないが、効率を考える場合にはロスが大きすぎるトレーニング法ということです。

筋肥大において何が正しいかは未だハッキリしません。
ただ自分が筋トレにおいて何を重視するかは自分がしっかり分かってると思います。
結局、何が正しいかは個々人の考え方によるということですね。そしてもちろん体質にも依ります。
てなとこで。