「脂質も身体に必要」はホント?【体に良い・悪い油脂のウソ】

脂質

糖質が肥満の原因としてやり玉に上がると、一転して「脂質も身体に必要だから摂った方がいい」などと言われるようになりました。
しかし果たしてこれを真に受けてもいいのでしょうか?

「体脂肪=脂質」ではなく「体脂肪=糖質」というのは本当に正しいのでしょうか?
このページでは意外と知らない脂質についての正しい知識を紹介します。

1 脂質の摂取は本当に必要か?

まずはそもそも「脂質は摂取した方が良い」と言われているのが果たして正しいのかについて解説していきます。

1-1 脂質はダイエットの敵?

脂質がダイエットにおいて敬遠されていたのにはいくつか理由があります。

①カロリーの高さ ②体脂肪の原料

まず脂質は1g当たりのカロリーが他の栄養素に比べて高いです。
糖質とタンパク質が1g当たり4kcalなのに対して、脂質はなんと1g当たり9kcalと倍以上もあります。

脂質の多い食事をしてるとあっという間にカロリーが標準値を超えちゃうよね…

体脂肪が蓄えているのは中性脂肪であり、その中性脂肪は脂肪酸とグリセリンから作られます。
つまり脂質は体脂肪の原料ということです。
当然のこと脂質の摂取は肥満に繋がる可能性が高くなります。

その脂質を摂った方がいいというのは本当でしょうか?

それともあくまでバランス信仰に基づいて言ってることに過ぎず、ダイエット目的の場合はやはり脂質はカットしたほうがいいのでしょうか?

1-2 脂質の重要性

実は脂質は体脂肪になるだけではなく、肌の保湿や脂溶性ビタミンなどの栄養素の吸収を助ける働きがあります。
また脂質に含まれるコレステロールは体内で分泌される様々なホルモンの材料にもなるので過剰なカットはNGです。

また脂質をカットしようとすると特定の食品を避けることになり、その食品から摂取されるはずだった他の微量栄養素を摂りこぼす可能性もあります。

このように脂質には正の側面もあるため、摂取の必要は確かにあると言えます。

「三大」栄養素って名前からして要らないわけないよね!

問題なのは適切な摂取量を守ることです。
基本的なカロリー計算やPFCバランスの設定方法について詳しくはこちらのページで解説しています。

2 脂質の種類に注意

摂取量の他にもう1つ気を付けなければいけないのが摂取する脂質の種類です。

脂質と一口に言っても様々な種類があります。
基本的な構造は同じですが、細かい組成の違いにより性質が異なります。
注意すべきは以下の2つのポイントです。

①炎症性 ②身体への溜まりやすさ

脂質を大きく分類すると不飽和脂肪酸飽和脂肪酸の2つです。
それぞれの特徴と代表的な食品を以下で紹介していきます。

2-1 不飽和脂肪酸

まずは不飽和脂肪酸です。
結合に穴があるため不安定で比較的分解しやすいため、エネルギーとして代謝されやすい傾向があります。

つまり身体に溜まりにくいってこと

こちらは基本的に常温で液体の「油(oil)」です。
種類は以下の3つがあります。

①オメガ3脂肪酸 ②オメガ6脂肪酸 ③オメガ9脂肪酸

①オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸が豊富なナッツ

脂質の名称としてはαリノレン酸EPADHAなどがそれに当たります。
これらが多く含まれる代表的な食品は以下のとおりです。

アマニ油 エゴマ油 鯖をはじめとした魚類 チアシード ナッツオイル

オメガ3の不飽和脂肪酸は熱に弱く、加熱すると変性する性質があるため、基本的に生食でなければいけません。
サラダのドレッシング代わりにかけるといった食べ方がオススメです。

なおオメガ3脂肪酸の効果について詳しくはこちらのページで解説しています。

②オメガ6脂肪酸

オメガ6脂肪酸が豊富なゴマ

脂質の名称としてはリノール酸がそれに当たります。
リノール酸が多く含まれる代表的な食品としては以下のとおりです。

サラダ脂 ゴマ油 菜種油 大豆油

オメガ6脂肪酸は体内で炎症を起こす脂質で現代人は過剰摂取の傾向にあります。
これらの食品はわざわざ進んで摂る必要はなく、むしろ少し控えるようにしましょう。

ゴマ油は意外だったんじゃないかと思います。
「ゴマ油は身体に良い」と耳にすることが多いので、エゴマ油と同じオメガ3かオリーブ油と同じオメガ9だと思っていた人が多いのではないでしょうか?
しかし残念ながら身体にはあまり良くない油の1つなんです。

③オメガ9脂肪酸

オメガ9脂肪酸が豊富なオリーブ

脂質の名称としてはオレイン酸がそれに当たります。
オメガ9脂肪酸はあまり多くありませんが、代表的な食品は以下のとおりです。

オリーブオイル 米油

米油についての研究はあまり見たことがありませんが、オリーブオイル・地中海食に関する研究はとても有名です。
しかも様々な研究においてその健康効果が実証されています。

例によって摂るほど健康になるわけではありませんが、調理やドレッシングに用いる際はオリーブオイルを優先して使うようにしましょう。

2-2 飽和脂肪酸

飽和脂肪酸のバター

飽和脂肪酸は結合の長さによって①短鎖脂肪酸・②中鎖脂肪酸・③長鎖脂肪酸の3つに分類されます。
飽和脂肪酸は分子の結合に穴が無く安定してるため、エネルギーとして代謝されにくい脂質です。

つまり身体に溜まりやすいってことか…

基本的に飽和脂肪酸は身体に溜まりやすいと言われますが、その性質は結合の長さによって異なります。
分子の結合が長い長鎖脂肪酸ほどエネルギーとして代謝されにくく、結合が短くなるほどエネルギーとして使われやすくなります。

飽和脂肪酸に含まれるコレステロールはホルモンの材料になりますが、過剰になるとコレステロール異常を引き起こすと言われています。
普通に食事をしていれば十分な量が摂れていて、むしろ大抵の場合オメガ6と同様に過剰摂取の傾向があるため、積極的な摂取は不要です。

①短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸には酪酸やカプロン酸などがあります。
ただし自然界に食品としてはほとんど存在しておらず、腸内細菌が食物繊維やオリゴ糖を発酵させて作るものです。

短鎖脂肪酸について詳しくは別のページで解説してるので、そちらをご覧ください。

②中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸(MCT)は近年ケトジェニックダイエットなどで有名になった脂質です。
ラウリン酸やカプリル酸などがこれに該当します。

中鎖脂肪酸が含まれる代表的な食品は以下のとおりです。

ヤシ油 パーム油 牛乳など
(MCTオイルはココナッツオイルなどから中鎖脂肪酸を抽出したもの)

「痩せる油」などと言われていますが、言うまでもなく摂り過ぎは身体に毒です。
そのたの副作用などについてもケトジェニックダイエットに関するページで解説しています。

③長鎖脂肪酸

長鎖脂肪酸にはパルミチン酸やステアリン酸が該当します。
飽和脂肪酸の中で最も結合が長く、分解されにくいため身体に溜まりやすい脂肪です。

バター ヘット ラードなど

特に長鎖脂肪酸はコンビニ食や外食、加工食品などで過剰摂取の傾向があります。
コレステロールは不足しても体内で飽和脂肪酸を合成できるので、必死に摂る必要はありません。
むしろ控えるようにしましょう。

2-3 身体に良い油・悪い油のワナ

糖質制限とあいまって脂質の重要性が強調されるようになってきました。

そこで単なる誤解(曲解)なのか悪意があってのことなのか、その主張が行き過ぎたものになりつつあります。
それが「身体に良い油」「身体に悪い油」という分類です。

「良い油(?)」を売りたい人たちが裏で蠢いてるのは確実かと

しかしこの分類は健康被害をもたらしかねない間違った認識とも言えます。

言ってしまえば、全ての食べ物は薬であると同時に毒です。
身体に良いと言われるモノでも、摂れば摂るほど健康になるわけじゃありません。
薬に限らずものには必ず主作用と副作用があり、プラスの側面だけのものなど存在しないのです。

特に日本人はテレビや雑誌などで「これが健康に良い」と聞くと、その食品のモノイーティングに走るという短絡思考の傾向が強いので注意してください。
是非とも適量摂取を心掛けて欲しいと思います。

まとめ

脂質について解説しました。
「脂質も摂った方が良い」というのはPFCバランスの観点から正しいと言えます。
ただどんなに推奨されてる脂質であっても摂り過ぎはNGです。

そして脂質なら何でも良いというわけでもなく、その種類にも注意しなければいけません。
細かいことまでは考えなくて良いのでオメガ6脂肪酸や長鎖脂肪酸の量を減らすようにしましょう。

また減らすとかではなく完全にカットした方が良い危険な脂質については別のページで解説します。
現代人のほとんどがこの問題のある脂質に晒されているので注意しなければいけません。

準備中

全然関係ないけど、サラダ油って何の油か知ってる?

んー…サラダ菜?

中身は製品により異なりますが、菜種やエゴマ、大豆など様々な油を配合したもので、サラダ菜は無関係なんです。
「サラダ」という名前の理由は生食ができるというところから来ているそうです。
てなとこで。

参考文献