【もとの体重とは何か?】肥満の真の原因|インスリンと体重の関係

ダイエットに付き物のリバウンド。
せっかく落とした体重が元の体重に戻ってしまう悲しい現象です。
食事制限や運動を頑張っても効果が出るのは一時的で、その後は確実にリバウンドします。

しかしよく考えてみると、リバウンドで戻る「元の」体重とはどのように決まっているのでしょうか?
この「元の」体重を下げない限り、一生痩せてはリバウンド、また痩せては…の繰り返しになります。
私たちは一時的に痩せたいのではなく、無理せず常に理想的な体型を保つこと(のはず)です。

真夏に窓全開ではいくらエアコンを強くしても室温は下がらず、確実にエアコンの方が先に壊れます。すなわちダイエットの挫折です。
ここでまずやるべきは窓を閉めることでしょう。
つまりダイエットでも本当にやるべきは目の前の体脂肪や体重を減らそうとする努力ではなく、体重の基準値という根本を下げることです。

このページでは、その元の体重を決定づける肥満の真の原因について解説します。

このページでわかること

・カロリー収支理論の欠陥
・体重を決める本当の原因とその根拠

1 カロリー収支が体重を決める?

ダイエットで最も一般的な理論は摂取カロリーと消費カロリーの差し引きでしょう。
収支がプラスになれば太り、マイナスになれば痩せるという非常にシンプルな理論です。
しかしこの理論では説明のつかない現象が大きく2つあります。

①停滞期に陥るタイミング ②同じ収支でも体重が異なる

1-1 停滞期に入るタイミングの違い

ダイエッターは食事を削り、運動を増やしていくことで カロリー収支をマイナスにすることを目指します。
最初こそ良いペースで体重が落ち始めますが、徐々に失速して最終的には変化が完全に止まってしまいます。
それが停滞期と呼ばれるポイントです。

太ってるより痩せてる方が体重を落とすのは大変。痩せるほど落ちにくくなるのも当然でしょ。

確かに体重100㎏の人が10㎏落とす方が、体重50㎏の人が10㎏落とすより簡単なのは直感的に納得できます。
体重の減少が停滞するのは標準値から大きく離れてしまい、身体がそれに抵抗しようとブレーキをかけるからです。

ただし停滞期に入るポイントは人によって大きく異なります。
100㎏の人が標準的な体重までスルスル落ちていくかというと意外とそうはなりません。
50㎏の人が40㎏にしようとするのと同じカロリー収支に近付けていっても、落ちるのはせいぜい20㎏程度です。
標準からは程遠い、傍から見ればまだまだ簡単に落ちるはずのところで止まってしまいます。
つまり標準値とされている体重、そしてブレーキがかかるタイミングが人によって大きく異なっているということです。

1-2 カロリーが同じでも体型が違う

またもっとシンプルな問題があります。
それは同じような摂取カロリーの人であっても痩せている人と太っている人がいるということです。

これに対してまず考えられる反論は、食べてるモノの質、すなわちカロリーの質が違うのではないかというものが予想されます。
確かに糖質中心か脂質中心か、はたまたクリーンな食事中心かジャンク中心かによっても異なってくるでしょう。
同じカロリーでもその摂り方によって体重への影響が異なるということです。

そもそもこの時点でカロリー収支理論は破綻してるんだけどね

この点については間違いなく、健康的な食品でPFCバランスを保つ方が太りにくいと考えられます。
しかしここにも注意が必要です。
最近はオートミールなどを引き合いに「痩せるレシピ」「絞りたければこれを食え」などと過度に強調するのが流行りになっています。
ハンバーガーを食えなどと言うよりマシですが、太らないわけではありませんし、ましてや食べて痩せるなんてことはまずありません。

そして食事の質まで同じにしたとしても、やはり体重の標準値は異なり、太りやすい人と太りにくい人が出てきます。
カロリー収支はもちろん、カロリーの質を用いても未だ体重の標準値を説明することは出来ないのです。

2 体重を決めるのはインスリン

体重の標準値(=太りやすさ)をカロリー収支や食事の質で説明できないとなると、最終的には体質のせいだという短絡的な結論に至ります。しかしこれでは何の解決にもなりません。

諦めたらそこで試合終了ってね

この「体質」というものの正体が既に解明されています。
結論から言うと、この体質そして肥満の正体はインスリン感受性です。
とは言えインスリン感受性と言われても普通の人はほとんど意識したことなど無いでしょう。
そのためインスリンが大きく関わる糖尿病の話を交えながら、インスリンと肥満の関係を解説していきます。

2-1 糖尿病とはどんな状態?

インスリンは細胞への糖の吸収をコントロールするホルモンです。
そしてこのインスリンに何かしらの異常が発生し、糖の吸収に異常をきたしてしまった状態を糖尿病と言います。

糖尿病には1型と2型の2種類が存在します。
1型はインスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンそのものがほとんど分泌されません。
一方の2型はインスリンに身体が反応しにくくなる、つまり効き目の低下が原因です。
これをインスリン抵抗性または感受性の低下と言い、肥満との関係では特にこれがキーになります。

インスリン感受性についてもう少し掘り下げて解説しましょう。
インスリンの役割は各細胞にある扉を開けて、糖を中に届けることです。
細胞との関係が正常なうちは、インスリンは1つで複数の細胞の扉を開けられるようになっています。
あまり多くのインスリンが無くても糖をしっかり摂り込むことが出来るのです。

インスリン抵抗性とは細胞がインスリンに扉を開けられないよう対抗することです。
これが発現してしまうと、細胞の扉が簡単には開かなくなってしまいます。
嫌がる細胞の扉を無理に開かせるために、多量のインスリンで扉を押し開けようとする物量作戦を取らざるを得なくなってしまうのです。

2-2 糖尿病の患者が太る謎

インスリンは糖を細胞に届ける役割を果たすホルモンだと説明しました。
つまりインスリン抵抗性が発現して機能不全に陥った場合、糖が上手く細胞に届けられなくなるということです。
シンプルに考えると細胞の合成が進まないのだから痩せそうですが、実際には糖尿病の患者は太っていきます

エネルギーを摂り込めるようになったからじゃないの?

糖尿病の最もシンプルな治療はインスリンを体外から投与する方法です。
そのためインスリンの追加投与によって糖の吸収が促進され、体脂肪の合成ができるようになったからと考えることも出来ます。

しかし糖は食べ物からしか得られないので、食事が同じなら摂り込む糖の量(=増量幅)も同じはずです。
病院でオーバーカロリーな食事が提供されるわけもなく、実際に食事制限させても体重は増えていってしまいます。
やはりカロリー収支では肥満の説明がつかないということです。

このことからインスリン抵抗性によって体内で分泌されるインスリン量が増えることこそが肥満の原因なのではないかと考えられます。
そして治療のためにインスリンを追加投与することで、さらに肥満を助長してしまってるということです。

これらの事実から体内で分泌されるインスリン量が体重の標準を決める本当の原因であり、これを減らすこと、つまりインスリン抵抗性を改善することが肥満の解消に繋がると考えられます。
インスリン抵抗性を発現させてしまう原因とその具体的な対策についてはこちらのページで解説しています。

まとめ

カロリー収支では説明できないダイエットの現実と体重を決める真の原因について解説しました。
いくら頑張って食事制限して運動をしようとも、標準値から離れれば元に戻そうとする圧力が強くなっていきます。
つまり元の体重と言われる自分にとっての標準値そのものを下げない限り、痩せてはリバウンドの繰り返しにしかなりません。

その標準値を決めるもの、つまり肥満の真の原因はインスリンです。
インスリンはアナボリックホルモンと言って体組織を合成する機能を持つので、ある意味当然と言えます。

そしてこのインスリンの分泌を増やしてしまう原因がインスリン抵抗性の発現、かんたんに言えばインスリンの効き目の低下です。
つまりインスリンの効き目が落ちるのを防ぎ、効き目を回復させてやれば体重の標準値は下がっていくと考えられます。

インスリンの効き目を悪くする習慣を見直し、そして改善する習慣を身に付けることが根本的なダイエットというものです。
てなとこで。