負荷抜けを防止する意味はない?|意識することにより生じる2つのデメリット

トレーニングの動作中に負荷を抜かないようにするのは基本的なテクニックとされています。
具体的な動作のポイントや、その意義・メリットについては以下のページで解説しました。
ザックリと言えば長い時間、確実に狙った筋肉に負荷をかけ続けることが目的です。

この当たり前に思えるテクニックにもデメリットは存在します。
考え方によっては敢えて実践しない方が良い可能性もあるほどです。
このページでは、負荷抜けを意識したトレーニングのデメリットについて解説します。

1 負荷抜けを防止することのデメリットとは?

負荷抜けのデメリットは具体的には以下の2点です。
順番に解説していきます。

①収縮範囲の縮小 ②筋肉のパフォーマンスの低下

1-1 収縮範囲が狭くなる

詳しくは負荷を抜かないトレーニングのページで解説していますが、筋肉に負荷が乗る範囲で動作するのがポイントです。

しかし特定の動作で筋肉に有効な負荷が入る区間はかなり限られています。
これを実践しようとすると可動域がかなり狭くなるということです。
筋肥大において、筋肉に負荷を与えることはもちろん重要ですが、伸びたり縮んだりの収縮運動を繰り返すことも重要だと考えられます。

細かい話になりますが、筋肉の収縮はミオシンとアクチンという短い繊維が互いに引き合うことによって起こる現象です。
この無数の繊維の引合いは筋繊維の全体で一気に起こるのではありません。
徐々にその運動が拡がっていき、最終的に筋肉全体が縮みます。

可動域のある特定ポイントでのみ動作をするということは、常に引き合いっぱなし・離れっぱなしで伸び縮みの運動が全く起きない部分があるということです。

1-2 筋肉のパフォーマンスの低下

負荷が乗った状態が続くほど筋肉の負担は大きくなります。
常に収縮し続けていて休息するタイミングがないんだから当然です。

この負担が筋肉を発達させる刺激になるんだよね?

確かにTUTの向上は速筋の活動を優位にするため、筋肥大には有効ですが、その代わりに犠牲になるものも大きいです。
セットを重ねる毎にその影響は顕著になっていき、後半のセットではトップまで挙げきるのがかなり難しくなります。
トップまで挙がらないということは真に有効な刺激が筋肉に入らないということです。

めちゃめちゃ狭い範囲で痙攣してるだけみたいな動作になりがち

また無理にトップに到達することを目指してしまうと、膝の反動などを使って動作してしまいやすくなります。
チーティングの予防を意図してのトレーニングなのに、これでは本末転倒です。

2 TUTの方が重要?

以上2つの理由から負荷抜けを防止することには疑問があります。

でも収縮運動をするかって筋肥大の要素じゃないよね?

確かにTUT(=筋肉の緊張時間)の長さは筋肥大に有効な刺激と言われてる一方で、収縮運動の有無は筋肥大に有効な要素として挙げられてはいません。
そう考えると負荷を抜かないことの方が重要とも考えられます。

しかしこの考え方には2つの疑問があります。

①スタビライザーが最強? ②ボリュームの問題

もし筋肉を緊張させ続けることが収縮運動よりも重要なら、最大の負荷がかかるポイントで維持した方が効率的ではないでしょうか?
最も分かりやすい例が腹筋群のトレーニングであるスタビライザー(プランク)です。

これなら負荷抜けを心配して動作の範囲を神経質に気にする必要もありません。
しかも収縮運動が起こらないアイソメトリック収縮になるので、通常のポジティブ動作よりも大きな負荷を扱うことが出来ます。

可動域の中で負荷が小さくなる範囲で動作しないからロスもなくなるしね

もう1つがボリュームの問題です。
筋肥大にはトレーニングボリュームが重要とする研究があります。
ここで言われているトレーニングボリューム(総負荷)とは「重量×回数」のことです。

しかし物理学における「仕事量」の概念を考えると、動作した距離も要素になります。

シンプルに可動域が広い方が効果的って研究もあるもんね…

負荷を抜かないことが重要と言いつつ、負荷抜けのリスクを犯してまで上下運動させるのは、こういう理由があると考えられます。

まとめ

筋トレの基本的なテクニックとも言える、負荷を抜かないトレーニングのデメリットについて解説しました。

筋繊維の緊張状態が継続することによって確かに筋肉にかかる負荷は高くなります。
ただその代わりに可動域を犠牲にすることになるのです。

負荷を抜かないようにすると、有効な動作の範囲はかなり限られます。
そのため筋肉の一部は常に縮みっぱなし・伸びっぱなしで、伸び縮みがほとんど起こりません
そして疲労が強くなることで、その範囲はさらに狭くなっていきます。

TUTの長さは筋肥大に有効な刺激とされていますが、その実践として同じ位置でウエイトをキープするようなトレーニングをする人はほとんどいません。
それは収縮運動の重要性を認識してるからだと思います。

「負荷抜けしないようにするのは基本」などと盲目的に信じるのではなく、デメリットも存在することを認識してトレーニングの有効性を判断しましょう。
てなとこで。