糖質制限のダイエットの効果|玄米・全粒粉ならOKって本当?

糖質制限は今や間違いなくダイエットの王道でしょう。
しかし糖質制限の効果や正しいやり方について理解している人は意外と多くありません。

なぜ糖質制限が効果的なのか、どのように実践するのかといったことを知らないと手段を誤る可能性もあります。
そこでこのページでは糖質制限の方法について解説します。

このページでわかること

・糖質制限とは何か
・糖質制限で痩せることは出来るのか
・制限すべき糖質とその理由
・精製されてない炭水化物なら肥満には影響しないのか?
・糖質制限を信仰することの危険性・デメリット

糖質制限とは

まずは糖質制限についての基本的な知識を押さえておきましょう。

糖質制限は実は古典的なダイエット手法

糖質制限は新しいダイエット手法だと思ってる人は多いですが、実は大昔からある方法です。

糖質制限の元祖と言われた説は何と18世紀にジャン・サヴァラン氏によって提唱されています。

彼は自身の著書「美味礼賛」の中で、肥満について以下のように述べています。

「肥満の第2の主因は、人間が毎日摂っている主要な栄養素である粉類とでんぷん類だ。…でんぷん質が含まれる食べ物を主食にする動物はすべて、否応なしに太っている。人間もこの不変的な法則の例外ではない」

(出典:美味礼賛 ジャン・アンテルーム・ブリア=サヴァラン著 新潮社)

またアトキンスダイエットで有名なロバート・アトキンス氏も1960年代に提唱していました。

このように糖質と肥満の関係は古くから認識されてたものなのです。

現在もロカボダイエットや低糖質ダイエットといった名前で呼ばれることもありますが、どれも同じ方法を指します。

具体的に糖質制限とは?

糖質制限とは簡単に言ってしまえば、糖質を主原料とする食品の摂取を控えるというもの。

わかりやすい食品で言えばご飯やパン、麺類といった小麦製品など一般的に主食になる食品です。

シンプルで分かりやすく手軽に始められるという利点も人気の理由でしょう。

一応その摂取量の制限レベルに応じて分類されているので、簡単に主流な方法を以下に紹介します。

糖質制限

一般的な方法の中では最も厳格でハードな方法です。

これは1日の糖質摂取量を60g以下に抑えるというもの。

茶碗1杯(150g)のご飯に含まれる糖質量が55g程度なので、1日で茶碗1杯までってこと。

糖尿病患者の治療レベルと言っても過言じゃありません。

そのため健常な人がいきなり始めると低血糖症などのリスクがあります。

ロカボダイエット

糖質制限と混同されますが、糖質量と摂取方法に若干の違いがあります。

具体的には1日当たりの摂取量は140g程度で、これを間食なども交え小分けに摂取する方法です。

1食当たりの摂取量を40g以内に抑えることで、血糖値スパイクなども予防しやすくなります。

健常者にとってはこちらの方が現実的です。

ケトジェニックダイエット

糖質制限と同時に話に出るのがケトジェニックダイエットです。

2つの方法の違いがどこにあるのか悩む人もいるかもしれません。

糖質制限もケトジェニックダイエットも脂質(体脂肪)をメインのエネルギー源に切り替える点で目的は同じです。

ただし脂質(特にMCTオイル)をしっかり摂取する点がケトジェニックダイエットの特徴と言えます。

ケトジェニックダイエットについては以下のページで詳しく解説しているので、興味がある人は参考にしてください。

糖質と炭水化物の違い

ところで同じような意味で使われる糖質炭水化物、厳密には定義が違うことを知ってますか?

この区別を知らない人が意外と多い!

糖質はタンパク質と脂質とともに三大栄養素(PFC)と呼ばれる栄養素の1つであり、性質でいう最小単位です。

一方の炭水化物は栄養成分表示で使われる表現で、糖質と食物繊維を合わせたものです。

食物繊維については別のページで解説しますが、これも非常に大事な栄養素。

炭水化物で一括りにしてカットしてしまうと様々な不調が起きるリスクがあります。

糖質と炭水化物の区別をしっかり理解して、賢い食選択に役立てましょう。

糖質と体脂肪の関係

糖質制限の理論に再注目が集まるまで、体脂肪=脂質というのが一般的でした。

脂肪、脂質とイメージ的にも結びつきやすい上に、脂質はカロリーが高いというのが理由です。

糖質制限のダイエット効果について理解するためには、体脂肪が蓄積されるメカニズムを知る必要があります。

糖質は体脂肪の原料

糖質はブドウ糖(グルコース)に分解されて血管に取り込まれます。これが血糖です。

血液中に取り込まれた糖は各細胞で活動のエネルギー(ATP)の生成に使われます。

この糖を必要な細胞に届ける働きをするのが、インスリンというホルモンです。

活動で使われない分のグルコースは一時的に肝臓(や筋肉)に蓄えられます。

肝グリコーゲンや筋グリコーゲンって言われるやつね

肝臓は財布のようなものでキャパシティには限界があり、無限にグルコースを入れておくわけにはいきません。

そこですぐには使わない分はお金を銀行に預けるように、別のところで保管します。それが体脂肪です。

脂肪細胞に蓄えるためにグルコースはグリセリンに変えられ、脂肪酸と結びついて中性脂肪(体脂肪)になります。

つまり使われない分の糖質は最終的に体脂肪に合成されるため、脂肪の原料と言えます。

そしてそれをカットすることが体脂肪の減少に繋がるというのが糖質制限のダイエット理論です。

血糖値の急激な上昇

これを見ると中性脂肪を含む脂質が多い食品の方が直接的に肥満の原因になりそうです。

確かに脂質もその種類を選ばなければ中性脂肪を蓄えやすくなると言えます。

しかしそれでも糖質が肥満の原因だとされるのは血糖値の急上昇を招きやすいからです。

最近だと血糖値スパイクって呼ばれてるね

血糖値の急激な上昇(スパイク)は二重の意味で肥満を招きます。

1.体脂肪に直行する

高血糖状態は血管の損傷や細胞の壊疽に繋がるため、防御としてインスリンを多量に分泌し細胞に摂り込ませようとします。

しかし身体の活動レベルが低く、細胞でグルコースを必要としていなければ肝臓に貯蔵するしかありません。

貰った給料に使い道がなく全て財布に入れるようなものです。

普通はこのままにしておきません。財布がパンパンになってしまうので銀行に預けますよね?

グルコースも同じように肝臓を一杯にしてしまうと、定期預金こと体脂肪として貯蔵されてしまいます。

体脂肪への変換が一気に進みやすいというのが第1の問題です。

2.過食をしやすくなる

もう1つの問題が過食をしやすくなることです。

スパイクを抑えようとしてインスリンが過剰に分泌されると、糖の貯蔵が加速して血糖値は一気に下がります。

しかも急激に上がるほど下がり幅も大きく、大抵は元の水準より低くなってしまうのです。

この現象をシュガークラッシュと言います。

頭がボーっとしたり眠気を感じたりしますが、同時に空腹も感じやすくなります

理由は単純で、すぐに使えるはずだったグルコースまで貯蔵され、血中にエネルギーが残っていないからです。

もう一度食事を摂らせてエネルギーを供給させようという身体の自然な働きです。

ご飯を食べたばかりなのに何かつまみたくなったとしたら、直前の食事で血糖値の急上昇(および急降下)が原因と言えます。

糖質制限にダイエット効果はある?

糖質を減らせばダイエットできるってことね!

糖質と体脂肪・肥満との間に関係があることは分かりました。

ここから糖質を減らすことが体重・体脂肪の減少に繋がると言えるのでしょうか?

糖質は体脂肪の原料である。そして糖質の多い食事は血糖値を急上昇させ脂肪の合成を促す。

このことから糖質を過剰に摂れば肥満に繋がることは確かです。

つまり糖質の摂取を適量に抑えることが肥満の予防に繋がるとは言えます。

一方で糖質を必要な量よりも減らすことで体重を減らす効果まであるとは言えません

それは糖質に限らず、食事制限で(長期的に)体重を減らすことは出来ないからです。

食事制限に短期的なダイエット効果しかないことはこちらのページで解説しています。

また糖質制限のダイエット効果が過剰に評価される理由に糖質の意外と知られていない特性があります。

糖質が細胞に水分を引き込む作用、すなわち保水力を上げる性質が強いことです。

糖質をカットすると細胞の保水力が落ちる(脱水状態)ので、水分が抜けた分だけ体重が落ちやすいってこと。

浮腫みも起きにくくなるため体重だけでなく見た目もスッキリしやすいと言えます。

糖質なら何でもカットした方がいい?

自然界に存在する食べ物で、食物繊維を含まない純粋な糖質はハチミツだけです。

その他の糖質は食物繊維と一体になって炭水化物という形で存在しています。

自然の食品で糖質を避けようとすると、おのずと食物繊維も不足してしまうのです。

つまり糖質なら何でもカットした方が良いというほど単純な話ではないことだけは確実です。

血糖値を急激に上げる糖質が良くないんじゃない?

これはその通りです。そのため制限すべき糖質は吸収が極端に速い糖質です。

GI値(グリセミック指数)やGL値(グリセミック負荷)について知ってる人は多いでしょう。

本気で減量したい人なら主要な食品のGI値・GL値を把握するのがベストです。

しかし数多の食品を全て押さえるのも非現実的なので、カットする食品の簡単な基準を紹介します。

制限すべきは甘い糖質?

糖はその分子の繋がりの数によって、単糖類から多糖類まで幅広く種類があります。

分子を細かく分解して吸収、エネルギーにしやすい形にする必要があり、それが消化の行程です。

砂糖のように甘みを感じるモノほど分子数が少なく、米や小麦、ジャガイモなどのいわゆるデンプン質は分子数が多い。

そのため甘い糖質は血糖値を上げるが、甘くない糖質は吸収が緩やかと考えられてます。

しかしこれは誤解で、吸収の速度に分子数は関係ありません。

それは多糖類の分解が唾液によって口に入れたところから始まってるからです。

見分けるポイントは加工されてるかどうか

実は「自然界に存在する」というのがかなり重要なポイントになります。

人の手が加えられた人工的な炭水化物の場合、食物繊維はほぼ皆無。

そのため効果はほとんど砂糖と変わりません。

精製された炭水化物などとも言われますが、見分ける方法は簡単で色が白いかどうか。

砂糖、白米、小麦粉などはどれも精製された炭水化物で、純粋な糖質と呼んで差し支えない代物です。

そこで全粒粉などの精製されていない自然なままの炭水化物が勧められるわけですが、ここにも問題はあります。

現代の小麦粉は麦を機械で細かく粉砕してるため非常に吸収されやすく、それは食物繊を含む全粒でも同じなのです。

実際に精製された小麦粉と全粒粉のGL値に大きな差はなく、どちらも高GL食品に属します。

玄米の場合は白米に比べると外皮の消化に時間がかかるためGL値は低くなります。

しかしだからと言って肥満に関係ないかと言えば糖質を含むことに変わりないので食べ過ぎは禁物。

決して食べれば食べるほど健康になるような代物ではないと覚えておきましょう。

まだマシってだけだから沢山食べるなんて論外だよ

人工甘味料は太らない?

ゼロカロリー飲料やプロテインなどに多用されている人工甘味料。

甘みはあるのにカロリーが無く、血糖値を上げる作用もないのでダイエットの心強い味方とも思えます。

しかしカロリーの有無と肥満は何の関係もありません。そして人工甘味料は太ります。

その第一の理由は甘いのにカロリーがないという人工甘味料最大の利点とされる部分です。

甘さを感じた時点で身体はカロリーが入ってくることを期待します。

しかし予想に反してエネルギーは供給されず、期待は裏切られるため食欲を促進してしまうってことです。

また肥満の原因はインスリンの過剰分泌とする研究もあり、甘さを感じた時点で血糖値の上昇とは無関係に分泌されるからとも考えられています。

炭水化物の精製とは違いますが、人工的な糖質はやはりカットすべきということです。

糖質制限の問題点・デメリット

糖質制限は一定の肥満予防効果はあっても、体重を減らす効果はほとんどありません。

そんな糖質制限を絶対視してしまうと思わぬ副作用が発生します。

糖質以外なら何を食べてもOK?

「糖質のみ」が諸悪の根源で、これを絶てばあとは何を食べても大丈夫といった極端な考え方は正しくありません。

糖質を避けて食事を摂ろうとすれば、残りはタンパク質と脂質になります。特に脂質は要注意。

脂質の中には体内でエネルギーとして代謝されにくく、脂肪として蓄積されやすいモノがあるからです。

マヨネーズよりケチャップの方が糖質が多いので、控えるべきはケチャップ !マヨはOK!

こんなバカげたことを公共の電波で発信してる医者がいるとはね…

糖質量にフォーカスしすぎると、こんなおかしな理論に潜む落とし穴を見落としかねません。

言わずもがなマヨネーズは中性脂肪(しかもトランス脂肪酸)の塊です。

糖質が間接的に体脂肪の原料になるのに対して中性脂肪はダイレクトに体脂肪に蓄えられる形です。

脂質をカットしても痩せないことはアメリカが40年間予算をムダにして何度も検証されています。

しかしだからと言って何を摂っても太らないとは言われていません。

本気で痩せたいならカロリーや栄養素などとザックリとした括りではなく、個別の食品まで細分化して考えるべきです。

健康被害の研究報告も

言わずもがな糖質は人間が活動するための最も基本的なエネルギー源です。

体脂肪を多量に溜め込んだ人はさておき、そうでない人は不足すれば命にかかわります。

実際に糖質を極端に制限した生活をした人は心血管系イベント(心臓に関わる疾患の原因)が多く、短命だったという研究もあるほど。

糖質を制限すると体内の保水力が落ち、血管内の水分量も低下します。つまり血がドロドロになるってことです。

また糖質はLDLコレステロールの代謝作用を担う肝臓のエネルギー源であり、不足すると脂質異常症の原因にもなります。

脂質異常症は血管内のプラークの原因であり、最終的には動脈硬化や梗塞の原因です。

こうしたメカニズムから糖質制限と心臓病リスクには一定の関係があると言えるでしょう。

乾燥による肌荒れ

糖質は吸収する際に水分を引き込む性質があるので、摂り過ぎると浮腫みの原因になります。

つまり適正なレベルまで糖質を減らすことは、見た目の改善や体重の減少効果があるってことです。

しかし過剰に糖質をカットし過ぎることは、体内の保水力を大きく低下させることになります。

その影響が皮膚の乾燥に顕著に現れ、この点についてはケトジェニックダイエットの副作用についてのページでも解説しました。

そのため唇の割れやニキビなどの皮膚トラブルが起こりやすくなります。

また水分量の低下は細胞のハリを無くし、シワやたるみなどの問題にも繋がるのです。

これでは何のためにダイエットをしてるのか分かりませんね。

代謝の低下=痩せない

糖質制限は代謝の低下を招き、最終的にはダイエットにならないどころか肥満に繋がります。

その理由は大きく3つです。

1.筋肉のパフォーマンス低下

繰り返しになりますが、糖質は人間にとって基本的な活動エネルギー源です。

エネルギー源を慢性的に不足させれば、活動量の維持に支障をきたすのは確実。

代謝を増やそうと筋トレを推奨するダイエット指南が最近の主流です。

特にこの筋トレ(無酸素運動)は解糖系という糖質をメインエネルギーにする代謝経路が働きます。

このメインエネルギーである糖質が不足すれば回路が回らずパフォーマンスは低下、エネルギー消費効率も下がります。

2.肝臓トラブルの発生

実は基礎代謝の主要な部分は筋肉(厳密には骨格筋)ではありません。

基礎代謝で最も多くの割合(3割程度)を占めるのは肝臓。そしてそのメインエネルギーもまた糖質です。

そのため糖質の不足は肝臓の機能低下にも繋がり、より基礎代謝の低下を促進してしまいます。

解毒作用やエネルギー生成も担う器官なので、疲労感などでダイエット効率も低下させます。

また糖質の不足が脂肪肝にも繋がる点も問題です。

脂肪肝というとアルコール過剰摂取が原因とされがちですが、最近では非アルコール性脂肪肝の存在も確認されています。

食事の過剰摂取によるもののほか、逆に低栄養性の脂肪肝というモノがあり、糖質制限こそがその主な原因。

肝臓でのエネルギー不足が溜め込みを促進するというシンプルなメカニズムです。

3.便秘

糖質制限により体内の水分量が減少する問題については既に解説した通りです。

また糖質の摂取を断つと同時に食物繊維の摂取も減少することになります。

これら2つは便の排泄に大きく関わるものです。意外かもしれませんが正常な便は7割が水分なのです。

便のコンディションについては以下のページで解説しています。

そして便秘で体内に便がとどまると胆汁の排泄不良により代謝が低下してしまうのです。

便秘と代謝の関係について詳しくは以下のページで解説しています。

準備中

まとめ

現在のダイエットの王道とされる糖質制限について解説してきました。

糖質の過剰摂取が肥満の原因になることは確かですが、減らしたから痩せられるとは言えません。

糖質制限で体重が減少するのは単に細胞の保水力が落ち、全身の水分量が減るからという説もあります。

綺麗になるためにダイエットしているのに、全身を乾燥させてしまっては元も子もありません。

その他にも山ほどデメリットがあるので、健康面のデメリットが多い精製された炭水化物を削る以上のことは無意味です。

食事制限は3大栄養素のバランスを保ちながら進めることを心掛けましょう。

食事制限によるダイエット効果の限界や危険性についてはこちらのページで詳しく解説していますが、適量に減らす以上のことは無意味です。

てなとこで。