【懸垂ができない…】その理由と練習方法|筋力だけじゃダメ

懸垂は背中、特に広背筋を鍛えるのに効果的な種目です。
数ある広背筋トレーニングの中でも、最も筋電図分析の成績が良かったという研究もあります。

そんな重要な種目である懸垂ですが、見た目に反して意外と難しい種目です。
このページでは懸垂をできるようにするための練習ステップについて解説します。

このページでわかること

・懸垂ができない理由
・懸垂が出来るようになるための練習ステップ

1 懸垂ができない理由

パッと見は簡単に見える種目ですが、意外と出来る人が少ないのが懸垂です。
その証拠にGoogleで「懸垂」と入れると「できない」「練習方法」などの予測がすぐ出てきます。

懸垂が出来ない理由はいくつか存在します。
具体的には以下の3つで、いずれもかなりシンプルなものです。

①体重が重い ②筋力不足 ③テクニック不足

1-1 体重が重いと懸垂は難しい

まず最も簡単に思い付く原因が過体重です。
懸垂は自重を負荷にする種目なので、体重が重ければそれだけ力が必要になります。

70~80kgともなると中級者以上でも引くのが難しい重量です。
そんな大きな重量を初心者トレーニーが引けるはずがありません。

筋肉の重さは別として、懸垂の練習にトライする前に余分な体重を落としておく必要があります。

1-2 筋力不足

懸垂の動作に関与する筋肉は主に以下の3つです。

①広背筋 ②上腕二頭筋 ③上腕三頭筋

「背中は大きな筋肉」というのはよくある誤解です。
特に広背筋は面積は大きいものの、体積は決して大きくありません。

すごい薄い筋肉なんだよね

さらに速筋・遅筋比率で見ても遅筋優位です。
そのため総合的に見ても元から筋力は強くありません。

トレーニングを積んでいなければなおさらです。
そこに二頭筋や三頭筋の関与が加わってもたかが知れています。

動作に関わる筋肉を満遍なく強くしてかないとね

1-3 テクニック不足

懸垂は単純な動作に見えますが、実は意外と複雑な運動です。
広背筋を上手く使うにはテクニックが要ります。

懸垂が出来ない理由として筋力不足を挙げました。
しかし実際には「筋力は十分だがそれを使えてない」というケースもあります。

広背筋が動作に関与しないとなると、残る腕の筋肉だけで挙げなくてはいけません。
それでは腕の負担が過剰で、いくら筋力があると言っても難しくなります。

全部の筋肉をしっかり総動員して動作できるようにならないといけないんだね…

2 懸垂が出来るようになる練習ステップ

過体重の問題については減量することが先決として、その他の原因についてアプローチを紹介します。

①ラットプルダウン ②テクニックの習得

2-1 ラットプルダウンで筋力を伸ばす

懸垂が出来ないのに懸垂で筋力を伸ばす練習は出来ません。
その代用として使えるのがラットプルダウンです。

解剖学的に見ても、シンプルに見た目からしてもラットプルダウンと懸垂には多くの共通点があります。
懸垂の筋力アップと動作の練習を兼ねるのに非常に適した種目です。

ラットプルダウンはウェイトスタック式のマシンであり、かなり軽い重量からスタートできます。
しっかり動作できる重量で背中の筋肉を使う練習から始めましょう。

そして重量を徐々に上げていき、自重に近い重量になれば懸垂をする準備はOKです。
ただし懸垂のクリアばかりを目指して重量を追いすぎないようにしましょう。

フォームとかよりとにかく引くことが最優先になっちゃうからね

2-2 懸垂のテクニックを習得する

ラットプルダウンで自重くらいの重量が引けるようになれば、筋力的には懸垂はできるはずです。

しかしただ引けるだけでは腕の力に頼り過ぎてる可能性があります。
それだと肝心の背中には効かせられません。

そこで懸垂を正しく効果的にクリアするための練習もしましょう。
練習の流れは以下のとおりです。

①ぶら下がり ②肩甲骨を下制 ③ネガティブ ④アシスト懸垂 ⑤チンアップ ⑥チンニング(プルアップ)

2-2-1 まずはぶら下がりから

懸垂が出来ない人は背中や腕だけでなく、握力も不足してるケースがあります。
まずは鉄棒やバーにぶら下がれるようになるとこから始めましょう。

トレーニング中~上級者はパワーグリップなどで握力補助しますが、なるべく素手でできるのが理想です。
握る時は指先ではなく、指の付け根から手のひらで深くバーを握るようにします。

いわゆる引っ掻けるってやつ

2-2-2 肩甲骨を下げてみる

懸垂でありがちなミスが肩を竦めてしまうフォームです。
これはラットプルダウンでもよく見られます。

これをしてしまうと僧帽筋にばかり負荷がかかってしまい、首の痛みの原因にもなります。
当然ターゲットの広背筋もあまり上手く使えません。

この姿勢を改善するため、ぶら下がりに慣れたら肩を落とした姿勢をキープする練習をしてみましょう。
これだけでも広背筋側に力がかかる感じが分かりやすくなるはずです。

2-2-3 ネガティブトレーニングの実践

姿勢の基本が出来たら、実際に懸垂に使う筋肉を使う練習に移りましょう。
その第一歩がネガティブトレーニングです。
ネガティブとはウェイトなどを下ろす局面のことを言います。

なぜネガティブから始めるかと言えば、こちらの方が発揮できる力が強いからです。
その大きさはポジティブ動作の約1.6倍と言われています。

なので身体を引き上げられなくても、重さに耐えながら下ろすことは出来る可能性が高いのです。

台などを使うか飛びついて一番上から始めて、ゆっくり身体を下ろしてきましょう。

なるべく耐える意識でいれば良いんだね

これをやってるうちに広背筋の使い方が分かってくるはずだよ

2-2-4 アシスト懸垂にトライ

ネガティブの懸垂に慣れてきたら次はアシスト付きの懸垂にトライしましょう。
具体的には以下の3つのパターンがあります。

①アシストマシン ②チューブ懸垂 ③インバーテッドロー

①チンニングアシストマシン

懸垂がまだ出来ない人の練習方法として最も一般的なのはチンニングのアシストマシンです。
重量を調整することでアシストの力を変えられるので、段階的にレベルアップできます。

難点はというと、マシンの種類・機種ごとにアシストの仕方にクセがあることです。
モノによっては途中で加速がついたりして負荷が抜けたりするので、苦戦する人もいるかもしれません。

②チューブ懸垂

自宅トレーニングやジムにアシストマシンがない場合の次善の策がチューブなどを使ったアシスト懸垂です。
人によってはマシンより違和感なく鍛えられます。

やり方は簡単でチューブやゴムバンドを懸垂グリップに巻き付けてU字を作り、その上に膝を乗せて懸垂するだけです。

デメリットはと言うとゴムのアシスト力が一様ではないことです。
ゴムは伸びるほど反発力が増すので、ボトムでは張力がアシストが強くなります。
しかし引ききるのに重要なトップではほとんどアシストがありません。

③インバーテッドロー

自宅や公園でも簡単にできる懸垂の練習種目がインバーテッドローです。
これはいわゆる斜め懸垂のことです。

机のヘリやパワーラックにセットしたバーベル、鉄棒などを利用します。
床に足を付け、身体を斜めにした体制で行う種目です。

手軽にできるのが魅力ではありますが、解剖学的に見ると動作が懸垂とは異なる動作なので、これまで紹介した2種目より優先度は下がります。

2-2-5 チンアップ

アシストの付いた懸垂が出来るようになったら、次の段階としてチンアップに挑戦しましょう。
名前が似ていてややこしいですが、簡単に言えば逆手で行う懸垂のことです。

逆手で行う方が上腕二頭筋の関与を大きく受けるため、目標とするチンニング、すなわち通常の懸垂よりも簡単にできます。

ただしあまり意識しないと上腕二頭筋の力ばかりに頼ってしまいます。
また身体を丸めて腹筋の力や脚を上げる反動を使いやすいので注意が必要です。

こういう場合、たいていNGフォームの肩を竦めた姿勢になってるよ

序盤の基本を守った上で挙げるってことだね!

2-2-6 チンニングに挑戦

チンニングは最終的な目標としている順手の懸垂のことです。

ここまでの練習プロセスを踏めば、身体を垂直に引き上げる感覚や、背中の筋肉を使う感覚が掴めてると思います。
チートをせずにチンアップが出来るようになったら順手の懸垂に挑戦しましょう。

ただしここで「絶対に挙げる!」と意気込んで、めちゃくちゃなフォームにしてしまうのはよくあるパターンです。

ここまでの積み上げは何だったんだってね…

めちゃくちゃなフォームで成功したとしても、ただ挙がっただけで肝心の背中のトレーニングにはなりません。
最初に紹介したフォームの基本を守ってトライするようにしてください。

まとめ

懸垂が出来ない理由、そして出来るようになるまでのプロセスについて解説しました。
出来ない理由はシンプルに体重が重いこと、そして筋力が足りないことの影響が大きいです。

体重を落とし筋力をつけることも重要ですが、ただ身体を持ち上げられれば良いというわけじゃありません。
特にターゲットに効かせるために背中で挙げる技術は重要です。

懸垂のテクニックを習得するまでのプロセスをまとめると以下のとおりです。

①ぶら下がり 握力の強化と背中のストレッチ
②肩甲骨を下制 正しいフォームに必須のポイント
③ネガティブ 筋力の強い局面で背中の筋肉を使う練習
④アシスト懸垂 身体を垂直に引き上げる感覚を掴む
⑤チンアップ 上腕二頭筋の力を借りて自重を挙げる
⑥チンニング(プルアップ) 目標とする懸垂

先を急ぐあまり、各プロセスを適当にしてしまわないように注意しましょう。
たいていの人は、めちゃくちゃなフォームでとにかく挙げるだけになってます。

懸垂をすること自体が目標ならそれでも良いですが、筋肉の発達を望むなら丁寧に進めましょう。急がば回れです。
てなとこで。