糖質の選択に重要なGI値の基本と問題点|これからはGL値?

ダイエットやフィットネスブームの影響でGI値という言葉を耳にしたことがある人は多いと思います。

このGI値に続いて最近新しくGL値という指標も提示されていて、ダイエット通ならこちらも知ってるんじゃないでしょうか?

でもそれがダイエットやトレーニングにどう関係するのかを正しく知らない人も多いようです。

また一般的な簡単な解説によって間違った理解をしてる人も結構います。

食事、主に糖質源を選択する際に非常に重要な基準となる指標なので、知ってると思っている人も今一度、知識を整理してみましょう。

そんなとこで今回は食事の選択に関わる指標(GI値・GL値)に関するお話です。

GI値の基本

GI値とはグリセミックインデックスの略で、食品に含まれる糖質が血糖値に与える影響を指数化したものです。

指数化っていうのは、何かを基準にした相対的な数値で表すことね

当初はブドウ糖100gを摂取した際の数値を基準値(100)として表示していました。

しかしブドウ糖では実生活(食事)に則していないことから、最近ではブドウ糖の代わりに白米を基準とする動きもあるようです。

ともあれGI値の大きさによって、低GI~高GIまで食品が分類されます。

GI値の高低を判断する大まかな基準は以下の通りです。

低GI食品:GI値が50以下
中GI食品:GI値が51~59
高GI食品:GI値が60以上

脂質やたんぱく質を多く含む食品は比較的GI値は低く、繊維質の少ない炭水化物ほど消化吸収が速いので、GI値が高くなる傾向があります。

つまり真っ白に精製された、白米や小麦粉、砂糖といった炭水化物ほどGI値が高いということです。

同じ炭水化物でも精製されていない玄米や蕎麦、全粒粉などは含まれる食物繊維のお陰で消化吸収がやや遅いので、GI値もやや低くなります。

ただし全粒粉に関しては細かく挽かれてしまってるせいで消化吸収がしやすく、さほど白い小麦粉と違いが無いという研究もあるので要注意です。

因みに炭水化物は冷える過程でレジスタントスターチというデンプン質を生成します。

これは食物繊維に似た働きをして、炭水化物の消化吸収を遅らせるものです。

そのため同じ白米や玄米でも、温かいものより冷たいものの方がGI値は低くなります。

GI値はそれぞれの食品に含まれる糖質の性質の違いを表すと言えなくも無いですが、基本的には三大栄養素と食物繊維の含有バランスによる食品の性質を表すものと考える方が良いでしょう。

GI値はなぜ重要? GI値と腹持ちの関係

GI値の基本が分かったところで、では何故この指標が大事なのかという点について解説します。

まず高血糖状態は血管のダメージなどの心血管の疾患のリスク要因であり、GI値の高い食品はそのリスクを高めるものです。

それを防止するために、血糖値が高くなると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、細胞内への糖の摂り込みを促進し、血糖値を正常なレベルに戻します。

インスリンは全身の細胞に糖を入れる際に必要になるカギを持つ運び屋の役割を果たすものというイメージでOKです。

このインスリンは急激に血糖値が上がると過剰に分泌されるため、高GI食品を摂取することはインスリンの過剰分泌を引き起こします。

糖の摂り込みが過剰になった結果、血糖値が正常値よりも低くなり、頭がボーっとしてしまうのです。

これをシュガークラッシュと言います。

そして下がり過ぎた血糖値を戻すため、追加で食べ物を摂取するよう空腹感を生じさせます。これがいわゆる腹持ちの悪さの正体です。

因みに血糖値が急激に上がって急激に下がるグラフの形状から、この現象を血糖値スパイクと表現することもあります。

昼ごはんの後に眠くなる要因はいくつかあるけど、ランチで高GI食品を摂取したことによるクラッシュもその1つだよ

「脳が疲れたら甘いモノを」とよく言われますが、甘いモノは総じてGI値が高く、クラッシュを起こす原因なのでこの対応は間違いです。

また血糖値の急上昇によるインスリンの過剰分泌には別の問題もあります。

それは身体がインスリンに慣れてしまい効き目が悪くなることです。これをインスリン感受性の低下、またはインスリン抵抗性と言います。

インスリン感受性が低下すると、それを量で補おうとして多量のインスリンを分泌するという悪循環に陥り、その末路は2型糖尿病です。

従来は余った糖が体脂肪として合成されるため高GI食品は肥満の原因とされていましたが、最近ではインスリン量こそが肥満の原因と考えられています。

いずれにしても疾患、および肥満のリスク要因なので、GI値に配慮することは重要です。

GI値の問題点

糖質源を選択するにあたって非常に便利な指標ですが、実はそんなGI値にも問題があります。
大きく分けて問題点は以下の2つです。

①「低GI=健康」ではない
②「糖質」の量でカウントしなければいけない

「低GI=健康」とは限らない

まず肥満や健康への影響を厳密には把握しきれないということで、その原因は2つあります

「GI値=血糖値の上がりやすさ」ではない

GI値のことを「血糖値の上がりやすさ」と説明する場合がありますが、これは一部間違った説明になっています。

実際には食品を食べた後の血糖値の曲線が描く面積の大きさを指数化したものだからです。

つまり、血糖値の最大値だけじゃなくて持続時間も考慮した大きさってこと

一般的に血糖値を急激に上げやすい(=スパイク)食品はインスリンの過剰分泌を起こすので、血糖値の水準は持続しません

逆に血糖値を緩やかに上げる食品の場合はインスリンの過剰分泌が起こらず、血糖値の水準も長い間維持される傾向にあります。

これら2つが描く面積はあまり大きさが変わりません。場合によっては前者の方が小さくなる可能性もあります。

言うまでもなく血糖値スパイクは眠気だけでなく、インスリン感受性の低下や肥満といった健康リスク要因です。

GI値の中身を誤解したままだと、不健康な食品を健康的な食品と思って選択してしまう可能性もあるので注意しましょう。

危険な果糖をカウントできない

1口に糖と言っても分子の構造や性質によって様々な種類があります。

一般的に糖というと食品にも多く含まれているグルコースのことですが、もう1つがフルクトース、すなわち果糖です。

果糖は主にフルーツに含まれ、血糖値を上げないことから「ヘルシーな糖」と解説されていましたが、これは間違い。

果糖は1か所を除いて人体では代謝されないから血糖として放出されないだけなのです。

では人体で使われない果糖は美味しさだけを残して体外にそのまま排出されるかと言うとそうではありません。

唯一果糖を代謝できる肝臓に集まり、肝機能を圧迫し脂肪肝を促進、基礎代謝の低下を引き起こします。

既に軽く触れた通り、果糖は血糖値を上げません。つまりGI値にこの危険な果糖の含有量は反映されないのです。

「低GIだから健康」と思ってたら、危険な果糖を多量に摂り込んでいたなんてことにもなりかねません。

あくまで糖質量に依存する

もう1つ、これは割と知られたことですが、GI値は食品に含まれる糖質を100g摂取した際の血糖値で計算されています。

標準的な摂取量に基づいた数値ではありません。

かなり極端な例ですが、スイカは高GI食品に分類されます。

しかしスイカは水分量が重量全体の89%と非常に多く、糖質は100g中に9g程度しか含まれません。

つまりスイカだけで糖質を100g摂取しようとした場合1087g、すなわち1㎏以上も食べることになります。

これは実際の食事シーンに則しているとは到底言えませんね。

逆に低GI食品だと思っていても、水分や他の栄養素が少なく糖質の純度が高い場合には糖質を100g以上摂取してしまう可能性もあります。

タンパク質や脂質などの影響もありますが、特に水分量は総量を大きく変動させるので注意が必要です。

GL値 GI値に代わる指標?

GI値が実際の食事量に則していないという問題点を受けて導入されたのがGL値というものです。

以下でその内容と問題点について説明します。

GL値とは何か?

GL値とはグリセミックロード(グリセミック負荷)の略称です。

簡単に言えば糖質100gではなく食品100gにおける血糖値の上昇度合いをGI値から計算したもので、以下のように計算します。

食品100gに含まれる糖質量(g)× GI値 ÷ 100

「100g当たりの」という計算はビタミンなどの栄養素においても同じなので、割と馴染みやすいのではないでしょうか?

普段食べる現実的なサイズや量に則しているため、より食選択に効果的で実用的な指標として紹介されるようになっています。

GL値の問題点

実生活に則していると思われるGL値にも問題はあります。

まずシンプルにGI値と同様で、水分量が極端に少ないなど食品によっては100gの摂取が現実的でない場合があることです。

ビタミンやミネラルなどの微量栄養素でもトップに来るのはハーブなど、100g摂取など到底できないものが多くなります。

またご飯や麺類のように秤を使えばグラム単位で調節できる食品もありますが、パンやお菓子など既製品には使えません。

容器から取り出して秤でグラム数を計る手間をかける人はまずいないでしょう。

結局は日ごろ摂取する食品について、それぞれどれくらい血糖値に影響するのかをGIでもGLでも把握しておくかないということです。

なおGL値を用いても、GI値のもう1つの問題点である「血糖値曲線の形状」については解消できません。

厳密なものではなく、あくまで「傾向」程度の把握・管理に使うものと押さえておく方がいいでしょう。

トレーニーはGI値で十分

GI値の問題点が1つ解消されている分、GL値の方が優れた指標かと言うとそうでもありません。

長年トレーニングに励んできたトレーニーなら、「ごはんを×g、鶏肉を□g」といった食事の管理はしていないと思います。

PFCバランスを考えて、「糖質〇g、タンパク質△g、…」と栄養素ベースで考えるのが普通です。

逆に「ごはん×g」と言われてもカロリー管理が出来ないので戸惑ってしまいます。

YouTubeなどのフル食動画で選手が「白米●g…」などと言ってるのは含まれるおおよその糖質量を把握しているからです。

管理のスタートは三大栄養素からで、それを分かりやすいよう各食品の摂取量に換算して伝えているに過ぎません。

ダイエット初心者など厳格なPFCの管理が出来ない人はGL値を使えばOKです。

GI値はフィットネスの中級~上級者向きの指標と言えます。

まとめ

食選択の基準となるGI値、そしてGL値について解説しました。

肥満や疾患の原因になることから、血糖値を適正に管理することはトレーニー・ダイエッターか否かに関係なく重要です。

血糖値の上がりやすさを示す指標として解説されるため誤解してる人も多いですが、血糖値が正常値に戻るまでにかかる時間も大きく影響します。

つまり低GIなら安心というわけではなくブラックボックスです。

主要な食品だけでもグラフを出してくれるとありがたいんだけどね

スパイクを起こす食品は摂取後に頭がボーっとしたり、腹持ちが悪いという特徴があります。

これは消化吸収の能力など個人差もあると思うので、自分の身体でいろいろな糖質を実験してみるしかありません。

トップ選手が決まった食事しか摂らないのも、こうした自分の身体の反応を検証した結果です。

繰り返しになりますが、これは個人差が多分にあるので選手の食生活そのままで同じ効果が出るとは限りません

比較的いろんな食品を気にせず摂れる増量期・バルク期などに試してみましょう。

てなとこで。