【高FODMAP食品】腸活の落とし穴|SIBOと過敏性腸症候群
糖質制限と言えば、今やダイエットの定番でしょう。
もちろん適切な糖質制限は減量だけでなく、身体や脳の健康にも非常に大きな効果があります。
ただこのページで解説するのは、糖質制限のあまり知られていない別のメリットについてです。
・新たな現代病?過敏性腸症候群について
・過敏性腸症候群と腸内細菌の関係
・腸内細菌と糖質制限の関係
・具体的に避けるべき食べ物と食べてもOKのものは何か
1 新たな現代病?増加しつつある過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(IBS)という疾患の名前を聞いたことがあるでしょうか?
長ったらしい名前で診断を受けた本人ですらうろ覚えのため、正しい名称をちゃんと聞いたことがないかもしれません。
簡単に言うと腸の活動が活発になり過ぎて、腹痛や膨満感、急に便(大きい方)を催してしまう疾患です。
電車や試験会場のような緊張する閉鎖空間に入れられた時に特に顕著に症状が現れると言います。
ぼくの知人にも何人かいますが、通勤中に途中下車してもいいようにかなり早めに出発、停車回数の少ない特急は避けると言ってました。
さらに試験会場では受験番号や氏名に関係なく、トイレに立ちやすいよう出口に一番近い席にしてもらうとか。
お腹の下しはほんの1症状で胃腸の不快感や不調を慢性的に抱える疾患です。
ぼくの知人に特別この疾患を抱えた人が多いわけではなく、新入生や新社会人などを中心に発症する人が増えてるのです。
日本人の13.1%が過敏性腸症候群の診断を受けてるらしいよ
2 過敏性腸症候群は腸内細菌のせい?
過敏性腸症候群では便の異常や腹痛が見られるので、腸内環境の悪化が原因としてまず最初に考えられます。
しかし内視鏡で確認してもほとんどのケースで腸壁などに異常は見られません。
結果、腸と脳(メンタル)には相関がある上に、緊張感などで症状が誘発されるため、ストレスが原因と片付けられてしまいます。
しかし腸内細菌というミクロのレベルで見てみると、過敏性腸症候群の患者の実に84%に異常が見られると言います。
それが小腸内細菌増殖症、略してSIBO(シーボ)と言われる症状です。
腸内細菌という名称ですが、その大半は大腸に生息していて小腸には本来ほとんど細菌はいません。
大腸または口の中の細菌が小腸に侵攻して、競合のいない環境で自由に増殖してしまうのがSIBOです。
ヴァイロネラやラクトバチルスといった特定の菌だけが増殖するのが特徴で、小腸内で食べ物を発酵させ、ガスを異常に産生します。
もともと大腸は細菌が発生させるガスが想定されてるので、ある程度は伸縮性があります。
しかし小腸では栄養素の吸収がメインであり、ガスの発生は想定されてません。
過敏性腸症候群の人が食後すぐにお腹の膨満感を感じるのは、伸びない小腸がガスで張るからと考えられます。
そして食事の度にガスが発生して膨張しては縮んでを繰り返す内に腸壁が薄く脆くなってしまいます。
小腸は免疫機能の司令塔でもあるので、この不調はやがて腸に留まらず全身に拡大してしまうリスクもあるのです。
ここで発生するガスというのは腸内細菌が食物繊維から作る本来は有用な物質です。
腸活の目的であるこの発酵から作られる成分についてはこちらのページで解説しています。
3 なぜ細菌が小腸で増殖するのか?
本来は最近がほとんどいないはずの小腸で細菌が増殖してしまう原因は何なのでしょうか?
菌が小腸で異常に増殖してしまう原因は大きくは次の3つです。
①口の中の細菌が流れてくる ②菌を押し流せなくなる ③栄養過多
3-1 口の中の細菌が流れ込む
まず口の中にいるはずの菌が小腸に侵攻してしまう理由は単純で、食べ物と一緒に菌を飲み込んでしまうからです。
ほとんどの菌は胃酸で死滅しますが、稀にその過酷な環境を殻にこもってやり過ごすことができる菌がいてそれだけが生き残ってしまいます。
大腸は様々な種類の菌がひしめき合ってるので、特定の菌が異常に増えないストッパーがある状態です。
しかし小腸には他の細菌がほとんどいないので自由な土地が広がっています。
つまり辿り着いた菌が異常に増殖しても歯止めがかからない環境ということです。
特に虫歯や歯周病などで悪性の菌が口の中に多い人は注意が必要です。
こうしたものに罹らないよう日頃から口腔ケアを心掛けるのがベストですが、既になってしまってる人でも対策はできます。
食前に歯磨きやうがいをすることで飲み込む菌を減らすのが最も手っ取り早い対策です。
また舌が菌の塊である舌苔(白いカビのようなもの)で汚れてる人は舌磨きも効果的です。
実際に過敏性腸症候群の患者の中には食事の前に舌磨きをするだけで、症状が出なくなるも人もいるとのこと。
まずは食事前の口腔ケアを試してみて、それでも解消しない人は次に紹介する大腸内の菌の増殖の可能性を疑いましょう。
3-2 ぜん動運動の低下
腸管が便を送り出すためにイモムシのように脈打って動いてることは知っての通りです。
これをぜん動運動と言います。
小腸は栄養素の吸収をするので、ゆったりじっくり食べ物を通すイメージがあるかもしれません。
しかし実際はかなり高速で食べた物を通過させてます。
そのため菌が小腸に入ったとしてもほとんどが勢いよく流されてしまうので、定着し増殖することは出来ないのです。
しかし、ぜん動運動が弱まると流れがゆっくりになるので、細菌が定着しやすくなってしまいます。
ぜん動運動の低下は便秘の原因として知られてますが、同時に過敏性腸症候群の原因にもなるということです。
3-3 過剰な栄養素
食べ過ぎによる過剰な栄養素の摂取も小腸での細菌の異常増殖を引き起こします。
本来であれば食べ物は小腸の内部で消化・吸収され、大腸に辿り着くころにはそこまで余分な栄養素は残っていません。
しかし栄養が過剰になると、小腸内で栄養素が吸収されず大腸付近まで栄養が残ってしまうことになります。
この栄養を食べて少なかった菌が大増殖してしまうわけです。
ではなぜ小腸内で栄養素が十分に消化・吸収されないのでしょうか?
その理由は至って簡単で単純に量が多過ぎて消化・吸収が間に合わないというものです。
既に解説したとおり食べ物は小腸を高速で通過するため、あまりに量が多いと吸収が間に合わなくなります。
また小腸が意図的に栄養素を吸収しないというケースもあります。
それは栄養素を全て吸収してしまうと高血糖になってしまうリスクがあるからです。
第二の脳と言われるだけあって非常に賢いですね。
このような理由によって大腸との境付近まで残ってしまった栄養素が少数存在していた細菌を異常に増殖させることになってしまうのです。
4 食べて良い食品とNG食品
便通などお腹に不調を抱えている場合、腸内環境を改善するために食物繊維などのプレバイオティクスの摂取を増やす食事が推奨されます。
プレバイオティクスについてはこちらのページの解説をご覧ください。
しかしSIBOによる過敏性腸症候群の人の場合はそう単純にはいきません。
食物繊維など人間が消化吸収できない栄養素が、小腸内の細菌をさらに増殖させてしまう可能性があるからです。
具体的に避けるべきと言われる食品はFODMAP食品と言われるもので、ここではこれについて解説していきます。
4-1 避けるべき高FODMAP食品
細菌を増やしやすい食品を高FODMAP食品と言います。
FODMAPとは以下のような特徴を持つ食品の総称です。
Formentable(発酵性の高い)
Oligosaccharides(オリゴ糖類)
Disaccharides(二糖類)
Monosaccharides(単糖類)
And
Polyols(糖アルコール)の略称
ガラクトオリゴ糖やフラクトオリゴ糖、乳糖などの二糖類、果糖などの単糖類、そしてソルビトールなどの糖アルコールはSIBOにとってはマイナスです。
具体的には以下のような食べ物が高FODMAP食品に当たります。
食品分類 | 食品 |
---|---|
主食 穀物 | 大麦・小麦・ライ麦製品、トウモロコシ |
野菜果物 | アスパラ、豆類、イモ類、ネギ類、ゴボウ、キムチ リンゴ、アボカド、メロン、マンゴー、ドライフルーツ全般など |
タンパク | ソーセージ、アーモンド、カシューナッツ、絹ごし豆腐、牛乳、チーズ(脂肪分の少ないもの)、ヨーグルト、ホエイプロテインなど |
飲み物 | ウーロン茶、フルーツジュース(高FODMAPの果物)、エナジードリンク、甘い酒類(ワイン、ラム、シェリー)など |
調味料 | 砂糖、ハチミツ、オリゴ糖、ケチャップ、果糖ブドウ糖液糖、人工甘味料全般など |
FODMAPの特徴の説明からも分かるとおり、主に糖が細菌の増殖を促すエサになります。
そのためSIBO由来の過敏性腸症候群を抱えてる人にとって糖質制限は不調を改善するメリットがあるということです。
またここには腸内環境の改善のために積極的に摂るよう推奨される食べ物も多く含まれています。
お腹の調子が悪いからと、ここに含まれるプレバイオティクス食品を摂取してしまうと逆効果になることもあるので注意しなければいけません。
4-2 摂ってもOKな低FODMAP食品
高FODMAP食品には腸内環境に関わらず避けるべきという食品も多かったですが、一般的には健康だとされる食品も含まれてました。
腸内環境が正常な人ならそうした食品は摂ってもOKですが、過剰にエサを供給することはSIBOの発症リスクが高まります。
そのため健康な人でもなるべく低FODMAP食品を中心にした食事を心掛けるようにしましょう。
具体的には以下のような食べ物が低FODMAP食品に当たります。
食品分類 | 食品 |
---|---|
主食穀物 | 米、そば、オーツ麦、ビーフン |
野菜果物 | トマト、ブロッコリー、ほうれん草、かぼちゃ、じゃがいも、オクラ、キャベツ バナナ、イチゴ、ぶどう、キウイ、柑橘類、パイナップル、ベリー類全般など |
タンパク | ハム・ベーコン、牛・豚・鶏・羊肉、魚介全般、卵、木綿豆腐、ピーナッツ、栗 |
飲み物 | 紅茶、緑茶、ココア、コーヒー、ビール、日本酒 |
調味料 | マヨネーズ、味噌、オリーブオイル、酢、オイスター、メープル、バター、チーズ(脂肪分の多いもの) |
低FODMAP食品にもオーツ麦やそば、ほうれん草やオクラなど、食物繊維を豊富に含むプレバイオティクス食品はあります。
お腹の調子が悪い時、腸内環境の改善を始める時はこちらの食品から試してみるのが安全です。
4-3 FODMAPを断って原因を追究する
F~Pの内、どの糖をエサにしてる菌が増殖してるかは人により異なるので、まずは全てを断ちましょう。
それで症状が落ち着いたら、SIBO由来の過敏性腸症候群であることはほぼ確実です。
次に各糖ごとに食事に戻し、症状が現れる糖が何かをチェックしていきましょう。
いずれかで症状が戻ってしまった場合は、その糖類はクロ、残念ながら身体には合いません。
一旦落ち着くまでまた全てのFODMAP摂取を断って、次の糖類から摂取を試すサイクルを繰り返します。
手間はかかりますが、お腹の不調を抱え続けるのも、関係ない食品まで我慢して断つのも辛いものです。
根気よく続けて自分に合うもの合わないものを把握しましょう。
5 人工甘味料にも注意
ダイエット視点での糖質制限の場合に見落とされるのがゼロカロリーの人工甘味料です。
カロリーを摂らずに甘みを感じられるので、ダイエット中のオアシスと考えてる人もいるはず。
しかしカロリーがないというのは人間が吸収できないってだけで、糖質じゃないとは言えません。
人間が吸収できない炭水化物の代表である食物繊維がそうであるように、吸収されずに残った人工甘味料は腸内細菌のエサになります。
つまり小腸で増殖してる菌を増殖させる可能性があるってことです。
ついでにカロリーがないはずの人工甘味料の摂取でもしっかり太るという悲しい事実が確認されています。
そもそもカロリーは肥満の原因ではないので、ゼロカロリーの人工甘味料で太ったとしてもそんなに不思議でもありませんが。
とにかく腸の不調においてもダイエットにおいてもネガティブな影響が大きいので、人工甘味料はなるべく摂取しないようにしましょう。
まとめ
近年急増しつつある過敏性腸症候群と腸内環境、そして糖質制限の関係について解説しました。
QOLに絶大なマイナスの影響をもたらす過敏性腸症候群は、今や日本人の実に1割以上が罹患していて、もはや特別な疾患ではありません。
ダイエットのために糖質制限が推奨されますが、過剰な糖によって起こる問題は肥満や老化だけではなく腸内細菌の攪乱にまで及びます。
腸は免疫において非常に重要な役割を担っており、その問題は全身の不調へと繋がります。
こうした問題を防ぐ意味でも日頃から、糖質過多の出来合の加工食品を避けるようにしましょう。
そして既にSIBOや過敏性腸症候群を発症している人は食べてるものの見直しが必要です。
腸内環境の改善のためと称して繊維質や糖の多いプレバイオティクスを薦められている人も多いかもしれません。
しかしSIBOを発症している場合、こうした食品の摂取は逆効果です。
まずはFODMAP食品や人工甘味料を断ち、細菌の活動・繁殖を抑制する必要があります。
全てを断つのも良いですが、食べられるモノがかなり限られてしまうので、自分に合うもの合わないものを見極めていくのも重要です。
てなとこで。
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