【老後不安】退職金の増税が進行中|増税メガネの大進撃

マネーリテラシーの高い人の界隈では一時期退職金の増税が話題になりました。
最近は鳴りを潜めてますが、相変わらず水面下で検討は進められてるようです。

増税メガネなんてニックネームで国民から愛されまくってる我が国のリーダーですが、ちょっとおいたが過ぎたのか最近は支持率が急降下しています。
その影響もあり2024年の税制改正からはカットされたようです。

ただし完全に凍結されたわけじゃなく、ファンが戻るまでの一時凌ぎでしかありません。
新NISAで投資にかかる税収が減る分は何としても取り返さなきゃいけないので、遅かれ早かれメスが入るでしょう。

口を開けて待ってるだけの雛鳥みたいな人は冷遇されてく一方

冒頭でも言ったとおり、この退職金増税の話は一部のマネーリテラシーの高い人の間でしか話題になっていませんでした。
いずれ来る可能性がある以上、「気付いたら退職金が減ってた」なんて受け身の状態では完全にアウトです。

それに備えて今から対策しとけってことか…。

見送りになってできたボーナスタイムを上手く使わないとね

そこでこのページでは、退職金増税の概要について解説します。
退職金自体も減らされてて、年金・退職金に老後資金を全BETするなんて時代遅れも甚だしいので、今の時代のリアルを直視するキッカケにしてください。

このページでわかること

・退職所得控除って何なのか?
・この控除のどこがどのように改正されるのか?
・改正による影響範囲
・改正の目的と疑問点

実は退職金だけじゃなくiDeCo(個人型確定拠出年金)にも関係する話です。
イデコをこのまま続けて良いかも考えることに繋がるので、ぜひ最後まで一読して、その判断に役立ててください。

1 退職金増税の概要

分かりやすくするために「退職金増税」と言ってますが、正確には「退職所得控除の削減」です。
税金の制度変更により退職金の手取りが減ることには変わりないので、退職金増税って表現も間違いじゃありません。

まずはそもそもターゲットとなってる退職所得控除の制度とは何なのか?そして今回どこか改正されようとしてるのか?について把握するところから始めましょう。

1-1 退職所得控除とは何か?

毎月の収入に対して所得税が発生するのと同じく、退職金についても税金がかかります。
ただし他の収入とは別に税金計算がされる方式となっており、これを分離課税方式と言います。

今回のテーマである「控除」とは、所得に対する税金の計算をする際に、税金の対象(課税対象)とする所得から除外するって仕組みのことです。
普通の給料でも適用されてて身近なとこで言うと、扶養控除や社会保険料控除などがこれに当たります。

税金の対象にされる収入額が下がるから税金も下がるってことだね

退職金の税金計算でも同じく様々な控除の仕組みが適用されますが、その中で特徴的なのが退職所得控除です。

退職金にだけ適用される特殊なものだよ

退職所得控除の仕組みを簡単に説明すると、勤続年数に比例して控除額が上がってくってものです。
そして勤続期間が長期になる(20年を越える)と1年ごとに控除される金額も多くなります。
現行の制度は以下のとおりです。

・20年以下の部分は1年当たり40万円
・21年以上の部分は1年当たり70万円

21年目から一気に1年当たりの金額が伸びるんだね

実際に控除額を計算してみるとより影響が顕著になるよ

【勤続35年の場合】
20年×40万円+15年×70万円=1850万円控除

【勤続18年の場合】
18年×40万円=720万円控除

受け取る退職金がこの控除額以下なら、全く税金を払うことなく全額を受け取れます。
また例え退職金が控除額を上回ったとしても、払う税金はかなり少なく済みます。
具体的な数字で計算すると以下のとおりです。

【退職金2500万円・勤続年数35年の場合】
・税控除:退職金2500万円 - 控除額1850万円 = 650万円
・謎の割る2:650万円 ÷ 2 = 325万円
・所得税率を掛ける:325万円 × 0.1(%)-97500 = 22.75万円
・復興所得税を計算:22.75万円 × 1.021 = 232277円

このように2500万円もの退職金に対して、たった23万円ちょっとの所得税だけ払えばOKなのです。(なんと税率1%以下)
大きな控除や謎の割る2など、退職金はかなり税金面で優遇された収入と言えます。

だからみんな退職金を老後の当てにしちゃうんだろうね

最後の最後で一発逆転って感じか

1-2 退職所得控除の改正案の内容

今回の退職金の増税は控除部分の考え方の見直しがターゲットになっています。
具体的には長期勤続による控除額のアップ部分を無くそうって話です。

20年を越えても1年当たり40万円控除のままってこと

長く働いても、以前のように控除される金額が爆発的に伸びて行くわけじゃなくなります。
一般的には勤続年数が長くなるほど退職金は伸びてくので、差し引きではみ出す部分が増え、支払う税金が多くなるってことです。

長期勤続するメリット無いじゃん…。

控除額がどう変わるのか、先程と同じ事例で比較すると以下のとおりです。

【勤続年数35年の場合の控除額】
・現行:20年×40万円+15年×70万円=1850万円控除
・改正後:40万円 × 35年 = 1400万円控除

そして実際に払うことになる税金の計算は以下のようになります。

【退職金が2500万円の場合の税額】
・税控除:退職金2500万円 - 控除額1400万円 = 1100万円
・謎の割る2:1100万円 ÷ 2 =550万円
・所得税の計算:550万円 × 0.2 - 427500円 = 67.25万円
・復興所得税の計算:67.25万円 × 1.021 = 686622円

現行の制度で払う税額が23万円なので、制度改正がホントに行われた場合は負担がなんとほぼ3倍にもなります。
税額計算に用いる所得税率は控除を除いた後の額の大きさで決まるので、控除減により税率そのものが上がってしまう点も大きいです。

また所得税の話が中心でしたが、当然のことながら退職金には住民税もかかります。
こちらの計算でもやはり控除が削減される影響が大きいです。

【退職金にかかる住民税の額】
・現行:32.5万円
・改正後:55万円

住民税の場合は所得税の計算で適用される最後のマイナス額がない代わりに、復興関係の追加徴税もありません。
額に応じて税率が上下することもないので増税インパクトは所得税ほどではないですが、大きな変化があるのは確かです。

税率は10%(市民税6%・県民税4%)で固定だよ

1-3 所得額を半分にしない制度

退職所得税の計算において控除の次に大きな恩恵を受けられるのが、途中で半額にしてくれる謎の仕組みです。
コレが適用除外になるケースについては既に制度化されています。

退職金から控除を除いた課税退職所得額が300万円を超える部分は半分にしないってものです。
この制度改正は平成24年から会社役員に対して施行され、令和4年からは普通の会社員も対象になっています。

てことは所得控除の縮減で半分の恩恵を受けられなくなるかもしれないの…?

このような心配が出てくるかもしれませんが、安心してください。
この制度は勤続期間が5年以下の場合にのみ適用されるもので、勤続5年以下で500万円以上の退職金を貰うような人じゃない限りは関係ありません。

これまで見てきて分かるとおり、退職金は税金面でかなり優遇されています。
そのため毎月の給料を極限まで安く設定し、最後にまとめて退職金として貰うって感じで、抜け穴として悪用する人が多かったのです。

役員とか理事とか外国人とかが節税に使ってたってこと

その悪用を防ぐために設けられた制度なんだね

ただし給料を極限まで削れば、普通レベルの収入でも年400万円くらいを退職金に回すことができるので、5年で500万円以上はさほど非現実的な数字じゃありません。
一部とは思いますが、ジョブホッピングしてる人は注意しておくようにしましょう。

2 退職金の増税で起こる悪夢

今回の改正によって最もダイレクトに影響を受けるのは、前のパートで話したように退職金の手取りの減少です。
増税の影響はここに止まらず、さらに以下のように波及していくことが予想されます。

【退職金の増税が生む悪夢】
・増税と経済縮小のスパイラル
・iDeCo利用者へのダメージ

2-1 終わらない増税スパイラル

退職金の手取りが大幅に減少することによって、生活に困窮する高齢者が増える可能性が大です。
生活に困窮した人をほっとくわけにもいかないので、それを救済するための社会保障を強化するためにさらに増税されることになります。

退職金の増税分がその費用に充てられるなら良いんだけどね~

そんな計画性あるわけないじゃん。今のピンチをどうにかするためで精一杯だよ。

「節約して貯金して投資して老後に備えろ」なんて、もはや聞いたことがない人がいないくらい当たり前の考え方です。
投資に限ってはここ最近やっとスタンダードになったことですが、老後資金を作ることの重要性は太古の昔から誰もが知っています。

ですが現実はどうかって言えば惨憺たるものです。悲劇的で絶望的です。
こんなにも当然のことなのに大半の人ができていません。

退職金と年金でどうにかなるって思ってる人は多いよね

死にゃあしないけど、それでどうにかなってるかはかなり怪しい

そんな怠惰で計画性の無い愚民たちが、退職金の増税によって老後の当てが少なくなるって聞いたところで備えられるかと言えばNOと断言できます。
そもそもマネーリテラシーが低すぎて退職金増税の話すら知らないかもしれないですね。

既にそれなりの資産を築いてる身からすれば、さほど当てにしてない退職金が数十万円減ったり、年金支給額が30%マイナスになったりしたとこで全く気になりません。
しかし退職時点での資産が数百万円程度(ほぼ無いに等しい)の人たちからしたら死活問題です。

住宅ローン残債の一括返済とか考えてたら爆死だね

こんな計画性の無い人たちを助けるために税金を捧げるのはバカげてるので、稼がない使わないで節税を徹底してアホらしいサイクルになるべく巻き込まれないようにしていこうと思ってます。
サボった人がしっかりバカを見る世界になることを祈るばかりですね。

2-2 iDeCoにも悪影響が及ぶ

先々に堅実に備えた人がバカを見ないようにしたいって話をしたばかりですが、早速その悪しき流れの兆候が現れています。
堅実に老後に備える代表格であるiDeCoに対する税金の増加です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)で積立・運用したお金の受取り方法には、「①一時金」「②年金受取」「③2つの併用」の3パターンがあります。
ここで細かい話はしませんが、年金受取の場合は受け取る度に手数料を取られるから、原則として一時金での受取り一択です。

これまでは手数料も最小限に抑えられる上に、一時金で受け取る場合は退職金として扱われるので税金面でも有利でした。
この「退職金として」って部分に今回の増税が影響してくるのです。

退職所得に対する控除の縮減は会社から支払われる名前どおりの退職金に加えて、退職金扱いで受け取るiDeCoにも関係します。
積立金の多さ・運用成果にもよりますが、金額が大きくなると控除の枠をはみ出してしまい、受取り時に課税される可能性が出てきます。

「iDeCoは単なる税金の先送り」説が現実になっちゃう…。

拠出する時に控除されても受け取る時に取られちゃうからね

では今回の退職金の増税が実現したとしたらもうiDeCoはオワコンか?と言えばまだオワコンではないと考えます。

仮に同じ金額の税金を払うことになったとしても今この瞬間に貰うことの意味は非常に大きいです。
理由は「①インフレ」と「②投資できる時間」の2つがあります。

この税金の先送りは未来への借金と考えることができますが、物価が上がって現金の価値が目減りしてくことが予想される環境(インフレ下)においては借金は有利と言われています。
なぜなら将来返済する金額が実質的には今より安く済むからです。

また今手にした現金を投資に回せば、返済するまでの期間に返す以上のお金にできる見込みがあります。
資金ロックとデメリットのように言われますが、返済までの猶予期間の固定と考えれば、運用期間を長く確保できるので有利な制約です。

3 なんで退職金の増税をするの?

増税と言えば消費増税や社会保険料のアップなど色んな方法があります。
その中でなぜ退職金にフォーカスが当たったのでしょうか?

なんで国の大好きな高齢者(候補)にムチ打つような改正をしようとするの?

実はこの退職金の増税案は単独で出てきた話ではありません。
骨太の方針の中の1つの施策としてコッソリと列記されていたものです。

これからの日本を強くするための方針を検討するもので、そのうちの1つ雇用の流動化って目的を達成するための手段と位置付けられています。
簡単に言えば転職とかキャリアステップを柔軟にして、日本のビジネス戦闘力を高めるのに貢献する分野に人を集めたいってことです。

現行の退職所得控除の制度の場合、同じ会社に長く勤めるほど退職金の節税効果が高くなります。
コレが今の会社にしがみつかせ、転職やネクストキャリアへの足枷になってると考えてるようです。

その足枷を取っ払って自由にしてやるから好きなところに飛んでおゆき!って感じか

ただ「自由にしてくれてありがとう!恩返しに着物を織りに行きます!」って思う人いないよね

そもそも退職金の控除が勤続年数に影響されるのを知ってる人がどれだけいるでしょうか?
そして仮に知ってたとして「ここで転職したら退職所得控除が…」なんて思って転職を躊躇する人なんてそんないないでしょ。

これについては「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」ってちょうど良いリサーチがありました。
一橋の教授が行ってリクルートからリリースされた調査です。

この調査項目の中に「転職活動したけど転職しなかった理由」というものがあります。
そしてその理由の第19位に「退職金の関係で」が見事にランクイン!!

その割合なんと1.8%!いやー目も眩むような巨大な数字!

ごくごく少数派なだけじゃなく「退職所得控除」とは一言も言ってません。
恐らくは勤続年数に応じて退職金が増える or 定年前の退職だと大きく退職金を減らされる会社で、支給額のことを言ってるんだと思われます。

断言しても良いと思いますが、雇用の流動化を妨げる原因は退職金ではない、少なくとも退職所得控除の存在ではありません。
ホントの問題点は雇用慣行で、特に解雇規制の異常な強さです。

思い切って飛び出したとこで受け入れてくれる企業が無ければ、退職所得控除をいくら削減しても雇用は流動化しません。
つまり転職先の企業側に受け入れる余地が無ければ、労働者の意識がどうあろうと関係ないってことです。

「会社が受け入れる余地を作れば良い」「会社の罪だ」と考える人もいるかもしれませんが、それも違います。
企業だって窓際に積もるチリを掃って代わりに有能な人間を迎え入れたいはずですが、それをしたくても許されません。
つまりは使えない社員の保護が強すぎることが真の問題なのです。

どんなに無能でも社員は家族同然だ!!なんてハートフルな会社は今は無さそうだね

町工場とかならあるのかな(下町ロケット的な)

本気で勤続期間への拘りが強くなるのが問題だって考えるなら、1年当たりの控除を40万と70万の中間の55万円にしても良いですよね?
それなら自分自身の判断、よきタイミングで自由にキャリアステップを踏むことができます。

結局は増税はマストで、理由をこじつけてるだけです。
そして退職所得控除に狙いを定めたのは、他の収入に比べて優遇されてるから、そしてサイレント増税で気付かれにくいからです。

それをこうやって大っぴらにしてやるってね

美辞麗句を並べて言い訳しないで正直に「お金が欲しいです!」って言いなさいって感じです。
キレイごと言って矛盾を突かれるほどみっともないことないですからね。

見てるか?増税メガネ

まとめ

退職金の増税が迫ってきてるかもって話題について解説しました。

退職所得控除の見直しが検討されており、実現したら課税対象から除かれる部分が縮減するので、結果として退職金が税金で持ってかれる部分が増えることになります。
退職金の額にもよりますが、試算では所得税が約3倍・住民税が約2倍となりました。

資産額の分布を見ると、50代までと60代以降で貯金額に圧倒的な差があります。
50代後半になると埋蔵金を掘り当てやすくなる…なんてことはなく、庶民にとって埋蔵金に相当するのが退職金です。

大抵の人は退職金のお陰でどうにかまともな資産額になってるんだね

ここから分かるとおり、老後資金として退職金を当てにして生きてる人が大多数です。
そんな人から退職金を取り上げたらどうなるかと言えば、急に貯金できるようになるわけもなく困窮者が増えて消費はますます細ることになります。

助けようにも経済が縮小していて税収も減ってるので、社会保障をコロコロコミックくらい(ムダに)分厚くするためにまた増税がやってきます。
まさに増税スパイラルのディストピアです。

また実質的に一時金受取(退職金扱い)一択のiDeCoも影響を受けることになります。
ただ、これでiDeCoはオワコンかと言えばまだその価値は健在で、未来に比べて価値の高い今に現金を移転するだけでも意味があり、運用すればより大きくできる可能性もあります。

「雇用の流動化を妨げる要因になってる」って誰が本気で信じるんだか分かんない理論を並べてますが、そもそも雇用が流動化するのが正義なのかも考える必要があるでしょう。
あまりにも短期で簡単に辞められてしまうとそれはそれで会社の損失になるので、採用時のリスクは増加することになるからです。

ホントの狙いはコレじゃなくて単に増税したいだけだと思うので、ここではあまり踏み込みませんが、アメリカかぶれも中途半端だと悪い面ばっか際立ちそうです。
盲目的にアメリカのケツを10年遅れで追いかけまわす姿勢も同時に見直して欲しいですね。
てなとこで。